2015年01月08日

もしかすると未来のリアル書店は図書館との境目がなくなっているかも知れない

 もしかすると未来のリアル書店は図書館との境目がなくなっているかも知れない。未来の書店については 私なりに予想(期待)しているが 、もっと大きな視点で 【読者の本との接し方】 について考えてみると、次の3つのパターンに絞られてくるのではないだろうか。
  • 紙の本を買う
  • 電子の本を買う
  • 電子の本を借りる
 近い将来、ほとんどの本が電子化され、図書館でも電子版の本が借りられるようになったとしたら、もはや 「紙の本を借りる」 という行為の意味合いはほとんど見出せない・・・ そう感じるのは私だけだろうか。

 東京・雑司ヶ谷にひぐらし文庫という書店を構える原田真弓氏は、未来の紙の本の役割についてこんな風に予測している。

「たとえば村上春樹さんの新刊は必ず二種類が出るとか。読みたいだけの人向けの電子書籍版が基本で、紙のほうは村上春樹さんの大ファン向けに、豪華な装丁で、自宅の棚に飾っておけるようなデザインでつくる」 ( 『「本屋」は死なない』 p128より)

「本屋」は死なない「本屋」は死なない
石橋 毅史

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(鳴海の関連記事)
 『「本屋」は死なない』 廃れていない書店員のプロ根性 

 「紙の本を買う」 というシチュエーションは、原田氏が述べる通り、手元に " モノ " として残しておきたい場合に限られてくるのではないか。だから 「紙の本を借りる」 という状況の必要性が(電子化されていないという理由を除いて) どうしても感じられないのである。なぜなら、紙の本で読書を楽しもうとするなら、事前に内容を電子版で確認することはあったとしても、自分の " モノ " として所有(購入)し、楽しもうとすると推測するからである。

 未来の出版物としての " 中身 " は
 電子で事足りてしまうのか?


 もはや本は " モノ " (紙)である必要はないのかも知れない。古くは粘土板だったり、植物の葉や動物の皮に書いて " 情報 " を伝えてきた。そう考えると、紙の本でなければならないとか、紙の本の手触りや匂いを楽しみたい、なんていう発想は本来の情報を伝えるという役割とは遠縁のものであると思う。きっと今後の未来も含めた長い人類の歴史の中でも、限られた時期のものではないだろうか。

(鳴海の関連記事)
 『「本が売れない」というけれど』① 10年後、50年後、100年後に現れるかもしれない読者のため
 『「本が売れない」というけれど』②  本は【所有】から【体験】【消費】へ  

・・・とは言え、いまだほとんどの本の媒体は紙。私たちは今まさにこの時代に生きているわけだし、長い人類の歴史の中での位置づけなんてどうでもいいかも知れない。本を読むという行為や " 体験 " 自体を " モノ " (紙) に求めることはしばらく残るだろう。私だって、紙の本の良さは分かるし、" 情報 " だけではなく、 " 体験 " としての読書の価値も理解しているつもりだ。実際「ジュンク堂に住んでみる」 企画には参加したかった。この企画はまさに " 体験 " を訴求したものだし、蔦屋書店が目指す " 気持ちよく過ごせる居場所 " づくりにも通じるところがあるだろう。

(鳴海の関連記事)
 「ジュンク堂に住んでみる」 モニターツアー(2014/11/1-2) 
 「代官山 蔦屋書店」をプロデュースしたCCC社長が語る・・・ リアル書店の生き残る術とは?

 CCC( カルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社 )が企画・運営を担うことで有名になった武雄市図書館は書店を併設している。なんとただ同居しているだけでなく、図書館と書店の担当者が2人1組になって、選書しているから驚きである。例えば、図書館での蔵書に悩むような本は書店に置き、書店で仕入れるには高価で躊躇するような本は図書館に置くという感じだという。これは紙の本におけるコラボレーション。今後もし電子書籍の取扱いを始めたとしたらどうなるだろうか? 

 " 情報 " としての役割を持つ本は電子版、 " 体験 " を求める人向けに紙の本を取り扱うようになるのではないか。こう考えると冒頭触れた3パターンに集約されてくるのではないか。
  • 紙の本を買う
  • 電子の本を買う
  • 電子の本を借りる
 もし図書館と書店が併設しているとしたら、電子版は無償・期間限定で読むことができるようにし(いわゆる貸し出し)、気に入ったらそのまま電子版の本を販売することもできるし、在庫している紙の本を販売することができるかも知れない。こうなると、図書館と書店をあえて分ける必要性すらないのではないか・・・という発想にもなる。

(鳴海の関連記事)
 「意義大きい図書館と書店の併設」(『文化通信』2015/1/5号記事より) 
 『沸騰!図書館 100万人が訪れた驚きのハコモノ』 街づくりのエンジンとなった行政とCCCとのコラボレーション

 我々日本人は、海賊版やコピーが横行している新興国と違って、「価値のあるものに対価を払う」 という意識を持っている人が多いと思う。たとえ借りた本であっても、良い本であれば 「買おう」 と考えるし、「買ってあげたい(著者の印税になるから)」 という気持ちを抱く読者も少なくないはずだ。図書館に対しては否定的な意見もあるが、図書館と書店が共存できるか、競合となるかは 「出版物」 自体の商品価値しだいだと思う。

 本当に顧客(読者)第一に考えるならば、思い切って図書館と書店の垣根は取っ払ってもしまってもいいかも知れない。
  • 試しに電子版を借りて読んでみたら、気に入ったので電子版を購入
  • 電子版を買って読んだが、紙の本も手元に残しておきたいと思い購入
  • 紙の本を買って書き込みしながら読んでいたが、移動中も読みたいので電子版も購入
 こうした新しい本との関わり方を想定して、電子が紙がと騒ぐ前に、図書館の複本がどうだと議論する前に、もっと本に携わる人たちがしがらみを捨てて、顧客(読者)第一で出版業界を盛り上げていくべきではないだろうか。

 そしてそもそも、紙であろうと、電子であろうと 「出版物」(情報) 自体が 「買うに値しない」 場合、本自体は読者には購入されない、ということを強く認識すべきである。「借りて済ます」で終わってしまうかどうかは、本の作り手にかかっている。出版不況を脱する糸口はやはり、本の作り手の意識改革、商品価値の向上にあるように思うのだが・・・

 皆さんはどうお考えだろうか?

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posted by 鳴海寿俊 at 23:55| Comment(0) | 図書館ほか | 更新情報をチェックする

「意義大きい図書館と書店の併設」(『文化通信』2015/1/5号記事より)

 2013年にリニューアルオープンしたことで話題となった佐賀県の武雄市図書館。TSUTAYAやTポイントを展開するCCC( カルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社 )が企画・運営を担うことで有名になった図書館である。

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  「代官山 蔦屋書店」をプロデュースしたCCC社長が語る・・・ リアル書店の生き残る術とは? 

 CCCの図書館事業をカンパニー長として率いる高橋聡氏のインタビュー記事が、『文化通信』2015/1/5号 に掲載されていた。社長自ら 「書店は本を売っているから、ダメなのだ」 と言うCCCという会社。出版業界のしがらみに縛られない自由な発想を感じる、応援したい企業の1つだ。まず記事のタイトルが

意義大きい図書館と書店の併設

である。競合しそうな両者のコラボレーションに注目している業界関係者も多いことだろう。私はCCC(や高橋氏)のような壮大なビジョンを持っているわけではないが、顧客第一の視点に立てば、同じ本を扱う両者が手を取り合うのは自然なことと考えていたし、未来の姿として良好な協力関係が築けると期待していた。

(鳴海の関連記事)
 未来の【書店員】と【客】との会話はこうなる!? 

 高橋氏はこう述べている。

── (図書館と書店の)情報交換はどうしていますか?

「書店と図書館の担当者が2人1組になって、本を一緒に選んでいます。図書館で悩むようなものは書店に置いて、一方、書店で高価だと躊躇するような本は図書館に置くという感じで、司書の選択肢が広がっています」

── 図書館と書店の併設は効果的ですか?

「図書館と書店は親和性が高いと思います。最近のベストセラーの貸出数と予約待ちの数をみると、予約待ち70~80に対して書店で200冊売れた本など、予約待ちの2倍近く売れる本もあります。あくまで仮説ですが、図書館に併設すると、貸出+予約数の倍近く売れるポテンシャルがあるのかもしれません。一方で、市場全体では書籍の販売数を貸出数が超え、副本問題などが指摘されています。そういう意味でも図書館に書店を併設する意義は大きいと思います。」

 これは " 運営者 " としての気づきであろう。この気づきは私にとっては特段新鮮味を感じない。私に限らず、まず図書館で借りてから買うかどうか判断する読者もいるはず。その際、あまりにも予約数が多くて待ちの期間が長いようなら、借りずに「買おう」と判断することがあるのだ。この判断・行動がもし、同じ場所で出来るとしたら、こんな便利なことはない。そういう意味で「図書館と書店の併設」には私も大賛成だ。

(鳴海の関連記事)
 【ビジネス書】 は買う価値があるのか? また図書館の利用価値は? 

 高橋氏によれば、この併設に伴う図書館と書店の全体収支は初年度は残念ながら赤字で、ようやく今年度とんとんくらいに持ち込めそう・・・ というレベルだそう。ただ私は単なる商売としてではなく、文化的な側面を担う事業として育てて欲しいと思うので、以下の高橋氏の発言にはとても感動した。

── CCCとしての事業目的はなんですか?

「初めは社会貢献という思いが強かったのですが、やってみて、しっかりモデルを作れば、地方都市に書店を出店できて、文化的なものを残せるという社会的使命に加えて、ビジネスとして多少儲かるところまでは持ち込めそうな手応えを得ました。今は、ビジネスとしても成立させてやっていこうと考えています」

── (図書館事業は)さらに増やしますか?

「やってみてわかったのは、図書館はそれぞれの地域性に根付いており、コンセプト、考え方、導入アイテムなどを変えていかなければならないことです。時間も労力もかかり、なかなかTSUTAYAのようなペースで出店できるものではありません」

「地域の知識のレベルアップや暮らしのレベルアップのお手伝いができればというのが、僕らが目指している図書館事業です」

 ボランティアでやってるわけではないし、当然ビジネスとして成立させなければならない。それでいて、社会的使命や地域性をふまえた展開は、ただTSUTAYAを出店する仕事とは違って、非常に難しいことだろう。高橋氏の試行錯誤を感じたし、徐々にその苦労が実りつつあることが感じられ、非常に良いモチベーションを感じさせてくれたインタビュー記事であった。

 これからもCCCの高橋氏を応援していきたい。

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posted by 鳴海寿俊 at 00:17| Comment(0) | 図書館ほか | 更新情報をチェックする

2012年05月31日

図書館で 『下町ロケット』 と 『ジェノサイド』 を借りて思ったこと

下町ロケット (小学館文庫) ジェノサイド 上 (角川文庫)

 若干のアルコールの力を借りながら、さきほど読み終えた『下町ロケット』の余韻に浸りつつ、【図書館】 について思いの丈をぶつけてみることにする。ところで・・・

図書館で本を予約できることをご存じだろうか?

「そんなこと知ってるよ!」 と即答した方の中には、図書館に足を運んでスタッフの方に予約したい旨を申し出て・・・ なんてことをイメージした方もいるかも知れない。しかしイマドキの図書館は、まるでネット書店かのように、web上で新刊書籍の予約申込までできることをご存じだっただろうか? これが思いのほか便利なのである。私はここ最近、この図書館のweb予約サービスを頻繁に使っている。

 自分が読みたい本をwebで予約し、あとは待つこと数ヶ月。借りられる自分の番が来たら、メールで連絡がくる仕組みだ。

 ん? 待つこと "数ヶ月" ??

 そう・・・ 確かに 『下町ロケット』 と 『ジェノサイド』 を予約したのは去年の9月。つまり、8ヶ月以上待たされたのである。それがいきなり先週、2冊まとめてほぼ同タイミングでお知らせメールが来たもんだから、正直焦った。おかげで、睡眠時間削って読む羽目になった・・・(汗)

 でも2冊とも実に面白かった!

 一見情熱バカで不器用な社長率いる、下町の中小企業が競合企業に特許侵害で訴えられて倒産しかけたり、ロケットを開発している大企業に、社員一丸となって自社の技術力を認めさせたり(『下町ロケット』)・・・ クライマックスは涙腺緩みっぱなしで、夜中ひとりで嗚咽をかみ殺しながら読んだ。

 『ジェノサイド』 では、謎の急死を遂げた研究者の父親の遺志を継いだ、薬学部に在籍している主人公が、命を賭して新薬の開発を成功させるという話。

「医者は一生のうちにせいぜい 5,000人くらいしか命を救えない。
 けど新薬開発者は世界中の何百万人もの命を救うことができる!」

確かこんな感じの主人公のセリフがあったのだけどなぜか感動して・・・ (単純な私は)「オレも薬剤師になってやる!」って、涙をボロボロこぼしながら誓おうかと思ったし(って言うか薬剤師と新薬開発者違うだろうし)。

 とにかく、人を感動させることができる著者ってあらためてスゴい! と思った。自分もそんな著者になりたいと思った。

 実は昨年、私は小説を買うのを止めた・・・

 永久保存しておきたいビジネス書をしまっておくスペースがすぐに足りなくなってしまい、処分も追いつかなくなったのである。そこで知ったのが、図書館のweb予約サービスの存在。当然使わない手はない。

 このサービスのデメリットを挙げるならば、予約してから自分が借りられるまで待たされることと、貸出日数が決められていることくらい・・・ よっぽどの事がない限り、同じ小説を再度読むことはないし、書き込みを入れる必要性はあまり感じないから、これで十分である。

 ビジネス書ほど鮮度も求めていないし、借りて読み終わったら返す方が、保管スペースの確保の面でも都合がいい。また無料で読んで、気にいれば買えばいい。この割り切りが私の読書に対する感覚にマッチする。

 本との出会いは "一期一会" 。

 多少なりともこの不況の出版業界に貢献したい気持ちもあり、読みたいと思う本は書店で買っていたのだが、安易に新刊(しかも似たような本ばかり)を乱発する出版社、良書よりも売れる本を目指す著者の存在に嫌気がさし始めている今日この頃。

 書いた本を宣伝ツールとして活用し始めた起業家たち、新人著者を発掘して、プロデュースしようとする人たち・・・ 本は読者のために存在しなければならないもののはずなのに。そんな正論を吐きたいものの、こんな私でも "売れっ子の著者" になりたいと思っているから、自己嫌悪に陥る。

 でも "自分は違う!" と信じて、慌てずに今は本業を優先しながら、少しずつ活動の幅を広げていければと思う。

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さて、図書館の話に戻そう。実は、子供の頃から漠然と思っていたことがある。

「図書館にはなぜ新しい本がないのだろう?」

 予約申込の仕組みにより、人気作品であればあるほど、図書館の棚には並んでいないことが分かったのは最近のことだ。要は、新刊やベストセラーの本は図書館にはない、という事実。そしてもう少し(嫌みを込めて)言えば

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 図書館にあり、すぐに借りられる本は・・・

  ベストセラーであれば 相当古い本 であり、
  もし仮に、発行後間もない本を見かけたら
  それは、予約すらされることのない、人気のない本 である!
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という事実(あくまでも私の推論だが)。本のジャンルにもよるので、一概には言えないが、少なくとも最寄りの書店で買える本は、図書館で予約すれば借りられはするが、図書館の棚には並んでいないのだ。

 では、予約が尽きて図書館の棚に並ぶほど年月が経過した本で、図書館の蔵書として並べる価値のある本はどれ位発行されているのだろう? 専門書が町の図書館に中途半端に蔵書されていても満足度は低いのではないか? と疑問(いや不信感)は尽きない。

 では、乱発される年間8万点の新刊書籍を代わる代わる入れ替えている書店の役割はいったい何なのだろう?

 最近の書籍は雑誌っぽい。商品ライフも短いし、長きに渡り語り継がれるような良書は少ない(これも主観であるが)。書籍を扱っている "本屋さん" というより "雑誌屋さん" という感じ。それも "雑な" 商品を並べているお店。

 では、図書館は? というと中途半端に専門書が置かれている古くて無料の "雑誌屋さん" という感じか。なんだか支離滅裂でまとまりがないが、この辺で止める。本来、この類の議論は同じ本であっても、ジャンルによって事情が違うから、論点を明確にしてから行うべきなのだ(私はビジネス書と文芸書を思い浮かべながら書き進めてしまったが)。

 でもこれだけは言っておきたい。

 人を感動させたい、役に立ちたい、喜ばせたい・・・ そんな本づくりを読者としては出版社にお願いたいし、私もその気持ちを忘れず、肝に銘じて、著者を目指したい。

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posted by 鳴海寿俊 at 00:00| Comment(0) | 図書館ほか | 更新情報をチェックする