2017年02月19日

『出版年鑑 2016年版』 レポート

 なかなかまとまった時間が取れず、ようやく 『出版年鑑2016』 を手にした。「2016」とあるが、2015年の実績なんだけど・・・ 今更ながら振り返ってみようと思う。

※ 過去の『出版年鑑』レポート
 |2015年版(2014年実績)2014年版(2013年実績)

 2015年の書籍の売上額は、7,935億7,217万円(前年比1.9%減)で、減少幅は前年(2013年・2014年比較)の4.1%減と比べて小さくなった。雑誌を含めた全体では、1兆6,010億9,931万円(同5.2%減)という結果(p12、p30)に終わった。

 書籍に着目し、売上額(実売総金額)・発行部数(総発行部数)・新刊点数の関係を見てみよう。

shuppan_nenkan16_graph01.jpg

 上記グラフは『出版年鑑2016』p278に掲載されている「書籍・雑誌発行推移」の1984年以降の数値をグラフ化したものである。この統計によれば、発行部数は1997年に157,354万冊のピークを迎えて減少傾向である。

 興味深いのは、発行部数推移の売上額や新刊点数との関係である。発行部数は1997年のピークの次に、2007年に147,480万冊の山はあるものの、売上額は落ち込んだまま。一方、新刊点数は一貫して増加傾向である。新刊をたくさん出して、たくさん刷っても、売れない状況が見て取れる。

 書籍の新刊点数に着目すると、2014年が80,954点だったのに対して、2015年は80,048点と微減。安易な二番煎じ、三番煎じ本を粗製濫造する作り手に嫌気が差している私にとっては、増えていないだけで有難い気持ちである。2001年以降の推移は以下の通り。

新刊出版点数推移(カッコ内は前年比)

01年 71,073(9.2)
02年 74,259(4.5)
03年 75,530(1.7)
04年 77,031(2.0)
05年 80,580(4.6)
06年 80,618(0.05)
07年 80,595(-0.03)
08年 79,917(-0.8)
09年 80,776(1.1)
10年 78,354(-3.0)
11年 78,902(0.7)
12年 82,204(4.2)
13年 82,589(0.5)
14年 80,954(-2.0)

15年 80,048(-1.1)

* 『出版年鑑2016』 p30 より

 では次に出版社目線で状況を推測してみる。以下の表は、1985年から2015年までの書籍新刊点数、書籍総発行部数、書籍実売総金額、出版社数に加えて、書籍新刊点数を出版社数で除算して割り出した1社あたり新刊点数の推移である(注:出版社数についてのみ、過去の『出版年鑑』の数値を用いた)。雑誌を考慮に入れず、新刊点数を単純に出版社数で除算することの荒っぽさは、前年までのレポートと同様、ご容赦いただきたいのだが、出版社の苦しさを示すには良い情報ではないかと思っているので続けたい。

shuppan_nenkan16_chart01.jpg

 出版社が一番苦しかったと思われるのは2013年。1社あたり23点もの新刊を1年間で出したにもかかわらず、実売総金額は下降の一途。2014年、2015年とその負担は23.0→22.9に僅かに減ったものの、実売総金額も減り続け、出版社自体の数も減り続けている状況。

 書籍の実売総金額のピークは1997年。この年は1社あたりの新刊点数が13.5点とここ数年の半分に近い・・・ にもかかわらず、ここ数年の実売総金額は4割近く多い。また2015年の実売総金額に近い1989年を見てみると、新刊点数は9.3点となっており驚く。この頃は出版社側もじっくり本づくりができたのではないだろうか。

 グラフ化してみると以下のようになる。

shuppan_nenkan16_graph02.jpg

 出版社の1社あたりの新刊点数が急激な伸びを示し続けているにも関わらず、実売総金額は1997年のピークに下降傾向。時期を同じくして出版社数の減少が始まっている。辛いのは出版社数が減るペースよりも、実売総金額が減るペースの方が急激なこと。生き残っている出版社がどれだけ辛い状況に置かれているか、素人目にも推測できる。でも新刊点数を維持しなければ売上を維持できない・・・ 同情に値するが、読者としては粗製濫造により駄本が出回るのは勘弁して欲しい。



 さて最後に良書かどうかのコメントは控えるが、2015年のベストセラーを紹介しておく。

4167907828火花 (文春文庫)
又吉 直樹
文藝春秋 2017-02-10

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 2015年は何と言っても、又吉直樹著『火花』(文藝春秋)。驚くことに最初の発行部数は1万部。その後、芥川賞を受賞してから、売れゆきに拍車がかかり、年間通して途切れることなく240万部を売り、第1位。

 以降、第2位 下重暁子著『家族という病』(幻冬舎)、第3位 篠田桃江著『一〇三歳になってわかったこと』(幻冬舎)、第4位 曽野綾子著『人間の分際』(幻冬舎)、第5位 渡辺和子著『置かれた場所で咲きなさい』(幻冬舎) と幻冬舎で高齢の女性著者の本が続いた。

家族という病 (幻冬舎新書) 一〇三歳になってわかったこと 人生は一人でも面白い 人間の分際 (幻冬舎新書) 置かれた場所で咲きなさい

 個人的には、第14位 元少年A著『絶歌』(太田出版)に衝撃を受けた。
 (鳴海の紹介記事は こちら )。

 1977年神戸連続児童殺傷事件の加害者の手記。発売と同時に話題となり、発売中止の抗議や販売中止、図書館での貸し出し制限などの騒動は記憶に新しい。初版10万部は売り切れ、25万部の本書。読まずして堂々とコメントする者に対して不信感を抱いたので、私は自ら購入して読んだ。ただ、いざ読んだものの、その強烈な内容に最後まで読み切れなかった・・・ 出版とは何か、未成年の犯罪と更生後の接し方に一石を投じた作品だったと思う。

絶歌 職業としての小説家 (新潮文庫)

 また第15位 村上春樹著『職業としての小説家』(スイッチ・パブリッシング)も業界に衝撃を与えた一作だったと思う。

 紀伊國屋書店が9万部を買い取って、他書店に流通させるという試みを行ったのである。仕入れて責任を持って売るという、商売では普通の意識が希薄な「委託」を原則とした不思議な業界・・・ だからこそ話題になる訳だが、この買い切りというスタイルを取ったことと、卸である取次ではなく、書店である紀伊國屋書店が他書店に流通させたことが話題になったのである。

 まだまだヌルい! 個人的にはそう感じる。読者が紙の本ではなく、電子の本も選べる時代は既に到来しているのに、こんなことが業界の話題になっていること自体がヤバ過ぎる。一読者としては、ドイツのように書店が電子書籍を売るという発想を書店員たちに持って欲しいと思う。「tolinoアライアンス」って何? という方は是非 日本出版インフラセンターwebのトピックス欄に掲載(2015/8/3付)の 「ドイツ出版業界実態調査報告書」 を是非参照いただきたい・・・ 特に書店員の方々には。

(鳴海の関連記事)
Kindle を超えた書店連合 『tolinoアライアンス』(@ドイツ)
医書.jp 「デジタルと紙のハイブリッド販売を書店を窓口に出版社として実現する仕組み」

 出版業界はもうしばらく厳しい状況が続くだろう。自然淘汰されてもなお、踏みとどまっている方々の中に、新たな価値観を持った方が現れることを願ってやまない。ドイツではAmazonへの対抗策として、tolinoアライアンスを組んだ。これの日本版が生まれるのか、あるいは書店でKindleを売るくらい勇気ある者が現れるのか、これからが楽しみである。

 紙の本への愛着は分かる。でもユーザーの利便性を考えた時、紙であろうと電子であろうと本は本だ! という読者側(すべての読者とは言わないが)の発想を抱けるようになって欲しい・・・ 偉そうだが、紙の本はほとんど読まないが、電子書籍の多読で出版社には貢献していると自負している読者として、そう言わずにはいられない。

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ラベル:出版年鑑
posted by 鳴海寿俊 at 22:46| Comment(0) | 出版業界全般 | 更新情報をチェックする

2016年06月19日

『崖っぷち社員たちの逆襲』を読んで書店・出版業界に対して思ったこと

4872907965崖っぷち社員たちの逆襲-お金と客を引き寄せる革命──「セレンディップ思考」-
小島 俊一
WAVE出版 2016-04-20

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小売店や、流通業関係者なら身につけるべき
「仕事のお金」と「マーケティング」の基本が分かる

「ビジネス実用書+エンタテインメント小説」

とのふれ込みに期待して読んだ(読む前の紹介記事は こちら )。

 売りである「ビジネス実用書」の観点では、損益計算書や貸借対照表の見方やマーケティング、コーチングなどの知識に加えて、ドラッカーの言葉が散りばめられているが、少々盛り込み過ぎの感があり、もう少し幅を狭くして、深い説明があってもいいかなと個人的には思った。

 一方ストーリーの方は、著者の小島俊一氏の処女作ということもあってか、表現の拙さは否めないものの、銀行マンが出向先の書店で孤軍奮闘しつつも、店長たちとの信頼関係を築いて、実績を上げていくさまが描かれており、読んでいて気持ちがいい。感動的なエピソードも織り交ぜられており、後半に進むにつれて引き込まれる。

 本の紹介はここまで。

 以降は、この本から感じ取った書店・出版業界の状況とそれに対する私の考えを述べたい。



(1)「本当に校正したの?」と言いたくなる大量の誤字・脱字

 どんな誤字・脱字かについては、発行元のWAVE出版の今後に期待して直接お伝えするとして、校正に時間が割けない理由としては、新刊を短い編集(校正)期間で世に出さざるを得ない、やむを得ない出版社側の事情が感じ取れる。

 書籍市場は右肩下がりで、出版社数も減っているのに、新刊点数だけは伸びている(『出版年鑑 2015年版』をもとに作成したグラフは こちら )ことからも容易に推測できる。とは言え、文章の良し悪しは仕方がないとしても、誤字・脱字くらいは時間をかければ防げること・・・ 本づくりに対する姿勢が問われるだけに、読者に対する誠意を持って取り組んで欲しいものである。



(2)発売と同時に電子版を出さないことによる販売機会ロス

 残念なことに『崖っぷち社員たちの逆襲』はkindle版が発売されていない。

 kindle版が出ていれば即買いするのに・・・

とこの本に対して感じた人は、実は数少ないのかも知れない。業界で話題となっている本書の著者は、あの明屋書店の小島俊一社長である。推察するに、買おうとする人の多くは、書店や出版業界に携わっている人たちであろう。だとすると、<紙>の本を<書店>で買うことに何の違和感もなく、いやむしろそれを望むはずだ。

 ただし<多様な読者に本を届けたい>という思考が働くのならば、本来は発売と同時に電子版も販売するべきである。あいにく私は図書館で借りて読んだに過ぎない・・・ でも即買いするつもりではいた(kindle版で発売されていれば)。結果的に、1人の見込み客を逃したのだ!

 ダイヤモンド社の「刊行点数減らして売上増」、「読者の便を考えて全ての書籍で電子版をほぼ同時に発売」の取り組み を是非見習って欲しい。



(3)主人公(鏑木健一)の言葉から垣間見える書店の慢心

 舞台となる書店に出向し、業績回復を命じられた鏑木は 「スマホ隆盛、電子書籍が大きく伸びる中で、本屋そのものの未来は、どうなると思っておられます? まず、電子書籍の影響について聞かせて下さい」(p242) との質問にこう答える。

「電子書籍の本場であるアメリカにおいて、その占有は20%台で留まり頭打ちの傾向を見せています。さらに、この需要は従来からネット書店を使いこなされている方々が電子書籍に移行していると考えており、今後もリアル書店への影響は軽微になると思っております」 (p242)

 この考えが明屋書店の小島社長、あるいは他の書店に携わる方々の共通見解だとすると、楽観的過ぎると思う。アメリカの事情は詳しくは分からないが、日本では本自体に対する消費量が確実に落ちているのだから、電子書籍の比率などを議論する前に、スマホやSNSなどに奪われた可処分時間を再度読書に充ててもらう努力が必要だと思う。

 仮にその媒体が電子書籍であってでも・・・

である。多読家ほど手軽に持ち運べる電子書籍のメリットを享受できる。だからこそ、積極的に電子版をいち早く発売して欲しいし、電子版が出てさえいれば、スマホやタブレットの画面から読書に導くことだってできよう。

 書店の立場では電子書籍を売る術はないかも知れない。しかし、意識すべきはアメリカの状況ではなく、ドイツの 「tolinoアライアンス」 ではないか。日本で言えば、医書.jp ではないのか。このあたりに書店界の慢心を感じてならない。



(4)登場人物(唐戸店長)の言葉から感じる分析の甘さと難しさ

 登場人物の店長のうちの一人は何気なくこんな言葉を吐く。

「専務、ネット書店の件では、思うところがあるんだ」
「確かに、ネット書店の隆盛は否定できないよね。大手出版社に聞いたんだけど、その出版社の売上で、ガンジスの売上は全体の10%から15%も占めていて、法人別売上では一番だそうだ。でもこれは、逆に言うと80%以上の人が、まだ本屋で本を買って下さっていることでもある。アメリカでは、ガンジスが各地域に本屋を出店し始めている。児童書の出版社に聞くと、ガンジスの売上は大したことなくて、占有は1%から3%程度しかないそうだ。やっぱり、本屋は地域に必要不可欠のものだと、改めて思ってるよ」 (p254)

 おめでたい・・・ とはこういう時に使う言葉なのだろうか。明らかにamazonがリアル書店を出店していることを指しているのだと思うが、これは小島氏が全国の書店員に伝えたいメッセージなのだろうか。だとしたら、残念ながら私には気休めにしか感じられない。発すべきは慢心している書店員に対する警鐘であって欲しかった。

 kindle版で読書する私でも、書店に行くのは楽しい。でもいつもこう思う。

 書店で電子書籍が買えればいいのに・・・

 よほど広い書斎や収納スペースを持つ裕福な読者でない限り、紙の本は大量には抱えていられない。私は紙の本には次の 3重のコスト がかかると考えている。

読者が支払う 【3重のコスト】
 1.購入するための 【お金】
 2.整理するための 【時間】
 3.処分することに対する心理的な 【痛み(抵抗感)】

 電子版が出ているか確認する【時間】、紙の本を買うには至らず図書館に蔵書があるか調べて借りようとする【時間】もふまえれば、4重のコストがかかるとも言えなくもない。

 ネットの売上が10~15%だから、80%は(リアル)書店で買ってくれている、だから大丈夫という風に聞こえるが、こんな考え方で大丈夫か。確かに児童書や参考書などは紙の本を買わないわけにはいかないだろう(だから児童書を例に挙げている理由はわかる)。

 では、文芸書やビジネス書はどうか? 手軽に多くの本を持ち運びたいと自然に思わないか? それとも書店員はたくさん本を読まないのか? という嫌味を言いたくなる。

 コミックはどうか? 実用書はどうか? ・・・ と本来は本のジャンル別に対応を変えるべきなのに、一緒くたに語られがち。また図書館の利用状況について、ジャンル別に比較検証しようと思っても、本の分類方法が書店とは違うので、分析しにくいから厄介だ。

 昨今の書店の傾向として、本よりも利益率の高い文具や雑貨を取り扱い【生活提案】をうたうことが多い。他ジャンルで【生活提案】を目指す前に、読書の領域で【生活提案】を目指すべきではないか・・・ これだけ日常生活がデジタル化しているのに

書店で電子書籍を販売する路線をなぜ追求しない!?

 構造的にも、システム的にも難しいことは承知だが、前述のtolinoや医書.jpの取り組みも参考にして、読書における【生活提案】をして欲しい。読者は書店で電子書籍を購入したら、その売上はその書店に落としてあげたいと思う・・・ 私もその一人。

 amazon書店が日本に上陸したら私は間違いなく、amazon書店に行くだろう。その前に日本の書店がいち早く、電子書籍を販売できるインフラを作って、日本の読者をつなぎとめて欲しい。

●鳴海の Kindleユーザーレポート
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posted by 鳴海寿俊 at 17:21| Comment(0) | 出版業界全般 | 更新情報をチェックする

2016年06月12日

大沢在昌氏「本が売れないのは"新刊洪水"が一因」(『新文化』16/6/9号)

 『新宿鮫』などの著書で知られる大沢在昌氏が出版界に警鐘を鳴らしている。『新文化』16/6/9号の「本が売れないのは"新刊洪水"が一因」との記事でこんな大沢氏のコメントが紹介されている。

4334766986新宿鮫 新装版: 新宿鮫1 (光文社文庫)
大沢 在昌
光文社 2014-02-13

by G-Tools

 大沢氏は、本が売れなくなった大きな要因の一つに「新刊洪水」があると指摘する。出版社は売り上げの減少を出版点数で補おうとし、その結果、店頭には凡作や質の低い本が溢れた。

「割を食うのは読者。つまらない作品に出会うことが多くなり、一部のベストセラーに集中する」

 大沢氏の単行本作品の初版部数も、約10年前と比べて半分近くに減っているという。こうした状況が続けば、そのうち

「3分の1から2分の1の作家、出版社は消えるだろう」

と見通し、

「いずれ(出版界に)破局が訪れる。それが分かっているのに、何もしていないように見える。焼け野原になった時、体力がある出版社は生き残れる。大手はそれを待っているようにさえ感じられる」

と厳しく指摘した。では、どうすべきか。大沢氏は

書店が商品知識をもつこと、出版社が刊行点数を減らすことの2点が肝要だ

とした。

(16/5/26に東京・水道橋・東京ドームホテルで行われた日本雑誌広告協会の定時総会の後の講演で)

 同じ著者でも林真理子氏のように(鳴海の関連記事は こちら )、図書館の複本問題に矛先を向けるのではなく、自らの食い扶持を得ている出版社に向けて

「出版社が刊行点数を減らす」

ことに言及していること、そして図書館があるせいで書店で本が売れないという泣き言を言う書店員がいる中で

「書店が商品知識をもつ」

ことが肝要だと述べるあたり、勇ましさを感じてしまった。一方、執筆に専念できる環境を整えず、著者を不安にさせるような出版業界に対しては、強い怒りを感じる。なぜなら著者が良い本を書く環境が整わない限り、読者は駄本を読むこととなり、失望しかねないからだ。

 どうか 出版業界を変えてくれそうなキーパーソン たちを見習って、出版業界を盛り上げて欲しい! そして読者を満足させる本をたくさん提供して欲しい。そう願うばかりである。

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ラベル:大沢在昌
posted by 鳴海寿俊 at 01:36| Comment(0) | 出版業界全般 | 更新情報をチェックする