2012年10月25日

【問題解決】本ピックアップ(3)(各書の興味深い記述紹介と比較検証)

 まずある【問題解決】本の興味深い記述を紹介する。

「本書の執筆に当たって、数十冊にわたる思考力、問題解決、ロジカルシンキングといった『考える力』に関しての類書をベンチマークした。その結果わかったことは、この種の著書の本質的なメッセージや著者の思考回路が驚くほど酷似しているということであった。」(p220)

4492555986地頭力を鍛える 問題解決に活かす「フェルミ推定」
細谷 功
東洋経済新報社 2007-12-07

by G-Tools

★08年amazon和書ベストセラー: 第15位
 (鳴海の紹介記事は こちら

 これは細谷氏の『地頭力を鍛える』のあとがきの件である。

 07年12月に発行された本書は、08年amazon和書ベストセラー15位となった。つまりそれ以前に出された主要な【問題解決】本について、当然ながらふまえられた上でのコメントである。実は私も同じような印象を持ったのと同時に、類書との差別化を図る上での著者の"苦労" を感じ取ってしまった。そして最近読んだ何冊かの本からも作り手側の "苦労" というか、"無理やり感" を感じてしまったのだった。

 97年発行の『問題解決プロフェッショナル』、01年発行の『ロジカル・シンキング』、06年発行の『仮説思考』あたりまでは、おそらく素直に書かれた "オーソドックス" な本が多いように感じるが、07年の『地頭力を鍛える』あたりから、"無理やり" 切り口を変えたり、奇をてらった本が出てきているような気がする。

新版 問題解決プロフェッショナル―思考と技術 ロジカル・シンキング―論理的な思考と構成のスキル (Best solution) 仮説思考 BCG流 問題発見・解決の発想法

 『地頭力を鍛える』は、「抽象化思考力」「フレームワーク思考力」「仮説思考力」の3つからなる「思考力」を、「地頭力」という馴染みやすい言葉に置き換えて展開するあたり、よく練られているし、【フェルミ推定】をメジャーにしたという意味での貢献度は大きいのだろう。ただ "地頭力" と名付けられたのには、読者を引きつけるための明らかな "作意" を感じる。良い意味での "作意" だし、著者の、というより出版社側のそれかも知れない。結果として、08年のamazon和書ベストセラー15位にランクインしているから、内容もコンセプトも一定のクオリティに達していたのだろう。

 一方、09年に発行された『プロの課題設定力』は初級者向けで読みやすい反面、展開は少々苦しい気がする。課題設定に必要な要素は次のとおり「3つの視方(みかた)」として紹介されている。

【課題設定の3つの「視方」】
①【視座】誰がどんな目的を達成するための課題なのか
②【視野】どのような広がり(空間軸)と長さ(時間軸)で課題を捉えるのか
③【視点】どのように課題を切り出すのか

4492556524プロの課題設定力
清水 久三子
東洋経済新報社 2009-07-30

by G-Tools

(鳴海の紹介記事はこちら

 まず「視座」という言葉自体、一般的にあまり使われていないし、無理やりこれらの3つのワードに落とし込んだ印象は否めない。

 一方、01年発行の『問題発見プロフェッショナル』では既に、似たような切り口で整理がされている。

【問題発見の4P】
① Purpose(目的軸)・・・そもそも「何のために」
② Position(立場軸)・・・そもそも「誰のために」
③ Perspective(空間軸)・・・問題を俯瞰する/抽象度や視点を上げてみる
④ Period(時間軸)・・・どの時点での問題とするか?

【問題の本質を分析するための3つの視点】
①【拡がり】の中から「ギャップ」を生み出す重要原因を見出す
②【深さ】をとらえ、問題を構造的に把握し、具体化する
③【重み】づけを行い、取り組むべき問題の優先順位をつける

4478490341問題発見プロフェッショナル―「構想力と分析力」
齋藤 嘉則
ダイヤモンド社 2001-12

by G-Tools

(鳴海の紹介記事はこちら

 明らかに通じるところがあるのに、あえて違う切り口で展開するのは、これから学ぼうとしている読者には少々不親切かも知れない。現に私自身、【課題】と【問題】の違いについて混乱し始めているし、『イシューからはじめよ』では【イシュー】という言葉でも展開されている。

 ちなみに【問題】というワードについて、『問題発見のプロフェッショナル』では次のように定義されている。

【問題】 とは『あるべき姿』と『現状』の『ギャップ』である。
【解決策】 とは『ギャップ』を埋める処方箋である。

 * 『問題発見のプロフェッショナル』(p17)


 一方、【課題】については、『プロの課題設定力』ではこんな感じである。。

【課題】 とは
 『現状』と『あるべき姿』のギャップを把握した上で、『現状』を
 『あるべき姿』にするために、なすべきこと。
【問題(点)】 とは
 課題の達成(『現状』を『あるべき姿』にすること)を阻む要因。

 * 『『プロの課題設定力』(p16)


 更に『イシューからはじめよ』では【イシュー】を

「2つ以上の集団の間で決着のついていない問題」
「根本に関わる、もしくは白黒がはっきりしていない問題」
 (p25)

4862760856イシューからはじめよ―知的生産の「シンプルな本質」
安宅和人
英治出版 2010-11-24

by G-Tools
★11年amazon和書ベストセラー: 第100位(鳴海の紹介記事は こちら

と定義した上で、

「問題はまず『解く』ものと考えがちだが、まずすべきは本当に解くべき問題、すなわちイシューを『見極める』ことだ。」

 * 『イシューからはじめよ』(p45)

としている。

 言葉の違いはあれど、いわゆる【問題解決】本の言わんとすることや本質的な部分はやっぱり同じなのだろうと思う・・・ というか【問題解決】と【課題設定】の違いすら、よく分からなくなってくる(そう言えば【問題発見】という言葉もあるし)。

 最後に最近出された4タイトルについて、著者が何を狙って書いたのかを示す記述を紹介する。

2009年8月発行
『プロの課題設定力』の著者 清水久三子氏

「昨今、『問題解決』は市民権を得た言葉となってきました。ビジネスパーソンに限らず、小学生を対象とした問題解決の書籍も出ています。一方で、本書でご紹介する『課題設定』は、比較的なじみの薄い言葉ではないでしょうか。少なくともスキルアップやノウハウとしては、まだまだ認知されていないようです。しかし課題設定は、問題解決と同じかそれ以上に重要なビジネスのコアスキルなのです。(略)そんな課題設定のスキルを皆様にも身につけていただきたく、本書を執筆しました。」(p1)

2010年12月発行
『イシューからはじめよ』の著者 安宅和人氏

「ちまたに『問題解決』や『思考法』をテーマとした本は溢れている。しかし、その多くがツールやテクニックの紹介で、本当に価値のあるアウトプットを生み出すという視点で書かれたものは少ないように感じる。意味あるアウトプットを一定期間内に生み出す必要のある人にとって、本当に考えなければならないことは何か。この本はそのことに絞って紹介したい。」(p2)

2012年3月発行
『ミッションからはじめよう!』の著者  並木裕太氏

「本書は一見、いわゆる『問題解決』や『ロジカルシンキング』のスキルを説く本のように見えるかもしれませんが、目的は、他の『問題解決本』や『ロジカルシンキング本』のように、問題をきれいに整理し分析し、解決策をかっこよくプレゼンできるようになることではありません。そうではなくて、本当に求める結果を得るための方法を示すことです。実際のところ、巷にあふれている、いわゆる『問題解決本』に書いてあることは、問題解決のプロセスの一部にすぎません。そういう本を買ってはみたけれど、結局使えない。(略)なぜなら、<実際のビジネスの場面で大事なことは、分析することでも整理することでもなく、『実行』することだからです。」(p4)

2012年4月
『すべての仕事は【逆】から考えるとうまくいく』の著者
(共著:ロブ・ヴァン・ハーストレッチト氏/マーティン・シープバウアー氏)

「この本の狙いは、問題解決に悩み続けるビジネスマンに、現状の2倍は効果的な解決法を見出してもらうことだ。経験からいうと、よくある『問題解決の手法』には効果が期待できないことが多い。(略)役に立たない解決法の根本には、そもそも解決へのアプローチそのものに間違いがある。(略)この本で紹介するのは、革新的な問題の解決法である。それは『逆から考える』。これは、問題そのものではなく、理想や目的を考えることから始める問題解決法だ。つまり、問題を分析するのではなく、最初からはっきりとした解決策に注文するのである。(略)決断そのものに意味はない。施策実行にこそ意味がある・・・」(p7)

 これらの各著者のメッセージからは、執筆当時の【問題解決】本やその手法における周辺環境が垣間見える。過去にベストセラーとなった【問題解決】本に書かれていた、いわゆる "王道" "オーソドックス" な知識はある程度周知されてきたせいか、"問題" 云々ではなく、いかに "実行" するかという点に軸足が置かれているのが最近の傾向かも知れない。

ただ・・・

素人の読者からすれば、もうこれ以上違う言葉で説明された本を出すのは止めて欲しい・・・

と言いたいところ。でも斬新で鋭い切り口の本が出て来るのを期待してやまないのも事実。この手のジャンルはコンサルタントが書いているものがほとんどであるが、自身の宣伝ツールとしての本ではなく、読者が期待している本を是非書いて欲しいと思う。

 また個人的な要望を言えば、執筆に使用した本は類書も含めて記載して欲しいものである(全てがオリジナルではないはずなのだから)。ちなみに私が読んだ本で、参考文献・引用文献が最後に一覧にして紹介されていたのは、内田氏の『仮説思考』と細谷氏の『地頭力を鍛える』だけであった。

 だいぶ理解度は深まったように思うがまだまだ勉強が足りない・・・ 座学より "実行" が大切なことは分かっているが、せっかく購入した本なのでもう少し咀嚼してみようと思う。

(鳴海の関連記事リンク)
【問題解決】本ピックアップ(1)(amazon和書ランキング/2001年以降の上位タイトル)
【問題解決】本ピックアップ(2)(ランク外含む発行年順紹介)
【問題解決】本ピックアップ(3)(各書の興味深い記述紹介と比較検証)

にほんブログ村 本ブログ ビジネス書へ ← めざせ1位!あなたの応援ポチッが励みになります



posted by 鳴海寿俊 at 00:00| Comment(0) | 【書籍】 ビジネス書 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
コチラをクリックしてください