2014年09月29日

『ビジネス書の9割はゴーストライター』 書かないのに【書いた】ことになる裏側

4787233785ビジネス書の9割はゴーストライター
吉田 典史
青弓社 2014-05-25

by G-Tools

 作曲者偽装問題で話題になった「ゴーストライター」。「○○の9割」やら「99%の○○」とタイトルに名づけられた本にはいい加減うんざりしてきたが、「作り手側のビジネス書に対する姿勢が露わにされているのでは?」 と期待を込めて読んでみた。案の定「9割はゴーストライター」の「9割」という数字の根拠は書かれていなかった(笑)・・・ でも予想以上に真面目に書かれており、大変好感を持てる本であった。

 表紙には、本書の内容を語るこんなコピーが記されている。

 ゴーストライターの経験豊富な著者が、ビジネス書にまつわる仕事の実態や収入、トラブルとその対処法、ライティングの心構えなどを数多くの実例に基づいて紹介し、著者・出版社・ライターの関係性をふまえたうえで、ライターの地位向上などの必要性を説く。ゴーストライターの基礎知識をまとめたQ&Aも所収。

「暴露本」には違いない・・・ だが後述の通り、本書は単なる「暴露本」ではなく、勇気と誠実さを感じる " 希望 " の本だ!
─────────────────────────────────────
[著者略歴] 吉田 典史
1967年、岐阜県生まれ。2006年からフリージャーナリスト。特に人事・労務の観点から企業の取材を重ねる。事件・事故など社会問題の取材も精力的に続けている。著書に『悶える職場』(光文社)、『封印された震災死その「真相」』(世界文化社)、『震災死』『あの日、「負け組社員」になった…』(ともにダイヤモンド社)、『年収1000万円!稼ぐ「ライター」の仕事術』(同文舘出版)など。
* 著者ブログ: 「吉田典史」の編集部
─────────────────────────────────────
 さっそく本書の内容紹介に入ろう。前半には、出版社の裏事情やゴーストライターの実態が書かれている。なぜ、出版社はゴーストライターを使ってまで、ビジネス書を出し続けるのか? この問いに対して、吉田氏はこう述べる。

 出版社がゴーストライターを使い続ける理由の1つに、「本の賞味期限」の問題もあると思う。本屋に本を並べて1ヵ月もすると、書店から「この本は売れないからいらない」と返品を受ける。これが「本の賞味期限」である。ここ4、5年、この期間が短くなっている気がする。大型書店で働く知人たちも、それを認めている。このような状況は、1990年代初頭にはあまりなかったのではないだろうか。本にかぎらないと思うが、商品のサイクルが短くなると、それを作る人にもそれなりの負担がかかるということだろう。 (p35)

 私も自分なりの答えを持っているので、数字を交えて書く。

 『出版年鑑 2014年版』 レポート第1弾 でも書いたが、書籍の実売金額は 1997年をピークに減少(2013年はピークの73%)しているにも関わらず、新刊発行点数はなんと 1.3倍に増えている。売上が厳しいから本を出す・・・ でも売れない。更に厳しいからもっと短期間で出す・・・ という負のスパイラル。作り手である出版社の数(1998年 4,454社 → 2013年 3,588社)も減っているから、発行しなければならない点数が増えていることは数字でも分かる(新刊発行点数から1社あたりの点数を割り出すと 1998年 約14点 → 2013年 23点 に増えている計算)。

 本作りに手間がかけられない。

そんな事情が、ゴーストライターを使わなければならない状況を生み出しているのだろう、と素人でも察しがつく。この業界の危機を乗り切ろうと、出版社とライターが互いを尊重して協力し合っていればいいのだが・・・

「ライターは下請け、著者は "アホでも著者様" 」(p39)

こんなマインドで本作りをしている出版社があると言うから呆れてしまう。杜撰なやり取りでライティングを依頼する出版社もいい加減と思うが、泣きを見るのはライター・・・ ではかわいそう。

 例えば、とある経営者の本を出すとする。必要な取材時間にもとづいて、ページ数が決められたものの、経営者が多忙でなかなか時間が取れない。仕方なく、経営者のブログ記事や他の社員の話をもとに原稿を書く・・・ 仕上がって経営者に見せると「違う」と言われる。挙句の果てには「本を出すのを止める」なんてことを言い出す者もいるそう。企画が白紙になれば、ライターに原稿料は支払われない、なんてこともザラ。ライターの側は、この仕事のために他の仕事をせずに空けていたりするから目も当てられない。

 しかし、仕事を受けるライターの方にも自業自得な面があるようだ。

 「年収でいえば、ゴーストライターは四十代になっても二百万円から四百万円以下がいちばん多いだろう。だから、他人をねたんだり不満をもつのは、ある意味で当然のことだと思う。だが、そのような環境を選んだのはライター自身であり、出版社や編集者に責任はない。つまりは、甘えでしかない。」 (p56)

吉田氏はこう述べ、会社員として務まらないような人がライターをやっている場合も多いと切る。ただこうした問題 " ビジネス書の裏側 " がインターネットの普及により、オープンになると期待した吉田氏であったが、実際には違ったようだ。

「識者のブログなどに目を通しても、出版界のある意味での象徴ともいえるビジネス書の裏側には決してふれようとしない。こうした識者のなかには、自らもゴーストライターを使っているため、踏み込んだことを書けないのだ、と思える人もいる。古いビジネスモデルを否定しながらも、ゆがんだビジネスモデルの上にあぐらをかいている身勝手な姿勢が見え隠れしてくる。」 (p57・58)

 溜息が出る・・・ もっとがっかりしたのはこれ ↓↓

「文章力なんてゼロでいい。それは、ゴーストライティングをするライターの仕事だから・・・」

 これがビジネス書作りの基本的仕組みだ。この認識で成り立っているから、ゴーストライターに次々と仕事を依頼する。逆にいえば、ビジネス書の著者を目指す場合、文章力を磨くことには意味はない。むしろ、売れる仕組みを作ることに力を注ぎこむべきだろう。

 この言葉はいまやビジネス書にかぎらず、一部の小説でも聞かれることである。このままでは出版界は衰退するべくして衰退していく。それでも、ゴーストライターを使い続けている。 (p173)
「自分で書いていないのに、『著者』を名乗るのは詐欺なのか、それとも詐欺でないのか。わたしはいまなお、この問いに答えることができない」(p17) と語る吉田氏はこう締めくくっている。

「世の中は、本音と建前を使い分けることで成り立つ。建前を好む人は、リアルな現実にヒステリックに反発し、封じ込めようとする。そのような動きに問題を投げかけたかった。意識の高い読者が読んでくださったことに、感謝している。ゴーストライターの氏名が、著者のプロフィールと同じ欄に載り、自立した職能者として認められる世の中にするためにはどうすればいいのか。今後も、ともに考えていきたい。」 (p205)

 「○○の9割」というありふれたタイトルが付けられている点は少々がっかりしたが、それを差し引いても、ビジネス書の裏側を読者に晒してくれた著者の吉田氏、そしてこの企画をひるむことなく誠実に推し進めたという 青弓社 の矢野未知生氏に感謝したい。

こういう一生懸命に書かれた本には、読者として喜んでお金を払いたい!
これからも吉田氏を応援していくぞ!

ビジネス書の9割はゴーストライタービジネス書の9割はゴーストライター
吉田 典史

作家になれる人、なれない人―自分の本を書きたいと思ったとき読む本 2015 長谷川慶太郎の大局を読む (一般書) 職業、ブックライター。 毎月1冊10万字書く私の方法 大破局の「反日」アジア、大繁栄の「親日」アジア 朝鮮崩壊 米中のシナリオと日本

by G-Tools



鳴海が応援する「出版業界を中から変えてくれそうなキーパーソン」の1人
↓↓ 業界紙「文化通信」取締役編集長の著書
↓↓

出版産業の変貌を追う出版産業の変貌を追う
星野 渉

本は死なない Amazonキンドル開発者が語る「読書の未来」 電子書籍制作・流通の基礎テキスト: 出版社・制作会社スタッフが知っておきたいこと 書籍文化の未来――電子本か印刷本か (岩波ブックレット) 誰が「知」を独占するのか-デジタルアーカイブ戦争 (集英社新書) 出版禁止

by G-Tools


にほんブログ村 本ブログ ビジネス書へ ← めざせ1位!あなたの応援ポチッが励みになります

posted by 鳴海寿俊 at 00:00| Comment(0) | 【書籍】 出版業界・読書全般 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
コチラをクリックしてください