2014年08月24日

南天堂書房(文京区)の奥村弘志社長を応援したい!

 『新文化』(2014/8/21号)の一面に気になる見出し、「衰退する出版産業-3つの問題提起」 という特集記事があった。某出版社の会長兼社長の寄稿記事である。

「いま、日本の出版界は大きな岐路に立っている。いまだ先行きが見通せないなかで、書店、取次会社、出版社の業界三者は打開策を見出せないでいる。日本の出版業界はなぜ、世界各国のように安定した市場形成ができないでいるのか。」

そんなくだりで始まるこの記事。タイトルには「3つの問題提起」とあるのだが・・・ 私の拙い読解力では抜きだすことが難しかった、3つの問題提起。正しい解釈かどうか自信はないが、寄稿者が感じている危機感を私なりにまとめてみると次のような感じだ。
  1. 出版界は効率や目先の利益を優先するあまり、 " 読書の楽しさ " の醸成や環境の整備を怠ってきてしまった
  2. 特定秘密保護法案の成立により出版の自由が制限されかねない
  3. 若い世代に多くの書物や見聞を広める機会を与えられていない
一見 " 読書の楽しさ " からは、顧客である読者に対して意識が及んでいるように見受けられるが

「果たして読む価値のある魅力的な商品を顧客である読者に提供できているか」

という「マーケットイン」の発想が感じられず、作り手側の「プロダクトアウト」の域を出ていないように思う。一方、同じ業界紙の 『文化通信』 取締役編集長の星野渉氏は同紙記事の中でこんな風に述べていた。

「出版業界は、ややもすると『読書離れ』などといって、『読まない者が悪い』といった切り捨て方をするが、『読まれない物が悪い』と考えて、出版物に新たな価値を付加するような業界としてのアプローチも必要ではないか。」

*『文化通信』(2012年9月10号)【出版時評】より

 国の支援や読書振興策、環境整備という観点ではなく、商品である「出版物」に目を向けた意見は、(さして突飛なアプローチではないはずなのだが)大変新鮮に感じる。ただ出版物というのはジャンルがあまりにも広過ぎて、対策が打ちにくい。私はビジネス書をイメージしながら、持論を展開しているわけだが、この寄稿者は児童書の出版社の社長である。 " 読書の楽しさ " や若者、読書環境に対する危機感に意識がいっても致し方ない・・・ とは言え、ではあるのだが。

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 実は、今号(2014/8/21号)の 『新文化』 で面白かったのは、前述の一面特集記事ではなく、最終面特集の記事の方だ。文京区に店を構える 南天堂書房 の奥村弘志社長が熱弁を振るっているからである。

「どうしておかしいことをおかしいと書かないのか。それじゃあただの御用新聞だよ」

「我々業界全体が20年前からサボッてきた結果がこれ。書店ももっと声を上げる必要があった。こうしていま取材を受けているが、他の書店に行ったら『冗談じゃない、取材を受けている時間なんてない』と言われるよ」

と記者に対しては耳の痛い言葉を浴びせる。というのも記者とは危機感が違うからである。奥村社長が約55年間に渡って経営してきた南天堂書房は、1階、2階合わせて50坪前後の小規模書店。つい8月1日にリニューアルし、2階の売場を無くして1階に集約し、経費を3割削減しているという。そして、9月からは学研ホールディングスに貸し出し(学習塾として活用)、家賃収入を得る。塾の生徒や親が書店に立ち寄ることで、売り上げ増を見込んでいるという。また、学習参考書を買ってくれたお客さまには、学習塾の先生に無料相談できる券をプレゼントするなどのサービスも検討するそう。

街の書店が生き残るためには「地域密着」と本の配達サービスの構想については語れば、取次に対する不満を露わにする。

「こういった提案に対して、版元は協力的だが取次はすぐ逃げる。日販がやるとトーハンが反対し、トーハンがやると日販が反対する。こんなんじゃ業界はよくならない」

「いまでは取次が書店業まで手がけている。業界が崩れてしまうようなことをなぜ許しているのか。『こういったことはダメだ』と業界内規約で決めないといけない。」

「取次は自分たちが損をしないで、書店に負担をかけようとしてる。こんなバカな業界はない。書店を潰せば、取次も出版社もなくなるということを分かっているのか。三位一体と言っているが、そんなのウソだよ。先日刊行された『週刊新潮』(8月14・21日夏季特大号)の藤原正彦氏のコラム(『管見妄語 本屋を守れ』)を未読の方はぜひ読んで頂きたい。この提言を業界あげて世の中に訴えてこそ、三位一体と言えるのではないか」

* 記事に触れられている『週刊新潮』(8月14・21日夏季特大号)の藤原正彦氏のコラム(『管見妄語 本屋を守れ』)はまだ読めていないので後日レポートすることにする。

→ 読みました(鳴海の紹介記事は こちら

 南天堂書房の店構えや店内の様子、奥村社長による紹介動画は、 「白山地区のみどころ紹介ホームページ(南天堂書房)」 で見ることができる。学生時代はサッカーで東京都代表選手にも選ばれたという奥村氏。是非、実際に足を運んでみたい。9月から学習塾オープンというから、9月に入ったら行ってみようかな。

 出版業界にいながらして、自らの業界の問題を指摘することは身内批判になりかねない。だからこそ、歯に衣着せぬ奥村社長のような方の存在は貴重だ。私はこれからも出版業界を中から変えてくれそうなキーパーソンを応援していきたい。

 ⇒  鳴海が着目する出版業界を変えてくれそうなキーパーソン

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posted by 鳴海寿俊 at 00:00| Comment(0) | 書店・書店員(売り手) | 更新情報をチェックする
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