2016年06月20日

医書.jp 「デジタルと紙のハイブリッド販売を書店を窓口に出版社として実現する仕組み」

 医書.jp が先週6月6日に電子書籍の配信サービスを開始した。概要について、以下『文化通信』(2016/6/13号)の説明文を引用したい。

 出版社が共同で会社を作り、既存の書店を全面的に巻き込んだ電子書籍のプラットフォームを運営するという、これまで例のない試みが医学書の世界で始まった。医学書出版5社が発起人となって始めた電子書籍配信プラットフォーム「医書.jp」は、リアル書店との緻密な連携が特徴。また、電子書籍と雑誌を包含する総合プラットフォームであり、個人向けと病院や大学など施設向けサービスをシームレスに利用できる環境構築を目指すなど、現場での使われ方に即した様々な構想が散りばめられている。

『文化通信』(2016/6/13号)

 以前より、ドイツの「tolinoアライアンス」(鳴海の関連記事は こちら )のような取り組みには注目していた。日本での取り組みと言えば、2013年に文教堂書店が始めた「空飛ぶ本棚」(プレスリリースは こちら )や翌年2014年にTSUTAYAと「BookLive!」との提携(プレスリリースは こちら )が記憶に新しい。しかし、いずれも紙の本を買えば、電子版が読めるという、電子版はあくまでもサブ的な位置づけに感じられた。

 しかし、tolino は明らかに違う。参加書店の店頭で電子書籍端末を販売し、端末を購入したユーザーが電子書籍を購入すれば、販売マージンが端末を販売した書店に入る仕組みだ。紙の本を購入しなければ電子版が手に入らない、という日本の仕組みと違って、tolino に参加している書店はお客様の要望に応じて、電子版をオススメすることも可能であろう。これこそ、本来の小売業の姿だ。

 電子版の本を読みたいという読者に対して、紙の本しか提供できないのは書店の努力不足、いや書店員のエゴだ! これだけデジタル化が進み、スマホやタブレットが生活に入り込んでいる以上、その画面で読書することも認めるべきだ!

 正直言って、amazon書店が日本上陸するのを待ち望んでいる自分がいる。何となく立ち寄ったり、本との出会いを提供してくれる書店はこれからも残って欲しいが、買うと決めた本によっては電子版をその場(リアル書店)で購入できるサービスは、私にとっては非常に有り難い。豊富なamazonのリコメンド情報が書店で得られるのも有り難い・・・ こだわりの書店員のコメントPOPなんかより、よっぽど客観的な本紹介ではないか。

 さて、医書.jp に話を戻そう。医書.jp の利用にあたっては、必ず登録時に取引先書店を決めるようになっており、電子書籍の新刊情報などはその書店経由で提供されるのだという。利用者は、医書.jp での直接購入もできるが、従来の書店決済(請求書払い)も選択でき、病院などの施設の公費で紙の書籍を購入するような感覚で、電子書籍の購入することを可能にしている。いずれの場合も、書店に一定のマージンが支払われる仕組みが構築されているというから驚きである。掲載記事の表現を引用すれば、これはまさに

「デジタルと紙のハイブリッド販売を書店を窓口に出版社として実現する仕組み」

というわけである。しかしこのサービスの実現には長い道のりがあった。

 このように 医書.jp が病院や大学などとの施設向け配信へ簡単にできる参入できる背景には、医学書業界が書籍の「著作権譲渡契約」を進めてきたこともある。医学雑誌ではそれまでも一般的だったが、デジタル化を前提に10年ほど前から書籍についても著作権譲渡契約をへの移行を進めてきた。大手医書出版社の新刊は、ほぼ著作権譲渡契約になっているという。業界挙げての契約の努力もプラットフォームの運用に貢献している。

『文化通信』(2016/6/13号)

 医書.jp のサービス発表の プレスリリース には、「医学・医療に携わるすべての専門職に電子コンテンツを迅速に届け、日本の医学・医療の進歩に貢献することを使命としています」とある。まさにこの使命感、本気度が他のジャンルの本(出版社)とは別格なのかも知れない。

リアル書店にとっては電子と紙のシームレスな営業体制を
構築でき、出版社にとっては紙書籍の販売で築かれた
書店外商の力を電子にも利用できる 医書.jp

 このように『文化通信』が述べる通り、デジタル時代の書店との共存モデルの1つになり得るかも知れない・・・ 私はこの取り組みに強く期待している。そしてこの刺激を受けて、紙の本にこだわらない、新しいビジネスモデルを生み出す改革者の出現を期待したい。

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タグ:医書.jp
posted by 鳴海寿俊 at 00:41| Comment(0) | ネット・電子書籍 | 更新情報をチェックする
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