2012年11月08日

木暮太一氏「出版社に大切なのは本気でつくること」

 11月1日号の『新文化』で元気が出る記事に出会った。

 「僕たちはいつまでこんな働き方を続けるのか?」(星海社新書)の著者の木暮太一氏、星海社新書編集長の柿内芳文氏、天狼院書店の三浦崇典氏の対談記事である。

 私が読者の立場で、いくら吠えたところで何も変わらないが、彼らは私が思っていることを代弁してくれていて、とても気持ちがいい。一面記事のキャッチコピーはこれ ↓↓

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こんな働き方をいつまで続けるのか?
 【鼎談】 作家・出版・書店人は "主体性" 取り戻せ!

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 書き出しこそ、『僕たちはいつまでこんな働き方を続けるのか?』(星海社新書)に掛けているが、"働き方" という狭義のことではなく、彼ら自身が関わっている出版業界を自分達で立て直していきたい! という熱意がひしひしと伝わる記事である。

 個人的に気に行ったコメントをいくつかご紹介する。

◆木暮氏
「出版社に大切なのは本気でつくること。それは当たり前のことですが、そう思える編集者は少ない。この本はどう編集したらうまくいくのかも考えない。目をつぶってバットを振っているようにみえる。(売行きは)出してみないと分からないという本が多過ぎる。それは出版までのプロセスがないからです。」


木暮氏は著者であり、またマトマ出版という出版社の社長でもあるから説得力がある。このブログでも何度も引用しているフレーズであるが、勝間和代氏が言う "easy" な本が多いのは、読者でも感じるところである。何度も読み返したいという本が出ない限り、わざわざ買って読もうと思う人は減ってきてしまうのではないか・・・それが私の懸念。

 製造業が一世を風靡した時代は、大量生産の時代であった。だから "とりあえず" 作ってみるとか、"とりあえず" 販売してみる・・・なんて思考は有り得なかった。なぜなら大量生産するためには、高額な投資が必要な【金型】が必要で、それはそうそう簡単に一度決めた仕様を変えることは許されない代物だったからだ。私もメーカーの開発部門で商品企画を担当していたから、よく分かるが安易な仕様変更は通らなかったからこそ、真剣に "モノ作り" に携わっていたのを思い出す。

 しかし今はサービス業の時代、"モノ"は少量多品種。本作りだってデジタルデータで処理される時代だから、直前の改変もある程度融通が利く(はず)。活版印刷の時代なら誤植があろうものなら、大変なことになる? だから出版社の本作りにかける姿勢も、今より真剣に取り組まれていたのではないかと勝手に想像する。

 11/7付の日経新聞朝刊の「変貌 製造業」の記事で、3Dプリンターの技術により1日で試作品のフィギュアが安く製造できる、という技術が紹介されていた。以前であれば試作コストも高額であるため、より試作コストや開発期間を短縮するため、【コンカレント・エンジニアリング】という手法(製品開発の初期段階から、商品設計、実験評価、生産準備、製造・出荷にまで至る各プロセスの設計を同時並行的に進行する手法)が取り入れられていた。これは各担当者が各々のプロセスを意識しながら、知恵を振り絞って取り組まなければ成立しない。

 しかし、安く/速く 試作品が作れる仕組みがあれば、いちいち考えなくても「作っちゃえばいいじゃん」となり、安易な商品開発が横行しかねない。この3Dプリンターの技術の進歩は、開発期間短縮・コスト減につながる反面、諸刃の剣になりかねないだろう。

(さて話を戻そう)また木暮氏はこうも言う。

◆木暮氏
「著者は偉ぶるなと言いたい。人気がなくなったタレントがテレビ局に呼ばれなくなるのと一緒で、本気で書かないと次がないことを分かっていない。世の中に良いコンテンツを出して、読者に喜んでもらい、いかにして利益を生むか、それを分かっているプロ意識のある著者が少ない。」


いや~気持ちがいい(笑)

 どうしてこれほどまでに、上から目線で "偉ぶっている" 著者が多いのだろう。確かに本を出す技量があり、著者として "選ばれし者" であることは間違いないし、私もなりたくてもなれないから、スゴイとは思うけど・・・ もう少し、謙虚さを持ち合わせて欲しい。

 読者として、ブロガーとして言わせていただくと、著者の自慢話ばかりで、文体が偉そうだと、辛くて最後まで読み切れないし、人にも薦める気にならない。そして私のようにブログで本の紹介をしようにも、誹謗中傷は避けたいから紹介すらしにくい(最近は著者の方向けに読者目線での助言モードで書くことはあるが)。だからおのずと露出は減り、出版業界の衰退につながりかねない。

三浦氏は書店の立場でこう述べる。

◆三浦氏
「書店ではいま、安い給料だから結婚できない若い人が多いんです。働く意欲もなくなります。貯蓄もないので暖簾分けで独立する書店員はいません。いま、一番いいと言われている転職先は出版社です」


なんとも・・・その出版社が安易な本作りをしているようでは危うい。柿内氏は出版社の立場でこう述べる。

◆柿内氏
「ベストセラーにするだけがすべてではないと思います。売れることは重要だし、それを目指しているのですが、それがゴールではない。なにかしらの文脈をつくることが編集者の仕事。書店店頭のことを含め、もっと広い意味の編集が求められている。そんなことを話しても青臭くないですよね(笑)」


 正直感心した。本の "編集" にとどまらず、書店店頭も含めた広い意味での "編集" を考えているとは恐れ入る。また「青臭くないですよね」って自分で落とすところの謙虚なバランス感覚・・・応援したくなるのはこの姿勢だと思う。

 著者/出版社/書店の各々の立場で情熱を語る3名には、今後とも読者として期待したい。そして1ブロガーとして、大した露出ではないが取り上げていきたい。何度も読み返したくなる、血肉となるような良書を出して欲しいから・・・

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※鳴海の紹介記事はこちら

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posted by 鳴海寿俊 at 00:00| Comment(0) | 応援したいキーパーソン | 更新情報をチェックする
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