2017年05月07日

書協『2016年書籍の出版企画・製作等に関する実態調査(第5回)』過去調査からの推移分析(3)

書協『2016年書籍の出版企画・製作等に関する実態調査(第5回)』過去調査からの推移分析(3)

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設問5.電子書籍について(雑誌は含めない)

(1)電子書籍を刊行していますか。

 ① している ・・・ 167社 (有効回答出版社: 231社のうち、72.3%)  
 ② していない ・・・ 62社 (有効回答出版社: 231社のうち、26.8%
 ③ 記入なし ・・・ 2社 (有効回答出版社: 231社のうち、0.9%

 【刊行していない理由】
 ・ 採算がとれない (6社)
 ・ 今のところ必要なし (5社)
 ・ 準備中/検討中(5社)
 ・ 販路が整っていない (4社)
 ・ 手が回らない (4社)
 ・ 商品群の性質上、電子書籍に適するものがないため (4社)
 ・ 著者との調整ができていない (1社)
 ・ データの統一性に不安 (1社)
 ・ 「紙」あっての本と考えるため (1社)


出典: 『2016年書籍の出版企画・製作等に関する実態調査(第5回)』

 出版社が書籍の電子化に踏み切れない理由については以前、こちらの記事でwebで得た情報を紹介したが、今回公式な調査結果に触れることができて良かった。

 出版社に配布されたアンケート用紙が掲載されていない(第3回・2005年以降)ので推測ではあるが、理由は複数回答であろう。「採算がとれない」という理由は死活問題に関わるので仕方ないにしても、回答数が少ないとは言え、「今のところ必要なし」「準備中/検討中」「手が回らない」 が上位に来ているのは、電子派の読者をないがしろにされているようで非常に残念である。

設問5.電子書籍について(雑誌は含めない)

(2)刊行のタイミングについてご記入ください

 (対象出版社:167社)

 ● 新刊はほぼ紙版書籍の発行と同時 ・・・ 35社
 (対象出版社: 167社のうち、21.0%) 

 ● 紙版書籍刊行後 1~3カ月後 ・・・ 21社
 (対象出版社: 167社のうち、12.6%) 

 ● 紙版書籍刊行後 6カ月後 ・・・ 8社
 (対象出版社: 167社のうち、4.8%) 

 ● 紙版書籍刊行後 1年 ・・・ 5社
 (対象出版社: 167社のうち、3.0%) 

 ● 紙版書籍刊行後数年経過後 ・・・ 4社
 (対象出版社: 167社のうち、2.4%) 

 * 時期が不確定な回答は割愛


出典: 『2016年書籍の出版企画・製作等に関する実態調査(第5回)』

 ダイヤモンド社のように紙版と電子版を同時発売する体制を整えている出版社は21.0%とのこと。

 ただし、この数字は電子書籍を刊行している出版社167社に占める比率であるから、電子書籍を刊行していない出版社を含む全体(有効回答出版社: 231社)に占める比率は15.2%にまで低下する。

 紙版刊行後3カ月以内(35社+21社=56社)にまで広げても、24.2%にしかならない。

 これではいざ、話題になったり、ランキング上位に入ったとしても、電子派の読者は待ちきれず、チャンスロスとなってしまうだろう。

 ちなみに私は「Kindle Alert beta ver.」というサービスを使っている。まだ使い始めたばかりだが、Kindle で読みたいその本、Kindle に対応したら Twitter でお知らせしてくれるので有難い。

 今回ご紹介した『2016年書籍の出版企画・製作等に関する実態調査(第5回) 』は、書協(日本書籍協会 )という言わば業界の身内が行った調査ではあるが、読者目線で分析すると新たな気づきがあった。不定期の調査のようなので、次がいつになるか分からないが、継続的にウォッチしていきたいと思う。

 そしてこれからも読者のために、出版業界を変えてくれそうなキーパーソンたちをこのブログで応援していきたい。


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書協『2016年書籍の出版企画・製作等に関する実態調査(第5回)』過去調査からの推移分析(2)

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■出版企画について

設問1.出版企画について

(7)単行本の企画から刊行まで、どのくらいの期間を要しますか。


shokyo02.jpg

* 第1回、第2回は自由回答(第3回以降はアンケート用紙が掲載されていないが回答を選択肢から選ぶ方式と推測)のため記述はバラバラであるが、「最短」だけは矛盾なく、第3回以降の期間に当て込むことができたので集計を行った上で表に埋めた。「平均」と「最長」については、第1回、第2回との比較が困難であるため割愛した。

* 第5回の「平均」については、原典に記載の割合の算出結果が明らかにおかしく、不備と思われるが、記載の比率をそのまま表に埋めた。

* 四捨五入の関係で合計が必ずしも100%にならない。


出典: 『2016年書籍の出版企画・製作等に関する実態調査(第5回)』

 単行本の刊行までの「最短」期間は、「少なくとも本づくりに最低〇カ月はかける」と言い換えることができ、出版社の姿勢が試されるところだ。結果はわずか「1~3カ月」で刊行してしまう割合は、1994年で38.6%だったが、2001年には約5割(49.6%)に跳ね上がっている。

 『出版年鑑2016年版』(紹介記事はこちら)によれば、2001年の書籍の新刊点数は7.1万点。初めて7万点の大台を超えた。ちなみに1994年の新刊点数は5.4万点。2001年の点数は+1.7万点と増えているのに、実売金額は1994年の10,340億円に対して、2001年は10,032億円と逆に減っている。本づくりの期間が減ったが故に質の劣化を招き、実売が思うように伸びなかったと言えないだろうか。

 その後、わずか「1~3カ月」で刊行してしまう割合は、2005年 40.7%、2009年 44.9%、2016年 41.7%と波はあるものの数字は落ち着いてきているように見える。新刊点数も、2005年 8.1万点、2009年 8.1万点、2015年 8.0万点(2016年は未確認)と横ばいだ(『出版年鑑2016年版』 より)。

 しかし深刻なのは、実売金額。新刊点数は横ばいだが、実売金額は 2005年 9,879億円、2009年 9,138億円、2015年 7,936億円と落ち込みが止まらない(『出版年鑑2016年版』 より)。

 外部環境の影響もあるかも知れないが、内部環境にも変化があるようだ。次は、編集関係について読み解いていく。


■編集関係について

設問2.編集関係について

(1)編集者一人あたり、1年間に平均何点を仕上げますか。

shokyo04.jpg

* 第1回は自由回答に伴い単純比較が困難なため割愛
* 四捨五入の関係で合計が必ずしも100%にならない。


(3)編集作業を外注することがありますか。
shokyo05.jpg


(3)-3 外注する理由は何ですか。
(複数回答可)

 ① 期日を短縮するため ・・・ 2009年 66.3% → 2016年 57.4%
 ② 専門性が高いため ・・・ 2009年 39.8% → 2016年 46.2%
 ③ 費用を安く抑えるため ・・・ 2009年 34.8% → 2016年 21.5%
 ④ 人手不足 ・・・ 2009年 8.3% → 2016年 11.8%

* 回答対象社は、第4回(2009年)が181社、第5回(2016年)が195社
* 上位回答の順番は第4回、第5回とも変わらず
* 第1~3回は外注費用の高低、期日の長短のみを尋ねており比較できないため割愛した。


出典: 『2016年書籍の出版企画・製作等に関する実態調査(第5回)』

 編集者一人あたりの点数は、年間「5~9点」が一番多く、その傾向は第2~5回でいずれも変わらない。しかし本質を見極めるには「何点仕上げるか」の情報だけでは不足だ。

 「外注している」と「外注することがある」はいずれも、どの程度外注しているのかの頻度や量は不明である。少々荒っぽくこの2項目の比率を合計してみると、1994年の57.7%から2016年の84.4%に急増しており、外注利用が増えていることが明らかになる。

 むしろ、編集という本づくりの根幹の仕事とも言える業務を「外注しない」とした出版社が、1994年には37.0%だったにも関わらず、2016年には14.3%と半分以下となっていることに着目すべきかも知れない。

 1994年には4,487社あった出版社の数が、2015年には3,489社と約1,000社、2割以上減ってしまった(『出版年鑑2016年版』 より)ことと関係があるのか? 外注する理由の比率の変化が手掛かりになるかも知れない・・・

 理由の第1位の「期日短縮」と第3位の「費用を安く」が、2009年に対して2016年では比率が減少している。一方、第2位の「専門性高い」と第4位の「人手不足」は逆に増えている。

 もしかすると、編集者は本業の編集業務以外の仕事が増え、外注先もそれなりに専門性が高くなっていった結果、出版社が本業として保持すべき編集ノウハウや質のようなものが、外注し続けた結果として弱まってしまったのではないか?

 編集作業の外注増は、全て自社で本づくりを行うという信念を持った出版社が減ってしまったのか、それとも外注に依存し過ぎた結果、質の劣化を招いて売れなくなり、経営破綻してしまったのか・・・

 理由は定かではないが、本づくりの現場は1994年から2016年までの20年以上の年月をかけて、大きく様変わりしたことが推測できる。

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posted by 鳴海寿俊 at 22:28| Comment(0) | 出版社・著者(作り手) | 更新情報をチェックする

書協『2016年書籍の出版企画・製作等に関する実態調査(第5回)』過去調査からの推移分析(1)

 『新文化』(2017/4/6付)記事に、日本書籍協会 (以下「書協」)が行った『2016年書籍の出版企画・製作等に関する実態調査(第5回) 』の概要が紹介されていた。この調査は1994年に第1回目が実施され、その後、2001年、2005年、2009年と過去4回に渡って実施されており、今回は7年ぶりの実施。

 調査期間は2016年2月~5月、有効回答数は、書協会員出版社(2016年1月現在)425社のうち、231社である。日本にある3,000以上の出版社のうち、有効回答が僅か231社ではあるものの、書協パンフレットの会員出版社名簿を見る限り、大小まんべんなくというところだろうか(調査対象の偏りを疑っては話が進まないので信頼するとして)。

 書協会員出版社には配布されているようだが、以下リンクのwebページ下段の注文フォームからも購入可能

 その他刊行物一覧(目次PDFはこちら
  ISBN: 9784890031429 / 定価:本体価格1,500円+税

 まず気になったのは、出版社の本づくり(そのもの)における状況である。『新文化』(2017/4/6付)記事によれば

【編集関係】では、編集者1人当たりの年間平均製作点数は減少傾向にある。社内における製作点数減を外注で補っている状況だ。

1人当たりの製作点数は、「5~9点」(49.4%)が最も多く、前回比で1.6ポイント増。しかし、2位の「1~4点」(22.5%)は前回より1.8ポイント増え、3位の「10~15点」は同5.9ポイントと大幅に減少した。

編集作業の外注は「している」「することがある」と合わせて84.4%。前々回の64.3%、前回の78.0%に比べて飛躍的に増えた。

出典: 『新文化』(2017/4/6付)

とある。しかしこの情報だけでは、新刊の刊行に費やされる時間がどうなったのかが読み取れない。

 読者にしてみれば、同じ出版社から出されている以上、出版社の編集者が製作しようが、編集作業を外注しようと関係のないこと。作り手の粗製濫造により、コンテンツの質の劣化も読者離れの一因、と考えている私としては、本づくりに対する労力がどの程度割けられているのかの実態、時系列での推移を知りたいのだが・・・ 

 どうやら報告書の原典に当たらなければならないようだ。

 次に気になったのは、電子書籍における取り組み状況。理由は、世間で話題になっている本、ランキング上位の本であっても、電子化されていないタイトルが散見され、電子派の私としては出版社の取り組み姿勢に対して少なからず不信感を抱いていたからだ。『新文化』(2017/4/6付)記事によれば

【電子書籍(雑誌除く)】では、72.3%の出版社が刊行していると答えた。

発売のタイミングは①紙版とほぼ同時、②紙版刊行後1~3カ月後、③特に決めていないの順。

個人向け希望小売価格は「紙版より安く」が65.5%、「同じ」46.2%、「高く」11.0%。

公共図書館向けは「紙版より高く」が74.5%と圧倒的。大学・大学図書館などの教育機関向けは「高く」が67.6%だった。

出典: 『新文化』(2017/4/6付)

とのこと。価格設定については比率が書かれているのでへぇ~という感じだが、そもそも「紙版とほぼ同時」に電子版の新刊を出してくれる電子派読者のことを考えてくれている出版社はどれくらいあるのか?そこが知りたいのに・・・ 

ということで、書協発行の『2016年書籍の出版企画・製作等に関する実態調査(第5回)』(以下「原典」)を入手し、せっかくなので過去4回の結果もふまえつつ、数値の推移を分析することにした。

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posted by 鳴海寿俊 at 22:24| Comment(0) | 出版社・著者(作り手) | 更新情報をチェックする