2015年01月03日

『「本が売れない」というけれど』A  本は【所有】から【体験】【消費】へ

459114223X(046)「本が売れない」というけれど (ポプラ新書)
永江 朗
ポプラ社 2014-11-04

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※本書紹介記事のパート@
 「10年後、50年後、100年後にあらわれるかもしれない読者のために」 は こちら

 本が売れなくなった理由として、永江氏の分析が非常に的確だなと感じたので紹介しておきたい(前回記事は こちら )。私は本書を【超】がつく良書と書いたが、その理由の1つとして、私の(今まで気づいていなかった)偏った考え方を指摘してくれたことを挙げた。私は本書を読むまで、本が売れなくなった理由は

 買うに値する商品価値の高い本が少なくなったから

と考えていた(その経緯については 【連載コラム】ビジネス書に対する接し方が変わってしまった! を参照)。この考えを完全に訂正するつもりはないのだが、永江氏が述べる環境変化による影響の方が大きいのかも知れないと思い始めたのだ。永江氏は新刊書が売れない理由として、読書環境の多様化を挙げている。

 読者にとっては1冊の本を買う際に、「ブックオフで買う」という選択肢が増えた。単行本のほかに文庫も出ている作品なら、単行本の新本、文庫の新本、単行本の古本、文庫の古本という4つの選択肢があるわけだ。(中略)ブックオフが登場したことで、新刊本を新刊書店で買うのは「損だ」と感じる人びともあらわれた。
(p78-79)

 いままでは本を買うと、読み終わっても自宅の本棚に保管していた。また使うことがあるかもしれないからだ。(中略)ところがアマゾンとヤフオク!によってその必要がなくなったというのだ。本が必要になったらアマゾンやヤフオク!や「日本の古本屋」や「スーパー源氏」で検索すればいい。すべての本が必ず見つかるわけではないが、たいていの本は見つけられる。そして、読み終わった本はブックオフやヤフオク!で売ってしまえばいい。また必要になったらネットで探せばいい。
 こうして日本人の本に対する感覚が少しずつ変容していった。いってみれば本は「所有」するものから「体験」するもの、あるいは「消費」するものに変わった。物体として所有するのではなく、読むことを体験し、情報として消費するのだ。
(p79-80)

 2000年、全国の公共図書館の数は2639館だった。2013年は3248館にまで増えた。約600館も増えたのだ。個人向け貸出冊数は5億2357万冊から7億1149万冊に増えた。ちなみに新刊書籍の推定販売部数は2000年が7億7364万冊で、13年は6億7738万冊。10年に販売部数を貸出冊数が抜いている。つまり、いま日本人にとって最大の読書インフラは新刊書店ではなくて図書館である、とすらいえるのだ
(p81-82)

 ブックオフの誕生は1990年、ヤフオク!が1999年で、アマゾンは2000年である。これらのサービス開始に加えて、バブル崩壊以降の長期不況によって所得が減っていることも、新刊書を買わなくなった理由ではないかと永江氏は述べている。

 読書は「所有」から「体験」「消費」へ

この感覚の変化がじわりじわりと進行してきたのである。永江氏はこの状況について、所得減で「買えない」ではなく、「買わない」のだと述べる。私もそうである。本の購入には3重のコストがかかるのだから、よほど買う価値が高くない限り買わない。

(鳴海の関連記事)
 本作りに携わる人たちに知って欲しい読者が支払う 【3重のコスト】 

 先ほど私は新刊書が売れなくなった理由を「買うに値する商品価値の高い本が少なくなったから」と考えていたと書いたが、本来であればこの出版不況にあえぐ前に、読書環境の多様化に気付き、以前よりも高い商品価値の本を意識して作るべきだったのではないか。

 しかし、読書が「所有」から「体験」「消費」に変わってしまったとしてもチャンスはある。以前はモノ(カタチのある現物)に対する対価としてお金を支払うという感覚だったが、もはやこの感覚は薄れ、カタチのないサービス、つまり「体験」や「消費」に対して抵抗なくお金を支払う時代になった。一部の若者は紙の本を読むことには抵抗感を抱いても、スマホやタブレット等の電子機器の画面を通してなら、ストレスなく自然に読書をするのかも知れない。

 前回記事 でも紹介したが

 ぼくたちのメディア環境、情報環境が変化していければ、「本」もまた変わっていく。ぼくたちが守らなければならないのは、そのような未来のかたちも含めた「本」であって、現在の本やそれを生産したり流通させたりするシステムではない。「本」をめぐる思考は、常に未来に開かれなければならない。
(p234-236)

 いまの「紙に印刷して綴じて表紙をつけた」本という形態にこだわってばかりではいけないのである・・・ って私は当事者ではないのだけど。私の最近の読書はもっぱら、図書館で借りるか、Kindleで電子版を読むか。出版業界が崩壊してしまうと、そのどちらも叶わなくなるので、早く再生してもらいたいと読者として切に願う。

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posted by 鳴海寿俊 at 20:58| Comment(0) | 【書籍】 出版業界・読書全般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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