2016年05月08日

『君の膵臓をたべたい』 無名新人による文芸作品を売り込んだ双葉社の取り組み

4575239054君の膵臓をたべたい
住野 よる
双葉社 2015-06-17

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 本屋大賞2016 の堂々第2位のこの作品。私はそれほど話題になる前の発売間もない頃、啓文堂書店のリコメンドに惹かれて読んだ。amazonのカスタマーレビューでは辛口のコメントも多々あるけれども、私は何度も読みたい本に初めて出会えたと思うくらい、純粋に感動し、まだ読んでいない人には自信を持ってオススメしたい気持ちだ。

 まずタイトルのインパクト。「ホラーかよ」と未読の方は思うかもしれない・・・ 私も正直そう思った。でも何気に啓文堂書店の新刊リコメンドは個人的に評価が高く、ホラー嫌いにも関わらず、怖いものみたさも半分あり、購入してみたのだった。

 タイトルにもなっている「君の膵臓をたべたい」というこのセリフ。取ってつけたタイトル名ではなく、ストーリーの中で語られている必然のメッセージに胸が痛む。

 ではこのベストセラーがどのように生み出されたのか、そのエピソードが 16/5/1付の『文化通信』 で紹介されている。「事前プロモーション事例 双葉社『君の膵臓がたべたい』」 の記事をかいつまんで紹介しよう。

 初版は3万部の同書。無名の新人にしては勇気のある攻めの部数に感じる。

 発行元の双葉社の営業部には、編集者が自由にゲラを入れられる箱があるそう。同作品はもともと、小説投稿サイト 「小説家になろう」 の投稿作品で、ランキング上位ではなかったものの、双葉社の編集者の目に留まり、同社営業部に提案されたことが世に出るきっかけだったという。それがいまや、34刷54万部のベストセラーに成長したのだから驚きである。

 双葉社の作品力を評価し、無名の新人ながらも、思いを込めて事前プロモーションを張り、本屋大賞第2位にまで導いた、先見の明とチャレンジングな姿勢に非常に好感を持っている。

 投げ込まれたゲラを年末年始に全員で読んだ営業部は、文芸の重点作品として「膵臓プロジェクト」を立ち上げ、3月に大阪と東京で10人ほどの書店人と同社営業部員、担当編集者によるプロジェクト会議を開催、タイトル、装丁、売り方などの意見を交わした。

「読者」に伝える異例の事前プロモーション

 無名の新人による文芸作品という、普通に考えれば売れるはずのない作品の刊行に向け、同社は文芸作品としては異例の規模で事前プロモーションに取り組んだ。それまでも重点作品はプロジェクトを立ち上げ、プロモーションに力を入れてきた同社だが、

「書店へのプロモーションから一歩踏み込んで、発売日までに読者にどれだけ伝えられるのかをテーマに取り組んだ」

と第二営業部・白石俊貴氏は述べる。

※ 16/5/1付の『文化通信』より

 こうした取り組みが功を奏して、「当初は5000部出せれば」と考えていた初版は異例の3万部となったという。

 私の昨今の出版社に対するイメージは

知名度の高い著者に頼み込んで二番煎じ本を書かせている

といった印象を抱いていただけに、この双葉社の取り組み事例は非常に嬉しい。知名度問わず、良い作品は世に出てしかるべきなのだから、このご時世でリスクは伴うかも知れないが、作り手である出版社にはチャレンジしていって欲しいと読者としては強く願う。

 ちなみに、著者の住野よる氏の2作目の刊行タイミングも絶妙である。

 昨年秋には書き上げられていたという2作目『また、同じ夢を見ていた』は、「作品に自信があったので、最良の刊行タイミングを考えていた」(双葉社・森田剛副部長)という同社の作戦により、本屋大賞2016での『君の膵臓をたべたい』との同時ノミネートを避けつつも、ノミネートが決まったら一緒に2作目も店頭に展開してもらうため、ノミネート発表(1月20日)の後、2月16日取次搬入で発売し、併売を狙ったという。初速としては好調のようで何だか嬉しい。

 こうした出版社の取り組み記事を見ると、1作目の完成度(住野よる氏)に対する期待度とは別に、発行元の双葉社の思い入れという観点からも、2作目を読みたくなる! 即kindle版で購入した! 折を見て2作目の紹介もしていきたい。

4575239054君の膵臓をたべたい
住野 よる
双葉社 2015-06-17

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4575239453また、同じ夢を見ていた
住野 よる
双葉社 2016-02-17

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posted by 鳴海寿俊 at 00:09| Comment(0) | 出版社・著者(作り手) | 更新情報をチェックする
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