2014年05月06日

【ビジネス書】を<読む>価値、そして最初に読むべきジャンルとは?

 書店に行けば平積みに溢れている【ビジネス書】。読むべきものがどれだけあるのかも分からないが、私なりに【ビジネス書】を読む価値について論じてみたい。

 ちなみに、1年間に発行される新刊書籍の発行タイトル数は、8万冊と言われている。そのうち、ビジネス書は5000冊だそうである( 『土井英司の「超」ビジネス書講義』土井英司 著/ディスカヴァー・トゥエンティワン より)。気になるのは【ビジネス書】の定義。人によっては実務的な本をイメージするだろうし、自己啓発本や最近売れている『まんがでわかる○○』のような本も含めて考えている人もいるだろう。上級者ともなれば、「歴史小説は立派なビジネス書だ」と言うかもしれない。

 ここでは、細かい定義づけについては触れずに、いわゆる一般的な ビジネス書ランキング に登場する広義の【ビジネス書】を対象に書いてみようと思う。


 最初に読み込んで欲しい【ビジネス書】のジャンルとは?
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 私が考える【ビジネス書】を読む価値は <問題解決> にあると考えている。もう少しライトな表現で言えば " お悩み解決 " だ。足りない知識を補うために実務書を読むことも、人生に悩んでいる時に自己啓発本を読むことも、言ってみれば <問題解決>。知識不足や迷いと言った " 悩み " の解決につながる。

 では、【ビジネス書】を読めば必ず <問題解決> できるのか?

 それはもちろん " No " である。読んだだけでは " 実践 " が伴っていないので問題は解決しない。では本に書いてある通り " 実践 " すれば、問題が解決するかというと、必ずしもそうではない。齋藤嘉則氏は著書でこのように述べている。

「重要なのは、『問題』と思っていることが本当に『問題』なのか、あるいは、今後取り組むべき問題・課題の設定をどうすればいいのか、ということだ。そのためにはまず、『問題』とは何か、的確に問題を発見するにはどうすればよいのか、そこから考えていかねばならない」

※『問題発見プロフェッショナル』(齋藤嘉則 著/ダイヤモンド社)p5より
  ┗ 鳴海の紹介記事は こちら

 つまり、適切に " 問題 " を見極めていなければ、良い【ビジネス書】を数多く読んだとしても、決して解決には至らないのである。ちなみに、一般的な <問題解決> の手順は次のようなものである。

 0.『現状』を把握する
 1.『あるべき姿』を思い描く
 2.『現状』と『あるべき姿』とのギャップ=『問題』を確認する
 3.『現状』と『あるべき姿』にするためになすべきこと=『課題』を確認する
 4.『解決策』を出して評価・選定する
 5.『実行』する
(プロジェクトとして『実行』する)

 『プロの課題設定力』(清水久三子 著/東洋経済新報社)に興味深い事例が紹介されている。

* 注意: 簡略化してご紹介する都合上、若干アレンジを加えさせていただいた。

『現状』
 ・営業部の受注が落ちている
 ・部員はバタバタと忙しそうにしており部員の士気が下がっている
 ・部員は営業日報を書くことを負担に思っている(毎日30分かかっている)

(Aさんのアプローチ)
 『あるべき姿』・・・ 日報が15分で書けるようになる
 『問題』   ・・・ 日報を書くのに時間がかかっている
 『課題』   ・・・ 日報を書く時間を短縮すること
 『解決策』  ・・・ 日報を書く時間を測定して短時間で書く訓練をする

(Bさんのアプローチ)
 『あるべき姿』・・・ 日報を書くことに負担がかからない
 『問題』   ・・・ 日報を書くことに時間・手間がかかっている
 『課題』   ・・・ 日報を書く運用を合理化すること
 『解決策』  ・・・ 日報をweb上で入力できるシステムを導入する

(Cさんのアプローチ)
 『あるべき姿』・・・ 営業活動が効果的に行われて成績が回復している
 『問題』   ・・・ 日報が効果的に活用されていない
 『課題』   ・・・ 部員の士気を向上すること
 『解決策』  ・・・ 部員が書いた日報に上長が適切なフィードバックを行う

※『プロの課題設定力』(清水久三子 著/東洋経済新報社)p18〜27
 「課題設定・問題解決・目標達成の位置関係を把握するストーリー」を参考とした。
 ┗ 鳴海の紹介記事は こちら

 まるで笑い話のようだが、『現状』の把握までは同じなのに、『解決策』がまるで違ってしまっている。本来は営業部の成績を回復するために、日報を有効に活用しなければならないはずなのに、日報を " 早く " 書くことに重点が置かれた『解決策』が出てきてしまったりする。このようなミスは、私たちも気づかぬうちにやってしまったりするから注意が必要だ。常に認識しておかなければならないことは・・・

●『現状』を正しく認識しないと『あるべき姿』を的確に描けない!
  → 的確な『問題』発見につながらない

●『問題』の本質を理解した上で『課題』設定を行わないと
 根本の『問題解決』につながらない!


ということである。

 話を戻そう。つまり【ビジネス書】を読んで " 実践 " すれば、問題が解決するかというとそうではない。何が『問題』なのか( " 悩み " の本質は何か)を的確に把握した上で、読むべき【ビジネス書】(のテーマやジャンル)を選ばないと、根本解決には至らないのである。

 そして、結論として私が言いたいことは

最初に読むべき【ビジネス書】は、どんな悩みを抱えていようと <問題解決>本である!

ということだ。

kaiketsu01.jpg

 <問題解決> は「問題発見」→「課題設定」→「問題解決」というフェーズに分けられ、各々のフェーズに重点を置いたさまざま【ビジネス書】が出ている。実行段階においては「プロジェクト」として実行することも多く、「プロジェクトマネジメント」本では必ずと言っていいほど <問題解決> の手法について触れられている。




 【ビジネス書】をたくさん読んで欲しい理由とは?
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 <問題解決> の流れについては前述の通りであるが、的確に「問題発見」→「課題設定」が行われたとして、そうそう簡単にポンポンと『解決策』のアイデアが出てくるはずはない。そこで重要となってくるのが <思考法> だ。「○○思考」と名の付く【ビジネス書】は数多く目にするが、次の2種類をマスターしておけば良いと思う。

●ロジカルシンキング(論理的思考)
問題の原因を正しく捉えることで、解決策を合理的に導き出し、改善や効率性を追求するための思考法(例: MECE、フレームワーク、イシューツリー、ピラミッドストラクチャー等)

●ラテラルシンキング(水平思考)
成熟・飽和した市場環境や手詰まり感のある職場環境において、革新的な発想を生み出すための思考法(例: ブレーンストーミング、オズボーンのチェックリスト、シックスハット等)

 「ロジカルシンキング」については説明するまでもないだろう。一方、「ラテラルシンキング」の方は馴染みのない方もいるかも知れない。下記の例題にあなたならどう答えるだろう。

(例題)
 ある寒い雨の夜、あなたはスポーツカーを運転していた。バス停を通過したとき、3人の姿を見た。1人は20年ぶりに見る学生時代の親友。1人はあなたの理想の異性。そしてもう1人は重病の老婦人。しかし、車にはあと1人分の座席しかない。あなたも含め、すべての人が満足する方法は?
(* 『イノベーション・シンキング』ポール・スローン 著/ディスカヴァー・トゥエンティワン/p23より)

 自分が運転するという " 前提 " に捉われたままだと、決してブレークスルーできない。模範解答は 「旧友に車の鍵を預け、老婦人を病院に運んでもらうよう依頼する。それをバス停で待ちながら、理想の異性と過ごす」 だ。

 いかがだろう。<問題解決> には、このように " 前提 " を取り払うブレークスルーの思考も必要なのだ。他にも「クリティカルシンキング」という思考法もある。これは「批判的思考」と訳されることもあるが、簡単に言えば「本当にそうか?」と問いかける思考法 である。

 ただ私は " 前提 " を取り払うという意味では「ラテラルシンキング」に包含されている、と考えているのであえて詳しく説明しない。ロジカルに発想するか、枠や前提を飛び越えて発想するか・・・ この2種類だけ頭に入れておけば十分だ(それでも興味がある方はこちらを参照)。

 いざ学ぶとして、<問題解決> 本を読んで、次に <思考法> 本を読んで・・・ という手順を踏まなければならないとなると、とても大変だ。しかし私が考えるには、<問題解決> 本だけで十分である。なぜなら最近出ている<問題解決> 本は、「ラテラルシンキング」の内容が踏まえられているからだ。それよりも重要なことは、アイデアを生み出すための情報を数多く仕入れることだ。そのためには数多くの【ビジネス書】を読むことが欠かせない。

 参考までに、アイデア生成の原理についても触れておきたい。図解は『アイデアのつくり方』(ジェームス・W・ヤング 著/阪急コミュニケーションズ)『発想フレームワーク55』(永田豊志 著/ソフトバンククリエイティブ)を参考にした。

idea_01.jpg

 ヤング氏は『アイデアのつくり方』でこう述べている。

●アイデア作成の基礎となる一般的原理

「アイデアとは “既存” の要素の “新しい” 組み合わせ以外の何ものでもない」
「既存の要素を新しい一つの組み合わせに導く才能は、事物の関連性をみつけ出す才能に依存するところが大きい」

 一番重要なのは、第1段階だとも述べられている。アイデアを生むための " 資料 " のうち、「一般資料」の方は、テレビを見たり、新聞や雑誌を読んだり、web上で目にしたりと、普通に生活していれば自然と仕入れられる情報である。一方、「特殊資料」の方は自ら能動的に取りに行かないと、情報量は限られてくる。

【ビジネス書】は " 解決策 " のアイデアを生み出すための「特殊資料」!

だから、【ビジネス書】を多く読めば読むほど、「既存の要素」(言ってみれば情報の引き出しのようなもの)が増えて、「新しい組み合わせ」(=アイデア)を思い浮かびやすくなるのだ! これこそが【ビジネス書】をたくさん読むことの価値に他ならない。


→→  後編 につづく




◆鳴海のオススメ本

4484032058考具 ―考えるための道具、持っていますか?
加藤 昌治
CCCメディアハウス 2003-04-04

by G-Tools
┗ 鳴海の関連記事は こちら

(鳴海コメント)
 言わずと知れた名著。2003年発行だが、いまだ色あせない。書店の企画系の棚にいけば、定番としてたいてい置いてある。著者はなんと博報堂に在籍中(発行当時)で、現役のクリエイティブの実務担当者の立場で書かれており、非常に親近感を持つ。プロ向けというよりは、これからクリエイティブな仕事に携わる人向けの入門書といった感じなので、職種問わず(文字通り)「考える道具」を学べるタイトルである。



4492556524プロの課題設定力
清水 久三子
東洋経済新報社 2009-07-30

by G-Tools
┗ 鳴海の紹介記事は こちら

(鳴海コメント)
 ケーススタディが少なく、若干散漫な感じもするが、ロジカルシンキングとラテラルシンキングが、バランスよく網羅されており初級者向けに優しい印象。分かりやすい文体で非常に読みやすく、入門書としてオススメである。





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posted by 鳴海寿俊 at 00:00| Comment(0) | 【連載】 ビジネス書との接し方 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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