2017年03月26日

電子が紙の本の販売を促進!果たして出版市場再生の打開策とは?(1)

 2016年の紙の出版市場は、雑誌が書籍を下回り、業界内外で大きな話題になったという。下記は『新文化』(2017/2/2)に掲載された、2015・16年の出版物販売金額の発表データ(出版科学研究所調べ)である。

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 2016年の紙は前年比96.6%で12年連続のマイナスとのことだが、電子を加えた出版物全体では99.4%とほぼ前年並みだ。楽観視できる数字ではないが、ここ最近は電子の本に対してポジティブに捉えらることが増えてきているように思う。

 コミックでは、出版各社ほぼ全店の新刊を電子化しているという。(中略)マンガアプリの広がりによりスマートフォンで電子コミックを読むことが当たり前となり、さらにはそれが紙版の販売を促進する役割をも担い始めている。

(出典) 『新文化』(2017/2/2)

 また『新文化』(17/2/16)には、『火花』で電子書籍事業が好調の文藝春秋・電子書籍編集部/吉永龍太部長のコメントが次のように紹介されている。

 10年前の07年と比べて自社の電子書籍売上げは68倍まで伸長。対外的な要因としてはキンドルストア、楽天コボなどの電子書店がオープンし環境が整ったこと、社内的には村上春樹、池井戸潤、司馬遼太郎といったベストセラー作家の発電子化、「週刊文春」、「Sports Graphic Number」といった看板雑誌の電子化、また電子書籍オリジナル作品も積極的に作っていることを挙げた。(中略)

「1つのものを(別チャネルで)どんどん売っていくこと」が紙との相乗効果を生んでいる という。 「紙のしがらみを電子に持ち込まないことが正しい」 と述べた。

 一方で 「電子書籍を始めると紙版の売上げが落ちるのでは」 という出版社の懸念も聞くという。だが、司馬作品の電子化後も紙版は毎年重版し売上げは変わらない事例をあげ 「紙は紙、電子は電子という流れはできているのではないか」 と読者が形態を選んで本を読んでいることを推量した。

(出典) 『新文化』(17/2/16)

 しかしこのまま、電子が紙の本の販売を促進し続けて、紙+電子の出版物市場は維持できるのだろうか? 電子の書籍に限定して、推論してみたい。

 以下のグラフは、 インプレス総合研究所 『電子書籍ビジネス調査報告書2016』  が発表した、電子書籍・電子雑誌の市場規模予測のグラフである。濃いブルーが書籍を示し、なんと2020年には3,000億円になると予測されている。

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(出典) インプレス総合研究所 『電子書籍ビジネス調査報告書2016』

 冒頭の出版科学研究所調べによれば、2016年の書籍の販売金額は、紙・書籍(7,370億円)に、電子コミック(1,460億円)と電子書籍(258億円)を加算すると9,088億円である。別統計の数値を参照することは荒っぽいものの、仮に2020年まで紙+電子の書籍市場が約9,000億円のまま維持できたとすれば、9,000億円から3,000億円を差し引く・・・ すると

2020年は
紙の書籍が約6,000億円に!?
書籍の3冊のうちの1冊が電子


という状況になるとも推測できる。ただ私はこの数字は楽観的過ぎると思うのである。理由は2つある。

 1つ目は、現時点において電子書籍と呼ばれる本のうちの約8割がコミックが占めていること(電子書籍1,584億円のうち、コミックが1,277億円)。

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(出典) インプレス総合研究所 『電子書籍ビジネス調査報告書2016』

 そして2つ目は、電子書籍を読む際に利用されている端末の多くが読書専用の端末でないことである。以下のグラフは最もよく利用している端末の比率を示したグラフ( 「2016年電子書籍に関する利用実態調査」MMD研究所調べ )であるが、一番多いスマートフォン(33.7%)に続くのは、タブレット(29.6%)であり、読書専用の電子書籍リーダーはなんとわずか9.3%である。

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(出典) 「2016年電子書籍に関する利用実態調査」MMD研究所調べ 

 巷でも言われていることだが、紙+電子の出版市場が停滞しているのは、読書自体の時間が減っているからであり、読書以外にも使えるスマートフォンやタブレットの使用時間が減らない限り、(たとえ紙に電子を足しても)今の出版市場の規模の維持は難しいと思う。

では、出版市場再生の打開策は?

→→ (2)につづく 



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ラベル:出版市場
posted by 鳴海寿俊 at 10:29| Comment(0) | ネット・電子書籍 | 更新情報をチェックする
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