2012年05月03日

『フシギなくらい見えてくる! 本当にわかる心理学』 を読んで仕事を振り返ってみた

4534046839フシギなくらい見えてくる! 本当にわかる心理学
植木 理恵
日本実業出版社 2010-02-26

by G-Tools
2010/03/01 発行(13刷 2011/07/20)★★★★☆

 テレビでもお馴染みの著者。少々ミーハーな気持ちで手に取ったこの本。

どうせ最近チヤホヤされているから薄っぺらい内容だろう?
そんな気持ちが、まえがきと第一章を読んで吹き飛んだ!


 そもそも私は心理学の本を読み比べたことはないから詳しいことは分からない。ただ1975年生まれの心理学者にしては、真面目に新しい試みにチャレンジし、確かな思い入れを込めて書かれた本であることは間違いない。

 仕事術に心理学の要素はつきものであるから、それは後半に触れるとして、まずは彼女の熱い思いが伝わる部分をいくつか紹介したい。

「本当にわかる心理学を書いてください。(略)世間の流行やトレンドは気にしなくていいですから」

・・・ そう依頼されたとき私は嬉しかった。心理学の真骨頂を伝えられるときがやっと来たと思った。

「でしたら、みんなが大好きな心理テストも深層心理も頭から否定しますけど?」

―。戸惑う編集者の顔を覗き込みながら 私の心は浮き足立っていた。ずっと書きたかったのだ。そういう本が

(まえがき より)

 執筆のオファーが来たときの彼女の気持ちだった。あれだけ露出の多い彼女にはきっとテレビ局や出版社を満足させなければならない状況も多々あるのだろう。そして彼女はこう言い切る。

 ・ あなたの無意識には、こういう欲求が潜んでいる
 ・ この仕草をする人は、本当はこういう願望を持っている

といった話題は、若者の間でとても人気があるようだ。そういう類のバラエティ番組や雑誌、出版社からのオファーは いつでも絶えることがない。しかし、私はそういう不確かなことを 真実のように騙ることができないでいる。心理学の真の意味が誤解されていくのには、もう耐えられないのだ。

(p10)

 『ホンマでっかTV』(個人的には大好きなフジテレビ系列の番組)に出演している彼女がそんなことを考えていたとは・・・ 衝撃だった。

 昨今では(略)雑学的な面白さゆえに「心理術」のマメ知識 だけが一般書で喧伝され、心理学の真の姿が見えにくくなってしまっている感も否めない。

 本書では第2章以降、具体的な心理学の知見について述べていくが、心理学テキストとしては思い切った構成を試みている。本書の内容を頭に入れるだけですぐにでも「人に話せる」、そして「今日から使える」ような生きた知識として体得できるよう工夫を施した。

(p16)

といった具合だ。こんな彼女のルーツは、大学院の心理学科受験を決心したときにあるようだ。他大学からの受験という不利な状況で、彼女は心理学という学問自体の整理法(勉強法)を自分なりに編み出したようである。

 本書は目次を見ていただければおわかりになるように、○○心理学という、色によるくくりは一切やっていない。学派、調査対象、時代などをあえて「一緒くた」にして、シャツはシャツ、ズボンはズボン方式で、使用方法の目的が同類であるものを、各章の引き出しの中に整理してある。心理学というものの全体像を見ていただき、研究手法別に整理することで、人に話せる心理学、使える心理学としを体得して欲しいと思っている。

(p21)

 ここまで紹介すれば、彼女の思い入れを伝えるのに十分であろう。では、心理学の知識が仕事に通じるかどうかという観点で気に入ったものをいくつか紹介しよう。



◆「社会的な手抜き」という現実 (p35)
 心理学では「集団でいることは『手抜き』が起きる元凶」と考えられているらしい。これを示す実験として2つ紹介されている。

(ラタネの「拍手実験」)
「『力いっぱい拍手を!』と六人の集団に呼びかけたとき 一人のときの半分か三分の一しか力が出ない」 (p36)

(リンゲルマンの「綱引き実験」)
「二人でひきあう場合は、本人の筋力の93%の力が出るが 三人では85%、八人では49%と力が抜かれていくのだ」 (p36)

「人はただ集団になるだけで、意識せずとも『まあいいか』という 適当な判断や行動に出てしまう。このことを、心理学では 『社会的手抜き』『社会的怠惰』『フリーライダー現象』 などと呼び、さまざまな手抜き現象が報告されている」 (p36)

 これを読んだとき、ふと頭をよぎったのは、大勢の会議の場では必ず発言しない人がいるものだが、少人数の打ち合わせでは活発な議論がされるシーンである。心理学的な裏付けがちゃんとあるのだと感心である。

 私がマネージャーとしてチームを率いる際に注意していることは、アクション別に役割分担をする際、たとえ複数のメンバーが協力しあってやる場合でも、リーダーを明確にすることだ。進捗は必ずそのリーダーを通して確認することにより当事者意識を強化し、責任感を植え付けるのだ。

 まさに「社会的手抜き」の防止策である。植木氏は「希少性は最大のスパイス」とも書いている。彼女は日常生活で、自分が作ったコロッケがあまり美味しくしあがらなかった場合、お客さんが5人であってもあえて3つしか出さないのだそうだ・・・

(少ししかないものを分けながら食べてもらう方が、山盛りにして全部出すより、心理的に価値が上がり 少しは味がごまかせるはずだとか)

 行動は可愛らしいが、心理学に裏付けされた理屈に基づき行動しているとなると、なんともイヤラシイ(笑)



◆「ハロー効果」と「ゲイン効果」「ロス効果」 (p40)
 心理学では、「印象形成の際に起きてしまう偏見や勘違いのこと」を「ハロー効果」と呼び、ハロー効果による最初の期待が大き過ぎ、「ハロー効果の有効期限」が過ぎると、必要以上に幻滅されてしまうことを「ロス効果」と呼ぶ。逆に最初の評価が低く、ある時に評価が急上昇する場合、これを「ゲイン効果」と呼ぶ。単語の知名度は別として、よく言われている内容である。

 私がよく部下に対して言うのは、「見た目は大事」ということである。例えば会議の資料であっても、誤字や脱字のチェックはもちろんのこと、内容を簡潔にまとめて、相手の立場にたって分かりやすい体裁に整えるべきである。装飾をつけてプレゼン資料に仕上げろ、と言っているわけではない。

 せっかく良い内容であっても、誤字があっては「ちゃんと確認したのかな?」「この仕事にあまり時間かけてないのかな?」と思われても仕方がない。場合によっては仕事の本質的な内容の議論以前に "間違い探し大会" の様相を呈してしまうことだってあるのだから・・・(失敗談)

 まさにこれが「ロス効果」か(笑)

 内容はそれなりでも、必要以上に幻滅されてしまう・・・ 逆に体裁がそれなりならば「中身もきっとしっかり詰められているだろう」「彼が手がけている仕事なら大丈夫だろう」と信頼度が増すのである。これは「ハロー効果」であろう。ハロー効果には有効期限があるようだが、仕事においては毎回しっかりとした準備をして臨めば期限切れはないだろう。

 逆にある時評価が急上昇するという「ゲイン効果」は仕事においてはないように思う。日々コツコツと実績を積み上げることが大切なのは言うまでもない。



◆「ピグマリオン効果」
「相手を心から信じて期待すると、相手が願い通りになってくれるような働きかけを、『期待した側』が積極的にとるようになる。以心伝心ではない。『期待した側』の実質的なグッドアクションに起因しているのだ。この『信じればかなう』という現象に、ローゼンダールは『ピグマリオン効果』と名付けた」  (p54)

 心理学の実験では、担任の教師が2グループに分けた生徒たちに対して片方は期待を込めて教え、もう片方は特に期待をせずに教えるという実験を通して、学力に差が出た事例を紹介している。仕事の世界でも、部下に同じ教える場合、期待を込めて指導した方が覚えが早いことは容易に想像できる。ちゃんと心理学的な裏付けがあるのだ。



◆「ブロークン・ウィンドウズ現象」
「『窓の割られた車』を街に一台放置しておくと、その近隣では 急激に他の凶悪犯罪も増えるという。この悪の連鎖現象を アメリカのケリング博士は『ブロークン・ウィンドウズ (割れ窓)現象』と呼んでいる」 (p60)

 原因は割れ窓そのものというよりは、そういった状況が「放置」されていることへの不安であり、弱くとも長く続くストレスが人々を狂気に駆り立てるのだと言う。また他人の行動を反射的に真似る「モデリング」という言葉も心理学にはあり、低下したモラルが住民によってモデリングされたという見方もある。

 確かに私たちの日常でも、駅や公園の自販機の脇にあるゴミ箱にはあふれんばかりに缶やペットボトルが置かれている(紙ゴミなども散乱している)光景はよく目にするし、電車の携帯電話禁止のシルバーシート、飲食禁止の場所であってもルールが守られていないことは間違いない。

 逆にディズニーランドのように、あれだけ広大な敷地であるのに、路上にはゴミひとつ落ちておらず、ゴミをポイ捨てすることに対する心理的な抵抗感を抱かせている場所は少なからず存在する。

 仕事(会社)においても、業務品質の低く、みんながミスばかりしている職場では、当然お客様からのクレームに対する意識も弱く、誠意を持った対応を取れないだろうしひとりだけ異なる行動を取ることも実際困難である。

 「ブロークン・ウィンドウズ現象」撲滅に取り組んだニューヨークは実際に犯罪が減ったようだし、職場環境が仕事のクオリティや信頼性に影響を及ぼすのは間違いない。昨今、仕事に関連した "おそうじ本" が目立つようになったが仕事とそうじはやはり通ずるところがあるのだ。



◆「好意の返報性」
「人は自分の気持ちを他人にわかってもらえると、お返しに相手のこともきちんと知りたくなる習性がある。そして相手の悲しみや苦しみも、一緒に背負いたくなる習性がある。(略)だから、普段から世話好きな人は、いざというときに 他人から助けてもらえる確率が高いだろう」 (p66)

 やはり、仕事においても相手を喜ばせるやり方(例えば期限より早めに対応してあげるとか)は結果的に自分のためになるのだろう。「情けは人の為ならず」も心理学的には「好意の返報性」で説明できるのだとか。



◆「アメとムチの法則」
「行動を思い通りにコントロールしたいとき、相手が望ましいことをしたらアメ(報酬)を与え、望ましくないことをしたら ムチ(罰)を与える。これが行動心理学の基本である」 (p74)

 ネズミの実験は有名であるが、迷路を正しくクリアするために間違えた時に電気ショックを強めると、完璧に学習すると思いきや、逆効果らしい。むしろ、ムチ(電気ショック)に怯えてしまい、動かなくなってしまうらしい。

「ムチを恐れてトライすること自体を断念し、リスクを おかしてまでアメを取りに行こうとする意欲など、すっかり 吹き飛んでしまうのだ。(略)人間も同じで、相手の意欲をコントロールしようとするとき、ムチは意外に役に立たない。叱られるのが嫌でフリーズしてしまい、先のネズミと同じように試行錯誤そのものが億劫になってしまうからだ」 (p75)

 著者は人間の場合、「ムチ」ではなく「ネグレスト(無視)」がお互い疲れにくく、合理的とした上で「アメとムシ」と書く。(ウマイ!)相手が望ましいことをしたら褒めちぎり、嫌なことをされたら、叱責するのではなく単に無視すると良いとか(笑)

 仕事においても、失敗のたびに叱られてはチャレンジすること自体止めてしまう・・・ 自分の胸に手を当てて部下に対してそのような事をしていないか考えみたい。更に上手にマインド・コントロールするには、頑張ったら毎回アメを与えるのではなく、例えば5回に1回は必ずしもアメが貰えないという状況を作るのだそうだ。

 うまくいったら必ずアメを与える方法を「連続強化」と言い、意図的にあえて与えない場合を設けるやり方を「間欠強化」というらしい。

「相手をコントロールするには、基本的には『連続強化』が有効 である。頑張れば報われる『随伴性の認知』は、人間同士の信頼関係になくてはならないものだろう。しかし厄介なことにそれだけでは、クッキーがもらえて「当たり前」という心理にもなってくる。連続強化だけでは、飽きてくるのだ。

 相手を飽きさせず、長期にわたって操ることに長けている人は、二種の強化法の『組み合わせ』を行っている。最初の頃は、連続強化によって信頼関係を強固なものとするのだが、それが完成したら今度は間欠強化に切り替え、相手に意外性を与えるのだ」 (p78)

 お~ コワい!

 心理学とは奥が深く、大いに仕事に役立つ学問である。この本をこうして読み返したのは2回目であるが、いざひとつひとつを仕事に照らし合わせてみると、とても時間がかかる(汗)

今回はこの辺にして、また折りを見て紹介していこうと思う。

4534046839フシギなくらい見えてくる! 本当にわかる心理学
植木 理恵
日本実業出版社 2010-02-26

by G-Tools

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posted by 鳴海寿俊 at 00:00| Comment(0) | 【書籍】 ビジネス書 | 更新情報をチェックする
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