2014年08月20日

【ビジネス書】 は買う価値があるのか? また図書館の利用価値は?

【連載コラム】 ビジネス書に対する接し方が変わってしまった! (その5)
 ⇒⇒ (その1)から読みたい方は こちら 

 4回に渡って書いてきた連載コラムの最終回。湧いてきた疑問のうち 「そもそもビジネス書を買う価値があるのか?」 については、「どうしたら買う価値のあるビジネス書を生み出せるのか?」 という前向きな観点にすり替え(汗)、

「買ってもらえる本」 を目指すだけでは足りない!
もはや本である必要のない 「情報」 をどう売るか!

これを真剣に考えることが大事、ともっともらしい方向にねじ曲げた(汗汗)。結局、まだ質問に答えていない・・・ やっぱり、明言するには抵抗があるのだ。でもここで言い切ることにした。

(疑問3)
 そもそもビジネス書を買う価値があるのか?


(鳴海のこたえ)
多読家ほどビジネス書はまず借りて、価値を見極めてから買うべき

 これが現時点の私の結論であり、スタイルだ。(その3) で、ビジネス書を買うことによって 【3重のコスト】 が発生していると書いた。

読者が支払う 【3重のコスト】
 1.購入するための 【お金】
 2.整理するための 【時間】
 3.処分することに対する心理的な 【痛み(抵抗感)】

 「多読家ほど」と前置きしたのは、そもそも多読家でなければ所詮単価の安い本なのだから、思いに任せて衝動買いすればいい。2も3も頻度は多くないはずだから、さして問題にならない。ただし、年間に100冊も買うようになると話は別。手元に残したい良書ばかりなら、書棚スペースを増やそうとも考えるが、こうも 【書店界のゴッドファーザー】 が言うように「くだらない本が多すぎる」と2と3に対するストレスが尋常ではない。

 これらは 「買って良かった」 と思える本であれば、行く末(最終的には廃棄処分されるという結果)が同じであっても、相殺されて満足感が上回るので問題はない。しかし 「買わなければ良かった」 と思う本については、大きな代償となる。だから「多読家ほどまず借りて」 見極める必要があるのだ。

*注意
 年間100冊以上購入しても、書棚スペースが気にならないほど広い書斎をお持ちの方は、全く参考にならないことを付け加えておく。


 では、図書館の有効活用法についてご紹介するとしよう。


(多読家の方向け) 【図書館】 の有効活用法とは?
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 【ビジネス書】を図書館で借りる・・・

 そう聞くと「ビジネス書なんて見たことない」とか「古い本しか置いてない」という声が返ってきそうだが、ある意味でそれは事実かも知れない。なぜなら新刊タイトルや人気タイトルは、所蔵されていても、常に貸出中だからである。

 では、どうやって旬のビジネス書を借りるのか?

 答えは「web予約」である。自治体や図書館によってサービスに違いはあれど、現在はwebで貸出の予約申し込みができるのだ。しかも自宅や勤務地に属する区や市の図書館だけでなく、たいてい近隣の区や市の図書館も利用できるのだから便利だ。

(さすがにオンラインショッピングとは違い、webでできるのは貸出の申込だけ。本を借りるためには図書館に足を運ばなければならない・・・当たり前のことではあるが)

都内在住の私が利用しているのは、世田谷区/杉並区/三鷹市 にある3つの図書館。いずれも自宅から自転車で行ける圏内にあるから、交通費をかけずに借りに行ける。これに加えて、通勤途中にある 渋谷区/新宿区 の図書館も加えたら、相当な冊数のビジネス書を買わずに読めるのだが、立地的に駅から離れた場所にあるため利用していない。

* 都内在住の方であれば、後述するが 「東京図書館制覇!」(あなたがカードを作れる図書館をチェック) という webサイトが非常に便利だ。

【web予約までの手順】
1.図書館に行き、利用登録を行う
2.図書館webで借りたい本を検索し、貸出予約
3.貸出可能となったら、メール(電話)で連絡を受ける
4.図書館に行き、借りる
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【裏技】
図書館webに書誌情報が登録される前に図書館に行って予約する!

 図書館のデータベースに登録されていないタイトルも予約可能、ということを知っている人はよほど図書館を使いこんでいる人だけかも知れない。当然、図書館側では蔵書申請の手続きを経て、利用者への貸出開始となるから日数はかかるが、経験上1ヶ月以内に貸し出しできるケースがほとんどだ。

 webで予約できるタイトルは、当然自分以外も予約できる状態である。ベストセラーランキングに入るような人気タイトルは、順番待ちが数十、数百人という場合もザラ。その点、書誌データ登録前の予約であれば、ほぼ1番目に借りることができるからオススメである。



複数の 【図書館】 を利用することのメリット
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 地域性の問題なのか、同一タイトルを見ても予約の順番待ち人数には差が出る。そして、同じ順番待ち人数であっても、蔵書数によって借りられるまでの日数に違いが出る。したがって、複数の自治体の図書館webを見比べることは有効だ。

 例えば、現在TSUTAYAランキングで1位、昨年12月発行の「嫌われる勇気」(岸見一郎・ 古賀史健 著/ダイヤモンド社)を調べてみる。

4478025819嫌われる勇気―――自己啓発の源流「アドラー」の教え
岸見 一郎 古賀 史健
ダイヤモンド社 2013-12-13

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⇒⇒ 鳴海の紹介記事は こちら

世田谷区立図書館 の場合]
(A)所蔵数 ・・・ 21冊(所蔵館数 16)
(B)予約数 ・・・ 545件
(B÷A) ・・・ 25 → 1人2週間貸出とすると【50週間待ち】

杉並区立図書館 の場合]
(A)所蔵数 ・・・ 8冊(所蔵館数 8)
(B)予約数 ・・・ 415件
(B÷A) ・・・ 51 → 1人2週間貸出とすると【102週間待ち】

三鷹市立図書館 の場合]
(A)所蔵数 ・・・ 4冊(所蔵館数 4)
(B)予約数 ・・・ 92件
(B÷A) ・・・ 23 → 1人2週間貸出とすると【46週間待ち】

いかがだろう。なんと杉並区で借りると単純計算で102週間待ち、つまり約2年待ちということになる。一方、所蔵数は少なくとも三鷹市で借りるならば46週間待ち、つまり約1年待ちで済むという計算だ。これが「図書館には古い本しか置いてない」と言われる理由である。

旬なうちに読むべきか、予約したことも忘れてしまった頃に読むべきかは、判断のしどころ。「多読家ほどビジネス書はまず借りて、価値を見極めてから買うべき」とは言ったが、ランキングに入ってから存在に気づいた本は、図書館予約ではもう手遅れ。書評や書店で実物を見極めて、購入する方が得策であろう。

一方、現在TSUTAYAランキングで8位、今年3月発行の「ディズニー おもてなしの神様が教えてくれたこと」(鎌田洋 著/SBクリエイティブ)。このタイトルは「ディズニー ○○の神様」シリーズの第4弾。
4797376074ディズニー おもてなしの神様が教えてくれたこと
鎌田 洋
SBクリエイティブ 2014-03-12

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ランクインしてからでは遅いと、図書館データベースに登録される前に世田谷区立図書館で予約申込を行ったところ、所蔵後1番目に借りることができた。現在、各図書館webで調べてみると

世田谷区立図書館 ]所蔵数 4冊、予約数 17件
→ 1人2週間貸出とすると【8週間待ち】

杉並区立図書館 ]所蔵数 1冊、予約数 24件
→ 1人2週間貸出とすると【48週間待ち】

三鷹市立図書館 ]所蔵なし

という結果であった。「48週間待ちなら買おうかな」と思うかも知れないし、「8週間待ちなら待とうかな」と思うかも知れない。書店で購入すること以外に、図書館という選択肢が増えることは多読家にとってはありがたいこと。ただ前述の【裏技】で詳しく書いた通り、早めに発売情報を察知してさえいれば、発売直後に待たずに借りられるのだ。これを有効活用しない手はない。


【図書館】 を便利に使うためのオススメwebサイト
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日本最大の図書館検索 カーリル
「全国6,000以上の図書館からリアルタイムの貸出状況を簡単に検索できるサービス」がウリ。最近存在を知ったので、まだ使いこなせていない(汗)。

* 東京都内在住なので私はもっぱらこっち ↓↓↓

東京都立図書館統合検索
図書館の蔵書を一括で検索できる!

東京図書館制覇!
あなたがカードを作れる図書館をチェック!
駅から近い図書館リスト
東京23区の区立図書館を制覇した、管理人の竹内庸子さんがひとつひとつ丁寧に紹介しているサイト。管理人のやさしい人柄も感じられるので、一見の価値あり。

* 「カーリル」の特別インタビュー には、竹内さんが写真入りで紹介されている。


【図書館】 を取り巻く問題
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 少し前に(今も?)物議を醸していたのが、佐賀県の【武雄市図書館】である。理由は、あのTSUTAYAやTポイントを展開するCCC( カルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社 )が企画・運営を担っているからだ。

 武雄市長の樋渡啓祐氏が、CCCの増田社長に取り組みを提案した経緯については、著書の「沸騰!図書館 100万人が訪れた驚きのハコモノ」(KADOKAWA/角川書店)に詳しく書かれている(鳴海の紹介記事は こちら

B00K2MEF2A沸騰!図書館 100万人が訪れた驚きのハコモノ (角川oneテーマ21)
樋渡 啓祐
KADOKAWA / 角川書店 2014-05-10

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 本書からは、行政の仕事を民間に委託することの難しさ、そして樋渡氏の改革に対する熱い思いが痛いほど伝わってきたのだが、出版業界の事情も垣間見えた。樋渡氏は当初、武雄市図書館の指定管理者の話を、周辺の書店組合に持ちかけていたというが、CCCとの基本合意後、こんなやり取りがあったそうだ。

意外、そしてがっかりしたのが、地元書店組合の関係者からの質問。
「私らのこと、どうするとですか?」

民業圧迫で書店の売上に悪影響、と言うのだ。それを言うなら、指定管理者の話を持ち掛けたとき、「余計なことを言うな」 と拒絶したのはどこの誰なんだろうか。

「雑誌では重複するだろうし、悪影響があるかもしれない。ただし、書籍については新図書館と書店さん、共存共栄できるようにしていく。文具についても、新図書館で販売するのはオリジナルブランド。ちゃんとすみわけができるようにしたい」

悔しい思いを飲み込みながらこう答えるのが精いっぱい。このときは本当に悔しかった。

* 『沸騰!図書館 100万人が訪れた驚きのハコモノ』(KADOKAWA/角川書店)p93より

 樋渡氏の言葉なので、真偽のほどは分からない。 (その3)(その4) では、出版社に対する【意識改革】の必要性について述べたが、書店に対しても同様にその必要性を感じざるを得ない。 旧態依然の業界ならではの " 甘え " としか、私には感じられない。

「図書館は借りるべき本と買うべき本を区別して、書店では手に入りにくい高額の研究書などを揃えてほしい」
「図書館には本屋が置けない本を揃えて、新刊書は少し遅く出すなど、書店とは違うサービスを目指してほしい」
「敵対するのではなく、同じ方向を向いて読書文化を一緒に育てていきたい」

* 『文化通信』(13/10/28号記事「地域書店に聞く 図書館との共生」) より

 もはや電子の本がどうだとか、図書館がどうだとか言っている状況ではなく、(その4) でも述べた通り、顧客である読者の方を向いて、もっと危機感を持って仕事をして欲しい。

「買ってもらえる本」 を目指すだけでは足りない!
もはや本である必要のない 「情報」 をどう売るか!

これを考えるべきだと思う。本にこだわっている時点でアウト(手遅れ)ではないか。だって読書以外の魅力的な娯楽がこんなにもたくさんあるのだから・・・

 私も一介のブロガーとして 「読み手にとって有益な情報を発信すること」。この責務を全うできるよう頑張りたい。

(完)


【連載コラム】 ビジネス書に対する接し方が変わってしまった!
 ┣ (その1) 【ビジネス書】 の著者になることはそんなに価値のあることなのか?
 ┣ (その2) 身内批判を恐れない! 出版業界を中から変えてくれそうな勇気ある変革者たち
 ┣ (その3) 本作りに携わる人たちに知って欲しい読者が支払う 【3重のコスト】
 ┣ (その4) これからの【ビジネス書】のあり方とは?
 ┣ (その5) 【ビジネス書】 は買う価値があるのか? 図書館の利用価値は?

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2014年08月19日

これからの【ビジネス書】のあり方とは?

【連載コラム】 ビジネス書に対する接し方が変わってしまった! (その4)
 ⇒⇒ (その1)から読みたい方は こちら 

 最近、ビジネス書に対する接し方が変わってしまった。きっかけは先日出会った 『ビジネス書を読んでもデキる人にはなれない』(漆原直行 著/マイナビ) という本。【ビジネス書】に対して3つの疑問が湧いてきたのは、 (その1) で触れた通り。今回は(疑問3)について書いてみる。

ビジネス書を読んでもデキる人にはなれない (マイナビ新書)ビジネス書を読んでもデキる人にはなれない (マイナビ新書)
漆原 直行

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⇒ 鳴海の紹介記事はこちら

(疑問1)
ビジネス書の著者になることはそんなに価値のあることなのか?
⇒ 鳴海のこたえは こちら

(疑問2)
このブログで出版業界に対して苦言を呈したところで何か変わるのか?
⇒ 鳴海のこたえは こちら

(疑問3)
そもそもビジネス書を買う価値があるのか?

 (その3) で、ビジネス書を買うことによって 【3重のコスト】 が発生していると書いた。改めて整理してみると次のようになる。

読者が支払う 【3重のコスト】
 1.購入するための 【お金】
 2.整理するための 【時間】
 3.処分することに対する心理的な 【痛み(抵抗感)】

 これらは 「買って良かった」 と思える本であれば、行く末(最終的には廃棄処分されるという結果)が同じであっても、相殺されて満足感が上回るので問題はない。しかし 「買わなければ良かった」 と思う本については、大きな代償となる。その後悔の念が大きければ大きいほど、「借りて読んで買う価値のある本だけ買う」 というスタイルになってしまう。残念ながら今の私がこのパターンである。

(疑問3)
 「そもそもビジネス書を買う価値があるのか?」


 この疑問について、一言で答えを出すことはできない。それを理論立てて説明するよりも、「どうしたら買う価値のあるビジネス書を生み出せるのか?」 を考える方が有意義である。実現できるかどうかはさておき、気に入っているのは次のようなアプローチである。

* 三浦崇典氏(天狼院書店)とゴッドファーザーの対談 (鳴海の紹介記事は こちら )
 『文化通信』(12/11/19号記事「この業界を救うための唯一の方法『新しい書店の形を考えるD』) より

●出版点数を減らす

(三浦氏)
「この業界を良くするにはどうすればいいでしょうか。」

(ゴッドファーザー)
「出版点数を減らせばいい。くだらない本が多すぎる」

「出版点数を減らすと、どういうことになるだろうか。書店の側から考えると、新刊入れ替え、および返品の業務が激減することとなり、書店の利益を圧縮する人件費を圧縮できる。また、ひとつひとつの本が棚に残る可能性が高くなり、重版率も高くなる。書店の方では雑務が減るので、積極的に仕掛ける時間ができるようになる。」

「出版社の営業も少ない点数を案内することができるようになるために、負担も少なくなる。もちろん、編集者は例えば年間10冊のノルマが5冊に減れば、1冊にかける時間が多くなり、本の完成度が高まる。このサイクルに持っていければ、重版率が上がり、返品率が下がる。」

(三浦氏)
「出版社は自分の得意分野の本を伸ばすことに集中せざるを得なくなる。そうしなければ、競争力を維持できる本を、そもそも作れなくなるからだ。そんな理想論、できるはずはない。そう思われるかも知れない。けれども、実際にこの姿勢を貫いている出版社がある。」

「サンクチュアリ出版である。ここは月の出版点数は1冊ほどで、なので編集に注力することができ、同時に営業も少ない本に集中することができる。1冊の本を丁寧に作り、丁寧に売り伸ばすという、理想の形が、この出版社ではできている。それは恐るべき重版率に表れている。」

 残念ながらこの記事には肝心のサンクチュアリ出版の「重版率」の数字に言及されていない。しかしながら、出版社/書店/読者の3者の目線がふまえられた良い対談記事であった。実際に出版点数を絞った試みをしている出版社があるというのも心強い。ただもはや紙の本の競合は電子書籍とは限らない。SNSやゲームといった他の娯楽との 【時間の奪い合い】 はとうに始まっている。「本」という枠組みで議論している時点でもはやアウトかも知れない。

 本作りに携わる人が持つべき危機感は

「買ってもらえる本」 を目指すだけでは足りない!
もはや本である必要のない 「情報」 をどう売るか!

これを考えるべきだと思う(別に新しいことを言っている訳ではないのだが)。

(鳴海のアイデア)
 これからの【ビジネス書】のあり方とは?


 出版社で新しい企画を通す際、なかなか新人著者の起用は難しいらしい。売れっ子著者にすがり、頭を下げて執筆をお願いする。当の著者は多忙だから、内容も過去本の焼き直しにならざるを得ず、文体も自信満々の " 上から目線 " となりがちだ。

 結果的に、書店に並ぶのは

× ヒット作の人気に便乗した似たタイトルの類書
× タイトルで謳われている要素がほとんどない、中身とほとんどマッチしていない本

こんな本に出会った読者はきっと 「詐欺じゃん!」 とツッコミを入れたくなるだろう。

 現在の力関係はこんな感じ(あくまでも私の推測)。
(強者)【売れっ子著者】 > 【編集者】 > 【新人著者】(弱者)

 本作りに肝心の【読者】は介在していない印象。むしろ、【読者】の方から " 離れている " という感じか。【売れっ子著者】の上から目線にイライラし、二番煎じ本にガッカリして、心が離れてしまう。そして【編集者】の方も消費者よりも、いかに【売れっ子著者】に書いてもらうかに腐心しているように感じる。

【売れっ子著者】本のクオリティについては、勝間和代氏が著書「有名人になるということ」(ディスカヴァー・トゥエンティワン)でこう述べている。

「当の本人は、忙しくなるうえ、人気を背景に仕事が『Easy』になるため、アウトプットの質が下がる」
 * 『有名人になるということ』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)(p167)より
 (鳴海の紹介記事は こちら

 結局、【売れっ子著者】に頼る構造が(ビジネス書における)悪循環を生み出す元凶である、というのが私の分析だ。時はすでに、誰もが電子書籍として本を自らプロデュースできる時代。もはや(現物である)本である必要はない。【新人著者】が生まれる土壌はでき始めているのだから、これに着目しない手はない。

 私が考える " ビジネス書 " の在り方はこうだ。
(強者)【読者】 > 【新人著者】 > 【編集者】(弱者)
(強者)【読者】 > 【編集者】 > 【売れっ子著者】(弱者)

 【読者】が【新人著者】を育成していけるような仕組みや場、これを出版社が何らかの形で提供できればいい(安易だがweb上のコミュニティをつくるとか)。【新人著者】はおのずと【読者】目線で執筆するはずだし、【読者】は思い入れがあるから(「借りる」ではなく)きっと「買う」。【新人著者】は【編集者】に頭を下げるのではなく、「読みたい本」について【読者】から教えを請うべきだ。頭を下げるべき相手は【編集者】ではなく、【読者】の方である。

出版社は、【新人著者】が出版社を通さずにデビューしてしまわぬよう、発掘・育成に専念すべきである。【読者】→【新人著者】→【売れっ子著者】へと昇格させていく仕組みや場。これを提供できなければ、 「Amazon Kindle ダイレクト・パブリッシング」 のようなサービスには太刀打ちできない! 相手は無料で簡単、世界に発売できるのだから。

 一方、【売れっ子著者】に対してはどうするか? 極論を言えば、【売れっ子著者】の方から売り込んでくるまで待てばいい。売れっ子である以上は多忙ゆえに、クオリティは期待できないし、慢心や驕りがある。それは【読者】が望まない。【読者】が執筆を望むなら、【編集者】がしっかり声を聞いてニーズを汲み取り、(下手に出る必要もなく自信を持って)ニーズに合った企画の執筆のお願いをすれば良い。

 この流れである以上、書店に並んでいるのはヒット作の類書だらけ・・・ という状況にはなりにくいはず。売れっ子著者には初心を思い出し、読者に有益な情報を提供するという責務を全うして欲しい。

 具体性に欠けるが、新人タレントを育成するように、プロダクションならぬ出版社が新人著者を育成していく・・・ そんな発想があっても良いのではないか。本(紙)にこだわらず、ネットであろうと講演会であろうと何でもいい。

 有益な情報を発信すること

これが大事である。もはや、育成した著者の本を自社で出すのではなく、競合の出版社から発売する・・・ なんて発想が自然に生まれてきた時、出版業界の未来が拓けていることと思う。「ビジネス書に対する接し方が変わってしまった」 と述べたが、今後はただやみくもにビジネス書を読むのではなく、【ビジネス書の在り方】を考える上でヒントになるような本を読んでいこうかなと思う。

 もう著者を目指すのはやめた!

 今後は「有益な情報発信」、これを目指そうと思う。続きは こちら 


【連載コラム】 ビジネス書に対する接し方が変わってしまった!
 ┣ (その1) 【ビジネス書】 の著者になることはそんなに価値のあることなのか?
 ┣ (その2) 身内批判を恐れない! 出版業界を中から変えてくれそうな勇気ある変革者たち
 ┣ (その3) 本作りに携わる人たちに知って欲しい読者が支払う 【3重のコスト】
 ┣ (その4) これからの【ビジネス書】のあり方とは?
 ┣ (その5) 【ビジネス書】 は買う価値があるのか? 図書館の利用価値は?


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2014年08月18日

本作りに携わる人たちに知って欲しい読者が支払う 【3重のコスト】

【連載コラム】 ビジネス書に対する接し方が変わってしまった! (その3)
 ⇒⇒ (その1)から読みたい方は こちら 

 最近、ビジネス書に対する接し方が変わってしまった。きっかけは先日出会った 『ビジネス書を読んでもデキる人にはなれない』(漆原直行 著/マイナビ) という本。【ビジネス書】に対して3つの疑問が湧いてきたのは、 (その1) で触れた通り。今回は(疑問3)について書いてみる。

ビジネス書を読んでもデキる人にはなれない (マイナビ新書)ビジネス書を読んでもデキる人にはなれない (マイナビ新書)
漆原 直行

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⇒ 鳴海の紹介記事はこちら

(疑問1)
ビジネス書の著者になることはそんなに価値のあることなのか?
⇒ 鳴海のこたえは こちら

(疑問2)
このブログで出版業界に対して苦言を呈したところで何か変わるのか?
⇒ 鳴海のこたえは こちら

(疑問3)
そもそもビジネス書を買う価値があるのか?

(疑問3)
そもそもビジネス書を買う価値があるのか?


 他の読者がこんな疑問を抱かないよう、「売れたモン勝ち」「とにかく一瞬でも話題になって、注文されて、売り抜けてしまえばこちらのもの」 といった本づくりが行われないことを願ってやまない。読んでガッカリするような本はもう書店に送り出さないで欲しい!

 今の私はもっぱら、「買う価値のある本だけ買う」 というスタイルになってしまっている。昨年までは、年間100冊以上のビジネス書を購入していた。「少しでも出版業界に貢献できれば・・・」 というささやかな気持ちからだ。

 自己啓発書の著者、千田琢哉氏はこう述べている。

「どんな1冊にも10万円の価値があると心得る」 (p178)
「本を借りて読む人は自分も一生使われて終わる」 (p 58)
「本の買い過ぎで貧乏になった人はいない」 (p130)
「本にかけたお金とその人の年収は比例する」 (p128)

*『人生で大切なことは、すべて「書店」で買える』(千田琢哉 著/日本実業出版社)
 (鳴海の紹介記事は こちら
人生で大切なことは、すべて「書店」で買える。人生で大切なことは、すべて「書店」で買える。
千田 琢哉

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 千田氏には大変共感し、感銘を受けた。しかし、千田氏に対してではないが、一消費者である私は、出版業界に裏切られ続けてしまった。『ビジネス書を読んでもデキる人にはなれない』(マイナビ)で漆原直行氏はこう述べる。

読み手だけの問題ではなく、送り手である著者や出版社の一部に見受けられる、「売れたモン勝ち」「とにかく一瞬でも話題になって、注文されて、売り抜けてしまえばこちらのもの」といったあくどい商売っ気にも問題があるとも認識しています。(略)

また、あくどい著者や版元は、まるで焼畑農業のように「今度はこのネタ」「次はこんな煽り」と場所を移してあざとく読者の目先を変え、 " 売らんかな " の商売を繰り広げていく・・・。

*「ビジネス書を読んでもデキる人にはなれない」(漆原直行 著/マイナビ/)p210〜211より
(鳴海の紹介記事はこちら
ビジネス書を読んでもデキる人にはなれない (マイナビ新書)ビジネス書を読んでもデキる人にはなれない (マイナビ新書)
漆原 直行

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 「一部に見受けられる」と控えめだが、実際に書店に足を運べば、似たような本ばかり。作り手である出版社だけでなく、売り手である書店側にも問題がないとは言えない。

 「少しでも出版業界に貢献できれば・・・」 というささやかな気持ち。

 (書店界のゴッドファーザーではないが)、あまりにも「くだらない本が多すぎる」(鳴海の関連記事は こちら )。「買う価値なかったな」 と思うたび、この献身的な気持ちが薄れていったのは間違いない。

 出費だけではなく、書棚スペースにも限界がある。年間100冊のペースで購入していると、相当な頻度で書棚の片づけをしなければならない。だから「くだらない本」を買ってしまうと、本代だけでなく、片づけや処分するために選定する【時間というコスト】も失ってしまう。それに加えて、本を処分することに対する【抵抗感】。これは言ってみれば、【心理的なコスト】である。言ってみれば、【3重のコスト】だ。

 だから、漆原氏が訴える 「送り手である著者や出版社の一部に見受けられる、『売れたモン勝ち』『とにかく一瞬でも話題になって、注文されて、売り抜けてしまえばこちらのもの』といったあくどい商売っ気」 は読者にとって、悪の何ものでもない。

 処分しなければならない本を買ってしまうのは 「本の目利きが悪い」 から、と言われたらそれまでだが、本の内容(クオリティ)は劣化しているのに、衝動買いさせる装丁やキャッチコピーの類はどんどん洗練されてくるから厄介である。書店で十分吟味できれば良いが、多少気に入ったら買ってしまう(買ってあげたい)のが心情というもの。

1回読めばいい本は「借りて読む」でいいのではないか・・・

残念ながら、最近はこう考えてしまう。本作りに携わる人に認識して欲しいのは、「くだらない本」 を世に送り出してしまった時、読者が本を買うのに支払っているコストは購入代金だけではないこと。【3重のコスト】 が発生していることをよくよく考えてもらいたい。

読者が支払う 【3重のコスト】
 1.購入するための 【お金】
 2.整理するための 【時間】
 3.処分することに対する心理的な 【痛み(抵抗感)】

続きは こちら 

【連載コラム】 ビジネス書に対する接し方が変わってしまった!
 ┣ (その1) 【ビジネス書】 の著者になることはそんなに価値のあることなのか?
 ┣ (その2) 身内批判を恐れない! 出版業界を中から変えてくれそうな勇気ある変革者たち
 ┣ (その3) 本作りに携わる人たちに知って欲しい読者が支払う 【3重のコスト】
 ┣ (その4) これからの【ビジネス書】のあり方とは?
 ┣ (その5) 【ビジネス書】 は買う価値があるのか? 図書館の利用価値は?


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