2014年08月19日

これからの【ビジネス書】のあり方とは?

【連載コラム】 ビジネス書に対する接し方が変わってしまった! (その4)
 ⇒⇒ (その1)から読みたい方は こちら 

 最近、ビジネス書に対する接し方が変わってしまった。きっかけは先日出会った 『ビジネス書を読んでもデキる人にはなれない』(漆原直行 著/マイナビ) という本。【ビジネス書】に対して3つの疑問が湧いてきたのは、 (その1) で触れた通り。今回は(疑問3)について書いてみる。

ビジネス書を読んでもデキる人にはなれない (マイナビ新書)ビジネス書を読んでもデキる人にはなれない (マイナビ新書)
漆原 直行

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⇒ 鳴海の紹介記事はこちら

(疑問1)
ビジネス書の著者になることはそんなに価値のあることなのか?
⇒ 鳴海のこたえは こちら

(疑問2)
このブログで出版業界に対して苦言を呈したところで何か変わるのか?
⇒ 鳴海のこたえは こちら

(疑問3)
そもそもビジネス書を買う価値があるのか?

 (その3) で、ビジネス書を買うことによって 【3重のコスト】 が発生していると書いた。改めて整理してみると次のようになる。

読者が支払う 【3重のコスト】
 1.購入するための 【お金】
 2.整理するための 【時間】
 3.処分することに対する心理的な 【痛み(抵抗感)】

 これらは 「買って良かった」 と思える本であれば、行く末(最終的には廃棄処分されるという結果)が同じであっても、相殺されて満足感が上回るので問題はない。しかし 「買わなければ良かった」 と思う本については、大きな代償となる。その後悔の念が大きければ大きいほど、「借りて読んで買う価値のある本だけ買う」 というスタイルになってしまう。残念ながら今の私がこのパターンである。

(疑問3)
 「そもそもビジネス書を買う価値があるのか?」


 この疑問について、一言で答えを出すことはできない。それを理論立てて説明するよりも、「どうしたら買う価値のあるビジネス書を生み出せるのか?」 を考える方が有意義である。実現できるかどうかはさておき、気に入っているのは次のようなアプローチである。

* 三浦崇典氏(天狼院書店)とゴッドファーザーの対談 (鳴海の紹介記事は こちら )
 『文化通信』(12/11/19号記事「この業界を救うための唯一の方法『新しい書店の形を考えるD』) より

●出版点数を減らす

(三浦氏)
「この業界を良くするにはどうすればいいでしょうか。」

(ゴッドファーザー)
「出版点数を減らせばいい。くだらない本が多すぎる」

「出版点数を減らすと、どういうことになるだろうか。書店の側から考えると、新刊入れ替え、および返品の業務が激減することとなり、書店の利益を圧縮する人件費を圧縮できる。また、ひとつひとつの本が棚に残る可能性が高くなり、重版率も高くなる。書店の方では雑務が減るので、積極的に仕掛ける時間ができるようになる。」

「出版社の営業も少ない点数を案内することができるようになるために、負担も少なくなる。もちろん、編集者は例えば年間10冊のノルマが5冊に減れば、1冊にかける時間が多くなり、本の完成度が高まる。このサイクルに持っていければ、重版率が上がり、返品率が下がる。」

(三浦氏)
「出版社は自分の得意分野の本を伸ばすことに集中せざるを得なくなる。そうしなければ、競争力を維持できる本を、そもそも作れなくなるからだ。そんな理想論、できるはずはない。そう思われるかも知れない。けれども、実際にこの姿勢を貫いている出版社がある。」

「サンクチュアリ出版である。ここは月の出版点数は1冊ほどで、なので編集に注力することができ、同時に営業も少ない本に集中することができる。1冊の本を丁寧に作り、丁寧に売り伸ばすという、理想の形が、この出版社ではできている。それは恐るべき重版率に表れている。」

 残念ながらこの記事には肝心のサンクチュアリ出版の「重版率」の数字に言及されていない。しかしながら、出版社/書店/読者の3者の目線がふまえられた良い対談記事であった。実際に出版点数を絞った試みをしている出版社があるというのも心強い。ただもはや紙の本の競合は電子書籍とは限らない。SNSやゲームといった他の娯楽との 【時間の奪い合い】 はとうに始まっている。「本」という枠組みで議論している時点でもはやアウトかも知れない。

 本作りに携わる人が持つべき危機感は

「買ってもらえる本」 を目指すだけでは足りない!
もはや本である必要のない 「情報」 をどう売るか!

これを考えるべきだと思う(別に新しいことを言っている訳ではないのだが)。

(鳴海のアイデア)
 これからの【ビジネス書】のあり方とは?


 出版社で新しい企画を通す際、なかなか新人著者の起用は難しいらしい。売れっ子著者にすがり、頭を下げて執筆をお願いする。当の著者は多忙だから、内容も過去本の焼き直しにならざるを得ず、文体も自信満々の " 上から目線 " となりがちだ。

 結果的に、書店に並ぶのは

× ヒット作の人気に便乗した似たタイトルの類書
× タイトルで謳われている要素がほとんどない、中身とほとんどマッチしていない本

こんな本に出会った読者はきっと 「詐欺じゃん!」 とツッコミを入れたくなるだろう。

 現在の力関係はこんな感じ(あくまでも私の推測)。
(強者)【売れっ子著者】 > 【編集者】 > 【新人著者】(弱者)

 本作りに肝心の【読者】は介在していない印象。むしろ、【読者】の方から " 離れている " という感じか。【売れっ子著者】の上から目線にイライラし、二番煎じ本にガッカリして、心が離れてしまう。そして【編集者】の方も消費者よりも、いかに【売れっ子著者】に書いてもらうかに腐心しているように感じる。

【売れっ子著者】本のクオリティについては、勝間和代氏が著書「有名人になるということ」(ディスカヴァー・トゥエンティワン)でこう述べている。

「当の本人は、忙しくなるうえ、人気を背景に仕事が『Easy』になるため、アウトプットの質が下がる」
 * 『有名人になるということ』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)(p167)より
 (鳴海の紹介記事は こちら

 結局、【売れっ子著者】に頼る構造が(ビジネス書における)悪循環を生み出す元凶である、というのが私の分析だ。時はすでに、誰もが電子書籍として本を自らプロデュースできる時代。もはや(現物である)本である必要はない。【新人著者】が生まれる土壌はでき始めているのだから、これに着目しない手はない。

 私が考える " ビジネス書 " の在り方はこうだ。
(強者)【読者】 > 【新人著者】 > 【編集者】(弱者)
(強者)【読者】 > 【編集者】 > 【売れっ子著者】(弱者)

 【読者】が【新人著者】を育成していけるような仕組みや場、これを出版社が何らかの形で提供できればいい(安易だがweb上のコミュニティをつくるとか)。【新人著者】はおのずと【読者】目線で執筆するはずだし、【読者】は思い入れがあるから(「借りる」ではなく)きっと「買う」。【新人著者】は【編集者】に頭を下げるのではなく、「読みたい本」について【読者】から教えを請うべきだ。頭を下げるべき相手は【編集者】ではなく、【読者】の方である。

出版社は、【新人著者】が出版社を通さずにデビューしてしまわぬよう、発掘・育成に専念すべきである。【読者】→【新人著者】→【売れっ子著者】へと昇格させていく仕組みや場。これを提供できなければ、 「Amazon Kindle ダイレクト・パブリッシング」 のようなサービスには太刀打ちできない! 相手は無料で簡単、世界に発売できるのだから。

 一方、【売れっ子著者】に対してはどうするか? 極論を言えば、【売れっ子著者】の方から売り込んでくるまで待てばいい。売れっ子である以上は多忙ゆえに、クオリティは期待できないし、慢心や驕りがある。それは【読者】が望まない。【読者】が執筆を望むなら、【編集者】がしっかり声を聞いてニーズを汲み取り、(下手に出る必要もなく自信を持って)ニーズに合った企画の執筆のお願いをすれば良い。

 この流れである以上、書店に並んでいるのはヒット作の類書だらけ・・・ という状況にはなりにくいはず。売れっ子著者には初心を思い出し、読者に有益な情報を提供するという責務を全うして欲しい。

 具体性に欠けるが、新人タレントを育成するように、プロダクションならぬ出版社が新人著者を育成していく・・・ そんな発想があっても良いのではないか。本(紙)にこだわらず、ネットであろうと講演会であろうと何でもいい。

 有益な情報を発信すること

これが大事である。もはや、育成した著者の本を自社で出すのではなく、競合の出版社から発売する・・・ なんて発想が自然に生まれてきた時、出版業界の未来が拓けていることと思う。「ビジネス書に対する接し方が変わってしまった」 と述べたが、今後はただやみくもにビジネス書を読むのではなく、【ビジネス書の在り方】を考える上でヒントになるような本を読んでいこうかなと思う。

 もう著者を目指すのはやめた!

 今後は「有益な情報発信」、これを目指そうと思う。続きは こちら 


【連載コラム】 ビジネス書に対する接し方が変わってしまった!
 ┣ (その1) 【ビジネス書】 の著者になることはそんなに価値のあることなのか?
 ┣ (その2) 身内批判を恐れない! 出版業界を中から変えてくれそうな勇気ある変革者たち
 ┣ (その3) 本作りに携わる人たちに知って欲しい読者が支払う 【3重のコスト】
 ┣ (その4) これからの【ビジネス書】のあり方とは?
 ┣ (その5) 【ビジネス書】 は買う価値があるのか? 図書館の利用価値は?


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posted by 鳴海寿俊 at 00:00| Comment(0) | 【連載】 ビジネス書との接し方 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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