2012年07月13日

クスリ【07】『自己否定』 自分の仕事が発生しなくなるテクニック


 クスリ【05】 『業務改善』 【任せる】以前に【仕事自体をなくす】ためのアプローチ で紹介した【ECRSの法則】には「Eliminate(なくす、やめる、捨てる、除く)」、【業務改善の8原則】にも「廃止」という観点がある。

 もちろん「仕事を○○」と考えることも有効であるが、これを拡大解釈して「仕事」に対してではなく、「自分自身」の存在価値にまで踏み込んでみたら、違ったアプローチで仕事をなくせる(減らせる)かも知れない。つまり「この仕事を止めたら何か困るか?」ではなく、もう一歩飛躍して

「私はその仕事に必要な人間だろうか?」

という発想で

「私がいなくても問題ないはずだ」

と(半ば強引に)着地させる考え方である。ではここで2つの事例を紹介しよう。

(例①)
 彼は身内に不幸があり、大切な会議の前日に、仕事を休まなければならなくなってしまいました。自分が中心になって進めてきた案件だけに、他のメンバーに任せて失敗しては今までの苦労が水の泡、彼はそう感じました。そうは言っても仕事は二の次、彼は他のメンバーに任せるしか他ありませんでした。しかし彼の心配をよそに、他のメンバーの頑張りにより、プレゼンテーションの結果は好評価で事なきを得たのです。

(例②)
 彼は会社の人事発令を受けて、急遽別の部署に異動することになりました。彼はその部署のリーダーだったため、代わりに若手の別のメンバーがその役割を担うことになりました。その部署は20代の若手メンバーで構成されており、唯一30代の彼を、皆が頼りにしていました。内心彼は、自分がいなくなって相当辛い思いをするだろうと心配をしていました。しかし想像に反して、残された若手メンバー同士で団結して、新しいリーダーを支えていったのです。すると彼が抜けた後の売上成績は、彼がいた頃よりも上回る結果となったのです。

「な~んだ・・・自分がいなくても何とかなるものだ」

こんな経験があなたにもあるだろう。 一生懸命頑張っている人ほど、

「自分がいなければこの仕事(職場)は成り立たない」

と考えがちだ。「自分がいない方が良い」となっては、自分の存在価値を否定しかねないから、容易に受け入れられないのだ。私自身も実際にそうだった(携わって苦労してきた仕事を他人に引き継いで早々簡単に処理されては悔しいと考えるのは人間の性である)。

 しかし実際は2つの例のように、自分がいなくても誰かが代役を引き受けて、どうにかなってしまうものなのだ。あるいは別の誰かが代わりを担って、(悲しいことに)自分の時よりもうまくいくことだってある。事実として言えることは・・・

自分の存在が(その職場あるいは仕事から)なくなれば
(理屈上は)自分には仕事が発生しない!


ということなのだ。

 例のような突発的なシチュエーションは、関わるメンバーの負担は確かに大きい。しかし「自分がいなくても何とかなる」という状況を逆手に取り、むしろ積極的にそう意識して、少しずつ自分の存在を薄くしていけば、自分の仕事は確実に減らせるのである。【自己否定】のテクニックとは、身内の不幸や人事異動などにより、たまたま自分がいなくなる状況とは異なり

自分の存在価値を "自ら" (心の中で)否定して
その仕事から手離れする状況を "自ら" 仕掛けて作り出す!


このような積極的な思考とアクションを指す。

 【自己否定】の実践は、自分の仕事を他のメンバーに引き継ぐことに変わりはないが、結果的には会社や組織にとっても、戦力アップにつながるのである。引き継いだメンバーにとっては、(ある意味いい迷惑かも知れないが)強制的にやらざる得ない状況となるので、仕事の習得スピードがおのずと上がる(上げざるを得ない)。

 そしてそのメンバーが引き継ぐ業務を習得することによって、複数のメンバーがその仕事に対応できるようになり、「○○さんがいないと仕事がまわらない・・・」というような " 仕事が人につく " 状況(リスク)を軽減することにつながる。分かりやすく言えば、誰でもその仕事を処理できるようになるということである。

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 また自分自身の努力次第ではあるが、引き継いだメンバーとの関係維持と新たな仕事で出会うメンバーとの関係構築により、人脈が加速度的に広がるはずだ。これは会社や組織にとっては、幅広い経験・視野を持つ人材を育成することにつながるのである。会社のためではなく自分自身のために【自己否定】を実践することが、結果的には会社を強くするのである。

 【自己否定】 のメリットを自分自身と組織(会社)という視点でまとめると次のようになる。

【自己否定】を実践することのメリット

(自分自身)
 ・ 仕事からの解放により、別の新たな仕事(好きなこと)に取り組める
 ・ 元の仕事、新しい仕事での人間関係が変化する

(組織)
 ・ 後継者の意識改革が図られ、業務の引継スピードが上がる
 ・ 業務に対応可能な人数が増え、役割が固定化するリスクが減る
 ・ 横のつながりが生まれて、社内コミュニケーションが円滑になる

 新しい仕事を覚える時に、自分のためのマニュアルを作成するという思考ではなく

【将来の引継ぎ相手】のためにマニュアルを
常にバージョンアップし続ける


という発想で仕事をしながら、ノウハウをドキュメント化しておくと、【自己否定】(引継)がスムーズに行えるだろう。引き継ぐ相手の負担も最小限に抑えることができ、抱えている仕事から、より早く解放されることになる。あなたも勇気を持って【自己否定】 を実践してみよう!

 抱えている仕事を(多少強引でも)リリースすることは、病んでしまわないための予防策でもあり、「自分がいなくても周囲が困らない」という状況は、決して悲しいことではなくむしろ誇れる状況なのだから・・・

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posted by 鳴海寿俊 at 00:00| Comment(0) | 【連載】 仕事のクスリ | 更新情報をチェックする
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