2014年06月29日

『トヨタの問題解決』 勤続40年以上の元リーダーたちによるトヨタの「思考力」がこの1冊に

404600312Xトヨタの問題解決
(株)OJTソリューションズ
KADOKAWA/中経出版 2014-05-15

by G-Tools

 今回紹介するのは、先月発売された問題解決本。

 著者は、(株)OJTソリューションズ。2002年4月にトヨタ自動車とリクルートグループによって設立されたコンサルティング会社で、「トヨタ在籍40年以上のベテラン技術者が『トレーナー』となり、トヨタ時代の豊富な経験を活かしたOJT(On the Job Training)により、現場のコア人材を育て、変化に強い現場づくり、儲かる会社づくりを支援する」(巻末著者紹介より)会社である。

 同シリーズでは、2012年に発売された『トヨタの片づけ』(鳴海の紹介記事は こちら )があり、20万部超。企業が著者として出された本の多くは、分業で執筆するせいなのか、個性がなく教科書っぽい仕上がりになりがちだが、随所に社員の実名を出しながらリアリティーを出している点は、今回紹介する『トヨタの問題解決』も同じ(頻度は『トヨタの片づけ』より控えめ)。イラストや図解も多くて、読みやすいので、「問題解決」を初めて学ぶにはちょうど良い。「問題解決」本はかなり読み込んできたので、新鮮な情報はそれほどなかったが、2つの気づきを紹介し、後半はポイントを整理してみようと思う。

(鳴海の関連記事)
 【問題解決】本ピックアップ
 ┣ 【問題解決】本ピックアップ(1)(amazon和書ランキング/2001年以降の上位タイトル)
 ┣ 【問題解決】本ピックアップ(2)(ランク外含む発行年順紹介) 
 ┣ 【問題解決】本ピックアップ(3)(各書の興味深い記述紹介と比較検証) 


 気づき -1
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 「問題解決」と言えば、「あるべき姿」を描く点はどの手法も共通。ただし、現状が「あるべき姿」に達していない問題やトラブルに対処する「発生型問題解決」と、現状に対してより高い次元の「あるべき姿」を設定する「設定型問題解決」の2種類がある・・・ とするのが一般的な「問題解決」本の説明であった(「○○型」という表現は本によって異なる場合があるが意味は同じ)。

* 以下の図は、「問題発見」「課題設定」「問題解決」「プロジェクト」の関連性を
 ふまえて、鳴海自身が理解しやすいように【問題解決】全体の相関関係を図示したもの

kaiketsu01.jpg

 しかし本書では、トヨタの3つ目の「問題解決」として、【ビジョン指向型問題解決】を挙げており、こんな風に紹介している。

中長期的に取り組む「ビジョン指向型問題解決」

設定型問題解決が、短期的な「あるべき姿」を描くのに対して、ビジョン指向型では、中長期視野をもって世界情勢など大きな視点から「あるべき姿」を設定し、「現状」とのギャップを埋めていきます。

自分で「あるべき姿」を設定するという意味では、設定型問題解決の発展型といえますが、大きな視点から「背景」までとらえる点が設定型との大きな違いです。ここでいう「背景」とは、トヨタの場合だと次のようなものをいいます。

 ・世界の経済情勢はどうか、これからどのような動きを見せるか?
 ・世界の自動車産業はどのような状況か? 今後どうなるか?
 ・日本の経済や自動車産業は、これからどのような状況になりそうか?

このような世界情勢からの分析をスタートさせて、

 ・トヨタ自動車はどうあるべきか?
 ・自分の部署・職場は、どうあるべきか?
 ・自分がすべきことは何か?

という具合に身近なところまで問題を下ろしていって、ビジョン指向型問題解決のテーマを見つけていくのです。

(p51・52)

 確かに「設定型問題解決」の延長ではあるが、かなり具体的で難易度も高そうである。本書ではこの「ビジョン指向型問題解決」により、石油の枯渇や高騰、環境問題の深刻化という「背景」から、あの「プリウス」が生まれたというエピソードも紹介している。

 そして、私が「さすがトヨタ!」と感銘を受けたのが、次のメッセージである。

「ビジョン指向型」には「意思」を込める

漠然としたスローガンからイノベーションは生まれない。明確な「意思」があるから最後までやり遂げられる。

 (p58)

 単なる知識・スキルとして「問題解決」を習得するのではなく、「自分は何をしたいか」と問いかけることから始まるという「ビジョン指向型問題解決」。多くの経営者がビジョンこそ社員に示すものの、単なるスローガン化してしまっていたり、逆に教科書チックな「問題解決」に終始するばかりに社員たちに「意思」がない・・・ こんな状況が起こっているのに、トヨタはこれに対する具体的な解決策を持っているように思える。


 気づき -2
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 ドラッカーの名言に次のようなものがある。

「元々しなくても良いものを効率よく行うことほど
 無駄なことはない」


 枝葉の仕事を効率よく行えたところで、幹自体が不要なら枝葉を整えたところで時間の無駄である・・・ これは信じて疑ったことはなかった。ただ今回、本書を読んでみて「えっ、あのトヨタが何言ってんの!?」と目を疑った。

幹からではなく、小枝から攻める (p140)

 理由は、比較的大きい問題から取り組むと挫折しがちだが、小問題から取り組んでもいずれ中問題、大問題の解決につながる、からだと言うのだ。

大きな問題は小さく絞ってから解決する (p133)

 これは分かる。「品質を上げる」とか「売上を上げる」のようなテーマでは、何から手をつけていいか分からないからである。読み進めてみると、トヨタの人材育成手法が垣間見える。

いちばんのポイントは、小さな問題から取り組んだことです。自分たちの力で解決できる問題から取り組むことにより、頭を使って考えますし、小さな成功が自信になます。(中略)

まわり道をしているように感じるかもしれませんが、いきなり工程をなくすという問題にとりかかるよりも、小さな問題から改善を積み重ねたほうが、はるかに知恵が出やすいといえます。

特に問題解決に慣れていない人は、比較的大きな問題ではな、小さくて身近な問題から手をつけていくと、問題解決力が上がっていきます。「幹からではなく、小枝から攻める」のが上達の秘訣です。 

(p138~140)

 小さな改善は他の職場でも応用が利きやすいというメリットがあり、「横展」(トヨタ生産方式の用語で「横展開」の略)しやすいのだとか。他のラインや作業場でうまくいった対策を他の類似のラインや作業場に活かす・・・ そういう前提であれば確かに「幹より小枝から攻める」は理にかなっている! 生産現場に強いトヨタの奥深さを知った気がした。


 鳴海のピックアップ
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 その他、ポイントをピックアップしておく。

【問題解決の8ステップ】 (p64)

 1. 問題を明確にする
 2. 現状を把握する
 3. 目標を設定する
 4. 真因を考え抜く
 5. 対策計画を立てる
 6. 対策を実施する
 7. 効果を確認する
 8. 成果を定着させる

【問題を発見する7つの視点】 (p80)

 1. 悩んだり困っていること
 2. 上位方針との比較
 3. 後工程への迷惑
 4. 基準との比較
 5. 標準との比較
 6. 過去との比較
 7. 他部署との比較

【問題を絞り込む3つの視点】 (p96)

 1.重要度 「問題が影響をおよぼす範囲と大きさ」
 2.緊急度 「ただちに手を打たないと、どんな影響があるか」
 3.拡大傾向「このまま放置しておいたら、どれだけ不具合が拡大するか」

百聞は一見にしかず、百見は一考にしかず、
百考は一行にしかず、百行は一果にしかず──


つまり、最終的に成果を残さなければ意味がないということをあらわす中国のことわざですが、問題解決のステップも同じです。まずは成果を出すことを考えて、能動的に行動することが大切になります。

(p211)

* 「百見は一考にしかず」
 (いくらたくさん見るよりも、一度考えた方がよい)

* 「百考は一行にしかず」
 (どんなに考えても、まず行動を起こさなければどうしようもない)

* 「百行は一果にしかず」
 (どんなに行動しても、一つでも成果を残さなければ意味がない)

 しっかりと肝に銘じておきたい言葉である。

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 ┗ 鳴海の紹介記事は こちら


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posted by 鳴海寿俊 at 00:00| Comment(0) | 【書籍】 ビジネス書 | 更新情報をチェックする
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