2014年07月13日

『ビジネス書を読んでもデキる人にはなれない』 書きたがる人が冷静になれる本

4839929777ビジネス書を読んでもデキる人にはなれない (マイナビ新書)
漆原 直行
マイナビ 2012-02-24

by G-Tools

 今回紹介するのは、私のような " ビジネス書大好き" 人間をイラッとさせるタイトルの本。でも内容は予想外に素晴らしかった! 買う価値ナシと思って試しに図書館で借りたのだが、あまりの情報量と衝撃に、迷わず買ってしまった。そしてアンダーラインを引きまくった。

 著者は、漆原直行氏。フリーランスの編集者・記者である。漆原氏のプロフィールについては、発行元の マイナビ新書 のwebによるとこうある。
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漆原直行(うるしばら・なおゆき)
1972年、東京都生まれ。大学在学中からライター業を始め、トレンド誌や若手サラリーマン向け週刊誌などで取材・執筆活動を展開。これまでにビジネス誌やIT誌、サッカー誌の編集部、ウェブ制作会社などを渡り歩きながら、さまざまな媒体の企画・編集・取材・執筆に携わる。ビジネスからサブカルまで“幅だけは広い”関心領域を武器に、現在はフリーランスの編集者・記者として雑誌やウェブ媒体の制作に従事。著書に、『なぜ毎日コンビニで買ってしまうのか?』『ネットじゃできない情報収集術』(ともにマイナビ新書)などがある。
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 最初ナメてかかってしまったのは、このプロフィールのせい。

「大学中退か? まさか就職できず、ライターのままフリーランスか?
 普通のサラリーマンとして働いた経験のない奴が、ビジネス書について書く資格ナシ!」


とまぁ、偉そうにも私の心の声はこんな感じだった(失礼)。でも完璧に私の負け。ビジネス書に対して、読み手としても、作り手としても深く関わっており、出版業界とビジネス書を取り巻く環境を冷静に分析・把握しているところがすごい。正直言って、私などの素人が「ビジネス書考」だの、「著者を夢見る現役サラリーマン」などと語っていることが恥ずかしくなった。ブログの紹介文やプロフィールも修正しようかな・・・ そう思った。

 漆原氏の経験とスタンスがよく伝わってくる箇所をご紹介する。

ここで少しだけ、私の日々の仕事についてお話ししたいと思います。

私はこれまで、出版の世界の末席で編集・記者業に従事してきました。

なかでも、20~30代のサラリーマンを中心読者に据えた媒体との関わりは深く、ビジネスパーソンの暮らしに関わること全般── たとえば、働き方や処世術、人間関係の悩み、仕事の失敗談や愚痴、最近のビジネストレンド、業務に役立つちょっとしたコツ(いわゆるライフハック系の情報)、ビジネス界のキーパーソンへのインタビューなどから、果てはサラリーマンの夜遊びや色恋の実態に至るまで、なかなか多様なトピックの企画に携わってきたという自負があります。

とはいえ、私はコンサルタントのような専門家でも、大学教員や評論家のような識者でもなく、単なる一取材者・記者です。だから・・・ ということでもありませんが、ある事柄を記事などで語るに際して、基本的に大上段に構えず、理論や分析でゴリゴリに堅くまとめるようなこともせず、どちらかというと対象読者と同じ目線の高さから企画に関わるスタイルを取ってきました。

というより、知識もスキルも何かと不十分な人間なので、そういうスタイルでしか仕事ができなかった、というほうが適切かもしれません。

その都度、文献に当たったり資料を調べたり専門家に聞いたりしながら、どうにかこうにか制作に食らいついてきた至らない人間なのですが、そのぶん、ざっくばらんにトピックの勘所をつかみ、身の丈のレベルで吸収できるような情報としてわかりやすく提供することを強く意識してきました。

要するに、サラリーマンの日常に寄り添いながら、なんだかんだと企画を考えたり、取材をしたり、記事をまとめたりしながら、これまで過ごしてきたわけです。 (p160~161)

 謙虚な雰囲気、そして、一歩引いた目線から、ビジネス書を捉えている感じが気に入った。漆原氏は本書で、ビジネス書の著者、出版社を鋭く斬っている。ただ、漆原氏が本当に伝えたいことは、タイトルの「読んでもデキる人にはなれない」というネガティブなメッセージではなく、著者や出版社の事情をふまえた上で、ビジネス書とうまく付き合って欲しいということだろう。

私が気に入ったのは、「ツッコミ読書」。私も常にやっている読み方なのだが、買ったビジネス書にはアタリ・ハズレがあるのは仕方がないことだから、それすらも楽しんでしまう読み方だ。

「ツッコミ読書」
内容にツッコミながら読む愉しみ


「ビジネス書を読んでも、どうしても内容がアタマに入ってこない」「あまりにもピンとこなくて読み続けられない」なんてことはありませんか?(中略)

「買ってはみたものの、恐ろしくつまらない。でも、このまま放置というのもシャクだしもったいない」・・・ などなど、理由はいろいろ考えられるでしょうが、まったく自分の考えに合致しない本、理解に苦しむ本、何がいいたいのかわからない本、そもそも面白くない本でも、必要に迫られて読まなければならないこともあるでしょう。

そんなときにオススメしたいのが、「ツッコミ読書」

要するに、文章に対して合いの手を挟むようにして読むということです。アタマのなかで、目の前の本を相手に「ほうほう」「なるほど」「そうやね」「ん?」「そんなワケあるかいっ!」とノリ・ツッコミをするような感覚とでも申しましょうか。

語られている内容がピンとこなければ、
「ん、なにそれ? 結局何が言いたいの?」「なんか話がボンヤリしていてテキトーだなぁ」

著者が暴論や独りよがりなことをいっているように感じたら、
「そう感じるのはオマエだけだろ」「どうしてそういう結論になるかなぁ~」

我が意を得たり、というキラーフレーズに出会ったら、
「だよね! そうだよね! 俺もそう思っていたんだよ!」「おっと、これはオイシイ一文。イタダキました」

読んでイライラするような一文があったら、
「はいはい、自慢ですね」「よくまぁ、臆面もなく書けるもんだよ」「人をイラつかせることに関しては天才的だな。この言い方は反面教師的に参考にさせてもらうわ」

など、本と対話するように・・・ というのはキレイごとで、下世話に、卑近に、率直にツッコんでいきます。「こいつバカじゃねーの。ありえないだろ」だってよいのです。その一文に触れたときに、自分がどう感じたのかをアタマのなかできちんと言語化しておく。そうすると、漫然と読んでいるときとは比べものにならないほど、内容が定着します。

また、著者が本のなかでどのような主張をしているのか、それについて自分はどう考えるのか、というスタンスの擦り合わせが自然と行われるので、内容が立体的に見えてきます。ときには、一読するだけでは見えてこなかった相手との共通項や隠れた相違点がぶり出されてくることもあります。そして、退屈な本でもそれなりに楽しく読み進めることができます。

たしかに、通常よりは時間がかかるかもしれませんが。速読や拾い読みでは得られない、歯ごたえのある読書体験ができるので、得られるねものははるかに多くなると思います。 (p231~233)

 こんな感じの「ビジネス書とのつき合い方」が後半に書かれており、前半は出版業界や「ビジネス書」というビジネスにおける事情についてが中心。この前半部分については、かねてから私が思っていた不満を代弁してくれているようで(まさに「我が意を得たり」のキラーフレーズのオンパレードだったので)、ワクワクしながら読み進められた。

 ただ当然ながら、「ビジネス書」というビジネスについてのパートでは、「ビジネス書を書きたがる人」、つまり著者(およびその予備軍の人)についての話も出てきた。正直言うと、私はこのパートを読んで、大きなショックを受けた。なぜなら、私のビジネス書の著者になりたいという気持ち(それも奥底に秘めている部分)が見透かされているように思え、自分の甘さや至らなさを痛感したからだ。

 漆原氏は、ビジネス書の「書き手」についてこう述べている。

ビジネス書を書きたがる理由

● 著者の肩書きを持つことで箔をつけ、自分の本業での儲けや宣伝材料にしたい。
~ 名刺代わりに著作を引っさげて、自分が主催するセミナーに読者を誘導したり、著書を教科書代わりに使ったり(もちろん参加者に買わせる)、コンサルティング業の見込み客を読者のなかから発掘したり、など。

● パーソナルブランディングとして著者となり、有名になって、キャリアアップに繋げたい。
~ 自分をブランド化する取り組みの一環として著者の肩書きを活用し、ビジネス関連の評論家・識者といった体でテレビや雑誌に出演・登場したい。さらなる執筆の機会を得て、ビジネス書作家として認められ、成功者の仲間入りをしたい。デキるビジネスパーソンというイメージを醸成して、活動領域を広げたい、など。 (p134~135)

 私がビジネス書の著者になりたいと考えている理由は、【辛かった自身の経験を伝えて自分と同じような苦労をして欲しくない】という正直な想いはあるが、秘めていることもある。赤字部分がそうだ。やはり著者への憧れを持っている以上、このような感情や期待は少なからず抱いている。

本書を読んで「ショックを受けた」と書いたが、それは漆原氏がこんな風に「ビジネス書を書きたがる人」について述べていたからだ。

そんな、ギラついた商売っ気や自己承認欲求からビジネス書の著者を志向する人が少なくないのです。

最終的には、版元に一定の商品価値を認めてもらえたからこそ著作の刊行ができたわけで、さらに読者からすれば、本の中身が有益かどうか、参考になるかどうかが基本的な判断基準でしょうから、著者がどんな思惑から本を出そうが関係ないことなのかもしれません。

とはいえ個人的には、

こうしたビジネス書の著者たちが備えた奇妙な志向がビジネス書の劣化を招き、粗製乱造を加速し、「ビジネス書って気持ち悪い」と距離を置きたくなるようなイメージを促進させてしまったように感じて仕方がないのです。 (p135~136)

 ビジネス書って気持ち悪い・・・ いかにライトな薄っぺらい自己啓発本であっても、自分の行いを律する気づきは得られる、くらいに思っている私には理解はできないが、ビジネス書を読まない人にとってはそうかも知れないなぁ、と想像はできる。そして、問題は「版元(出版社)に一定の商品価値を認めてもらえた」ビジネス書だけが発行されているわけではないこと。

読み手だけの問題ではなく、送り手である著者や出版社の一部に見受けられる、「売れたモン勝ち」「とにかく一瞬でも話題になって、注文されて、売り抜けてしまえばこちらのもの」といったあくどい商売っ気にも問題があるとも認識しています。

本来、ビジネス書は社会的な、職業的な、人間的な成長・向上・改善に寄与するものであるはずです。しかし、読み方、使い方、受け取り方によっては思考停止と安直なマニュアル思考をもたらし、漠然とした危機感のループに陥れ、刹那的な高揚感を受け手に醸成して、本質を見失わせてしまうかもしれない。

また、あくどい著者や版元は、まるで焼畑農業のように「今度はこのネタ」「次はこんな煽り」と場所を移してあざとく読者の目先を変え、 " 売らんかな " の商売を繰り広げていく・・・。

一方には、どうすれば読者に有益な本を届けられるかと苦心惨憺する誠実な書き手や編集者もいるわけで、ビジネス書の粗製乱造、過剰供給で読者も送り手も疲弊してしまうような現状は、どこか気持ち悪くて仕方ないのです。 (p210~211)

 誠実な著者も編集者もいるとは思うが、あまりにも多すぎやしないか!?

 ・タイトルや表紙の帯での、極端な表現、ピンポイントで煽る言い回し
  ドラスティックな表現、明らかな誇張表現

 ・タイトルで謳われている要素は半分以下(1割以下)の内容
  タイトルと中身がほとんどマッチしていない

 ・ヒット作の人気に便乗した似たタイトルの類書 など (p128~129より)

でも、著者も編集者も知らぬ間にタイトルを変えられていたり、意図しない内容に仕上げられたりすることもあるらしいから、読者と同様に「送り手」側も " 被害者 " なのだと言う。

こういう業界の事情をふまえて、読者が意識すべきことは2つ。

● 安直な煽りに乗らないこと
● 「どんな目的を持ってビジネス書を読むのか」をよく考える


ことだと漆原氏は述べる(p211より)。そして、タイトルの通り、ビジネス書を読むだけではなく

いま目の前にある仕事。自分に任された仕事。それを粛々と実行していく。ライフハックも結構ですが、たとえば同じ職場にいる、デキる社員の仕事ぶりをよく観察して、真似をしてみるほうが、よほど現実的な効果を発揮することが少なくありません。成功者たるビジネスコンサルタントのありがたいロジカルシンキングの教えやスマートな仕事術を上滑り気味に真似して、同僚から「ペースを乱す勘違い野郎」といったレッテルを貼られるより、自分の周囲にいる人たちから盗めるものを盗んで、実践してみるほうが、実は身近な成功への近道かもしれないです。 (p242)

とのこと。

 実務のプレイヤーとしての視点、著者を目指そうとする視点・・・ この両方で感銘を受けた本であった。今回紹介できなかったが、中盤はビジネス書の源流についての研究結果も解説されており(少々難しかったが)、興味深かった。ぜひ、本書を手に取り、ビジネス書との付き合い方を見直してみてはいかがだろう。

ビジネス書を読んでもデキる人にはなれない (マイナビ新書)ビジネス書を読んでもデキる人にはなれない (マイナビ新書)
漆原 直行

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posted by 鳴海寿俊 at 00:00| Comment(0) | 【書籍】 出版業界・読書全般 | 更新情報をチェックする
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