2014年11月08日

「代官山 蔦屋書店」をプロデュースしたCCC社長が語る・・・ リアル書店の生き残る術とは?

 先週行った 「コーチャンフォー若葉台店」 については こちらの記事 で紹介した。平日の夕方に行った時は、売場面積1000坪(書籍)という広大なスペースがガランとしていたが、数日後の週末の昼間に行ったらかなり賑わっていた。ただどうしても

広くて圧倒的な在庫量があればそれだけでいいのか?

という疑問は消えなかった。同記事で 「代官山 蔦屋書店の意思を引き継ぐライフスタイル書店」 と名づけられた  「函館 蔦屋書店」 からのメッセージ を紹介した。

その場所を、みんなの居場所に

 もう、商業施設をつくるだけで、地域がいきいきとする時代ではありません。買い物だけならネットでもいい。求められているのは、ゆっくりと過ごせる空間 でした。本とおいしいコーヒーがあって、家族や友達とおしゃべりしたり、子どもたちもワイワイできる場所。学校や職場以外の、いわゆる第三の活動の場としても使える。働く人たちが、お客さまと名前で呼び合うようないい距離感もできる。ものを買う場所は、ヒトもコトもつながる場所であるべきだと思います。函館蔦屋書店がめざすのは、これからの時代のスタンダード。地域のみなさんが気持ちよく過ごせる " 居場所 " になります。

── 函館 蔦屋書店

確かにこんな空間が身近にあったら、ついつい行きたくなる。でも " 書店 " という枠組みにあえてはめてみると、 " 本を売る " という本来の書店の役割に対して、真っ向から勝負していない気がして、しっくりこない。

 前にも書いたが、私自身が大学でプロダクトデザインを学んで、メーカーに就職し、モノづくりを中心に仕事をしていたからこう感じるのかも知れない。蔦屋書店を運営する カルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社 (CCC)の増田宗昭社長が書いた本が手に入ったので、真意を探ってみようと思う。

4484142295知的資本論 すべての企業がデザイナー集団になる未来
増田宗昭
CCCメディアハウス 2014-10-09

by G-Tools

 サブタイトルの 「すべての企業がデザイナー集団になる未来」 というフレーズ。これは職業として " デザイナー " という肩書きを持つ人が見たら「ん?」と疑問に感じるかも知れない。増田氏の言葉をいくつか抜き出してみるとその意味するところが少しわかってくる。

 企業はすべて、デザイナーの集団となる。そうなれない会社は、これからのビジネスシーンで成功を収めることは、できない
(p46)

商品にとってのデザインを " 付加 " 価値と捉えている点で、もうダメだろう(中略)商品にとってデザインとは、決しておまけ的要素などではあり得ない。それは本質に深く根ざした価値なのだ
(p48-49)

" これからは自らもデザイナーにならなければ生き残れない " という危機感を持つことのできない人は、時代認識に甘さがあるのではないかとも感じる。デザインは専門のデザイナーに任せればいい、などという態度は、これからは通用しないのだ。デザインが商品の本質である以上、そこにコミットできないスタッフは、すでにビジネスにおいては無用の長物だ
(p50)

 私の解釈では、増田氏が言っているのは 「デザイナーとしてのマインドを持て」 という意味であり、決して 「(職業として食えるくらいの)デザイナーにならないと生き残れない」 という意味ではないだろう。

 CCCは自ら 「企画会社」 を標榜しているが、「変革のためのデザインを提示することこそが、企画会社の仕事」(p72) であり、「その可能性を一つひとつ可視化し、デザインとして提示すること。それが企画会社の使命であり、だから私たちはデザイナー集団にならなければならない」(p73) と主張する。

 「代官山 蔦屋書店」 は建築界のオスカーとも言われる 「World Architecture Festival」(2012年度 Best Shopping Center部門) でグランプリを受賞することによって、世界からも評価を得た。 " デザイン " や " 企画 " の定義や解釈には疑問符はつくが、増田氏自ら " デザイナー " (増田氏の定義によるもの) を体現していることは間違いない。

(参考)
代官山 蔦屋書店
World Architecture Festival winners 2012

 増田氏は今どきの書店の売り場を 「そこはただ " 売り場 " でしかなく、 " 買い場 " になっていない」 (p86) と指摘する。「代官山 蔦屋書店」 などでは、本の形態による分類ではなく、「旅、職・料理、人文・文学、デザイン・建築、アート、クルマ・・・ といったジャンルごとにゾーニングされ、さらにその中でも内容の近しいものが、単行本やら文庫本やらといった枠を飛び越えて横断的に固められている」 (p86) という。これは書店員の側からするとたまったものではない。不慣れな陳列に適応するのにどれ位の労力を割いているのか想像もつかない。これをやってのけ、顧客目線に立ち " 売り場 " ではなく " 買い場 " を目指しているところは称賛に値する。

 増田氏は、本が売れない理由についてこう述べる。

 本や雑誌というのは、その一冊一冊がまさに提案のカタマリともいうべき存在なのだ。それが売れないというのは、売り方のほうに問題があるのではないか・・・? では、その問題というのは何か。それを考えるうちに、私はある答えにたどり着いたのだ。それを一言で表現すれば、こうなる──

書店は本を売っているから、ダメなのだ。
(中略)

顧客にとって価値があるのは、本という物体ではなく、そこに盛り込まれている提案のほうなのだ。そう、売るべきなのは、その本に書かれている提案だ。それなのに、そうした点に無自覚なまま、

本そのものを売ろうとするから、書店の危機などといわれる事態を招いてしまっているのではなかろうか?

(p83-84)

 なにせいまや書店チェーン売上ナンバーワンの蔦屋書店(TSUTAYA)である。他の書店が聞いたらいい気持ちはしないであろう、こんな言葉にもぐうの音も出ない。

 CCCはもはや " 売り場 " ではなく " 買い場 " といった次元より、更に上を目指しているようだ。2015年春にオープンする 「梅田 蔦屋書店」 は徹底的に " 居心地 " にこだわるという。フロア面積1228坪。「極論すれば私はそれをまるごと、 " カフェ " にしてしまおうと考えている。ショッピングビルの中にあるとはおよそ思えない、公園とカフェが融合した場所」 (p140) にするというから楽しみである。

(参考)
JR大阪駅駅ビルの一体開発 現三越伊勢丹の紳士フロアに蔦屋書店 (wwwdjapan.com 2014/07/14記事)

 ただやっぱり " 本を売る " という本来の書店の役割に対して、真っ向から勝負していない感じは拭えない? でもそれは仕方がないということがようやく分かった。CCCはそもそも蔦屋書店を " 書店 " という枠組みにはめていないのだろう。

 数々の映画や音楽や書籍で語られるライフスタイル。それがTSUTAYAの真の商材だ。だから、そこからレンタルという業態も発想された。個々の商品ではなく、そこに表現されているものが商品なのだから、モノを買ってもらう必要はない。その内容を記憶してもらうための時間に対する代価だけをいただければいい
(p59)

という考えなのだから・・・ 他の書店と比べても意味がない。私も偉そうに、紙か電子か? ネット書店かリアル書店か? なんてどうでもいい

大切なことは、紙という形態をとる必要のない『出版物』をどう売るか
(いやむしろ)価値の高い『出版物』をどう生み出すか


なんて、書いてきた。増田氏と共感できる部分は大いにある。
(無理やり共通点見つけちゃったりして?)

記事の表題にした 「リアル書店の生き残る術とは?」 についてだが、増田氏は将来の書店についてこんな考えを述べている。

 将来、リアルの小売店は、" ネット企業の運営による店舗 " 以外は生き残れないかもしれない
(p126-127)

 リアル店舗だけで成長を実現することは早晩難しくなる。スペースを圧迫する非稼働在庫は値引き販売をする方策がなく、であれば行き着く先は不毛な価格競争だ。
だからリアルの世界においても、ネット企業が運営する店舗が、生き残っていく資格を得るのだと思う。ネット通販とりある店舗の両方を持つ企業は、やがてネットでの売り上げが勝り、店は " ネット企業によるリアル店舗 " となる。ネットを介しての情報処理の大きさと、コストのかからない在庫を武器として、顧客との接点であるリアル店舗の企画を組み立て、それによって競合店にはない顧客価値を創造していく。そうした可能性を持つからだ。
(p130-131)

 私も同感である。一方で " 出版不況 " と呼ばれるこの業界が、健全に勢いを取り戻したとしたら、未来の書店員と客との会話はこんな風になると推測している。

(鳴海の関連記事) 未来の【書店員】と【客】との会話はこうなる!?

 でもやっぱり・・・ " モノ " づくりが仕事の原点であると考える私は、ディスカヴァー・トゥエンティワンなどのようなチャレンジしている出版社にも期待したい! どんな " 売り場 " であっても、売れてしまうほど強い、本当に価値のある商品づくり、これを全ての出版社に目指して欲しい。

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posted by 鳴海寿俊 at 00:00| Comment(0) | 書店・書店員(売り手) | 更新情報をチェックする
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