2012年06月23日

クスリ【12】『美しい体裁』 相手の信頼を勝ち取り細かいチェックを受けずに済むコツ

 【ブロークン・ウィンドウズ現象】 という言葉をご存じだろうか。『フシギなくらい見えてくる! 本当にわかる心理学』(植木理恵 著/日本実業出版社)によるとこうだ。

「『窓の割られた車』を街に一台放置しておくと、その近隣では 急激に他の凶悪犯罪も増えるという。この悪の連鎖現象を アメリカのケリング博士は『ブロークン・ウィンドウズ(割れ窓)現象』と呼んでいる」 (p60)

フシギなくらい見えてくる! 本当にわかる心理学フシギなくらい見えてくる! 本当にわかる心理学
植木 理恵

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※鳴海の紹介記事は こちら 

 私は日本のある光景を思い出す。

 駅や公園などの自販機の脇にあるゴミ箱。その上に入りきらないとばかりに、空き缶やペットボトルが並べられている・・・ 空き缶やペットボトル専用のはずなのに、紙屑やら空瓶やら、あらゆる種類のゴミが散乱している光景。誰かが始めるとマナー違反に対する抵抗感が薄れてしまうのだろう。

「他の人もやっているから」
「この場所は(その行為が)許される場所だから」


という心理が働くのか、悪い状態が定着してしまうようだ。禁煙スペースや携帯電話の使用禁止スペース、飲食禁止スペース、なども同様であろうか。

 一方で、ディズニーランドを思い浮かべてみる。

 あれだけ広大な敷地であるにも関わらず、路上にはゴミひとつ落ちていない。お客様に対してゴミをポイ捨てすることに対する抵抗感をうまく植え付けているようだ。常に清掃スタッフが歩き回り、清掃をしているので、よほどの神経の持ち主でない限り、ゴミをポイ捨てしようという意識は生まれないだろう。

つまり良い状態を一時的ではなく
継続して維持する努力がなされているのである


 私は、この事は仕事(会社)においても通ずるところがあるのではないかと考えている。

 業務品質が低く、皆がミスばかりしている職場では、当然お客様からのクレームに対する意識も低く、誠意のある対応もできないであろう。

 更にこれを個人の仕事に当てはめてみるとどうなるか?

 いい加減な仕事ばかりしていたら、仕事の内容は問われず当の本人が携わった仕事・・・ というだけで負のレッテルが貼られてしまいかねない。



◆仕事のクオリティを指摘されにくい心理的効果

 ディズニーランドの例を仕事に置き換えてみよう。

 例えば、打合せ資料の作成という仕事だ。どんな資料であろうと、誤字・脱字をなくしておくことはごく当たり前のことだが、図解したり、改行やスペースの取り方に気遣ったりすることは、見る側にとって見やすくなるというメリットの他に、もう1つ大切なメリットがある。

 【注】 無駄に装飾をするという意味ではない!

 それは見やすい資料を準備することにより、次のような印象を持たせることが可能になることだ。

「この仕事に時間をかけたんだろうな・・・・」
(だから大丈夫だよな、きっと)


 このように、資料の体裁(クオリティ)は、その仕事に対して時間をかけたことを示唆する効果があるのだ。結果的に問われるのは、中身であることは間違いないが、矛盾のある表現があったり、誤字・脱字があったりすると、中身の議論の土俵に乗らず

「再提示してよ」

とも言われかねない。私の経験では、貴重な打合せ時間が「間違い探し大会」の様相を呈したこともあった(何とも辛い経験であった)。見る側からすると

「誰のチェックも受けずに発表しているのか?」

と不安な気持ちになり、仕事の進め方に対するセンスを疑われるかも知れない。ドキュメントは、デザインに凝る必要はないが(企画書や提案書は別として)、見た目や読みやすさにおける最低限のクオリティは必要である。

見た目をチェックすることが重要なのではなく
どの程度その仕事に対して時間をかけたのか
意欲があるのかという判断材料となる


のである。たたき台という位置づけで、これから方向性を決めていこう・・・ というような打合せの場合には、逆に資料作成に時間をかけること自体がナンセンスな場合もあるので、注意が必要である。



◆自分自身の信頼性を高めるコツ

 資料作成について書いてきたが、もう一歩広げて考えると「自分自身」が日々、上司や部下、あるいは仕事で関係するメンバーからチェックを受けていると言うこともできる。「打合せ資料のクオリティ」は "資料" の範囲にとどまらない。

資料クオリティ【高い】 → 「信頼できる人」
資料クオリティ【低い】 → 「よくチョンボをしている人」

 こんな判断も無意識のうちにされるかも知れない(イソップ物語でいつも嘘をついていた少年が、本当にオオカミが現れた時、村の住人に信じてもらえなかったように)。あるシチュエーションにおいて、同じ「大丈夫です」という返答をした場合でも、次のような違いが出てくる。

【高い】クオリティの仕事をしている人の「大丈夫です」
 「○○さんが言うのなら大丈夫だろう」

【低い】クオリティの仕事をしている人の「大丈夫です」
 「何を根拠に大丈夫って言っているんだ」
 「前回大丈夫って言って失敗した」
 「今回は本当に大丈夫なのか?」

という反応となる。日々手抜きをしていると、たとえその時のクオリティが高かったとしても、冷たい反応が返ってくるわけだ。あの件はどうなんだ、この件はどうなんだとか、前述の「間違い探し大会」ではないが、事細かなチェックを必要以上に常に受けたり、芋づる式に説教を受けたりするかも知れないから、手間がかかる。

一旦、【負】のレッテルを貼られてしまうと本当に大変だ。
「○○さんは細かいチェックをしてあげないと危ない人」


というイメージが周囲のメンバーにも蔓延して、自分の信頼が急落する。しかし、日々の積み重ねが実って信頼を勝ち取ってくると、次のような変化が起こる。

【細かなチェックを受けずに相手にOKしてもらえる】
【打合せや会議の場で意見が通りやすくなる】
【資料なしでも口頭説明で確認が行える】


など。相手は誤字・脱字の確認は不要との判断から、大まかな確認のみで 自分に任せてくれるようになるだろう。そして、内容については事前にしっかり検討がなされていると思われるので、考え方を口頭で伝えるだけで済むようになるかも知れない。打合せや会議の場でも、こんな感じになる。

「彼に任せておけば大丈夫だろう」

という雰囲気だ。これは結果的に、仕事が楽にスムーズに運べるようになることを意味する。これを突き詰めて

「彼にチェックを入れること自体が失礼かも」

と周囲に思わせることができれば究極だ! ディズニーランドのきれいな空間を維持することにより、お客様にゴミのポイ捨てをしにくくさせる心理的効果・・・ つまりクオリティの高い仕事をし続ければ、周囲のメンバーに「彼に任せておけば大丈夫」と感じさせることができるのだ。

 これを応用すれば、常にスムーズに仕事を進めることができるようになる。一朝一夕では確立できないので、コツコツと続けることが大切だ。

【美しい体裁】 は資料作成だけの
「体裁」ではない!


仕事に対するスタンスも含めて、あなたの「体裁」全てについて、美しくあるべきである。「体裁を取り繕う」だけでは、仕事はいっこうにラクにならないし、信頼も勝ち得ないのである。



◆トラップ(罠)を仕掛けよう

 それなりに経験を積んでいる人ほど、相手の素晴らしい出来をストレートに認めたくないという心理が働く場合がある。「自分も役に立ちたい」という前向きな人もいれば、「たまには重箱の隅を突ついてみよう」という嫌がらせの気持ちを持った人もいる。

そんな彼らの気持ちを満たしてあげるにはどうしたらいいか?

「彼に任せておけば大丈夫」と思われるくらいに、日々の仕事のクオリティを高めることは重要なことではあるが、完璧を狙うと相手によってはうまくいかない場合がある。そこで

あえて相手に対して「つけいる隙」を与えるのだ!

 もしその隙に相手が喰らいついてきたらシメシメと思って欲しい。

 「自分も役に立ちたい」 という前向きな相手に対しては、「確かにそうですね、ありがとうございます!」と感謝の気持ちさえ述べれば、相手の自尊心をくすぐり、今後味方になってくれるかも知れない。

 逆に、重箱の隅を突いてくる相手に対しては「時間の都合上触れなかったのですがこんな感じで考えております」とバシッと説明できる

「裏準備」をしておくことが重要だ


 説明されていない部分についても、しっかり熟慮されているという印象を与えることができ、相手は引き下がるかも知れない。つまり、相手を仕留めるための「トラップ(罠)」を仕掛けて前向きな相手は味方につけ、後ろ向きな相手にはトドメを刺すのだ。

 仕事で関わるメンバーの全員が、完璧な仕事をした結果を素直に評価してくれるというわけではない。仕事の場面においては、感情が少なからず介在するので、是非 「トラップ(罠)」を仕掛けて、自分の想定した結果を引き寄せて欲しい。

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posted by 鳴海寿俊 at 00:00| Comment(0) | 【連載】 仕事のクスリ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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