2017年05月07日

書協『2016年書籍の出版企画・製作等に関する実態調査(第5回)』過去調査からの推移分析(1)

 『新文化』(2017/4/6付)記事に、日本書籍協会 (以下「書協」)が行った『2016年書籍の出版企画・製作等に関する実態調査(第5回) 』の概要が紹介されていた。この調査は1994年に第1回目が実施され、その後、2001年、2005年、2009年と過去4回に渡って実施されており、今回は7年ぶりの実施。

 調査期間は2016年2月~5月、有効回答数は、書協会員出版社(2016年1月現在)425社のうち、231社である。日本にある3,000以上の出版社のうち、有効回答が僅か231社ではあるものの、書協パンフレットの会員出版社名簿を見る限り、大小まんべんなくというところだろうか(調査対象の偏りを疑っては話が進まないので信頼するとして)。

 書協会員出版社には配布されているようだが、以下リンクのwebページ下段の注文フォームからも購入可能

 その他刊行物一覧(目次PDFはこちら
  ISBN: 9784890031429 / 定価:本体価格1,500円+税

 まず気になったのは、出版社の本づくり(そのもの)における状況である。『新文化』(2017/4/6付)記事によれば

【編集関係】では、編集者1人当たりの年間平均製作点数は減少傾向にある。社内における製作点数減を外注で補っている状況だ。

1人当たりの製作点数は、「5~9点」(49.4%)が最も多く、前回比で1.6ポイント増。しかし、2位の「1~4点」(22.5%)は前回より1.8ポイント増え、3位の「10~15点」は同5.9ポイントと大幅に減少した。

編集作業の外注は「している」「することがある」と合わせて84.4%。前々回の64.3%、前回の78.0%に比べて飛躍的に増えた。

出典: 『新文化』(2017/4/6付)

とある。しかしこの情報だけでは、新刊の刊行に費やされる時間がどうなったのかが読み取れない。

 読者にしてみれば、同じ出版社から出されている以上、出版社の編集者が製作しようが、編集作業を外注しようと関係のないこと。作り手の粗製濫造により、コンテンツの質の劣化も読者離れの一因、と考えている私としては、本づくりに対する労力がどの程度割けられているのかの実態、時系列での推移を知りたいのだが・・・ 

 どうやら報告書の原典に当たらなければならないようだ。

 次に気になったのは、電子書籍における取り組み状況。理由は、世間で話題になっている本、ランキング上位の本であっても、電子化されていないタイトルが散見され、電子派の私としては出版社の取り組み姿勢に対して少なからず不信感を抱いていたからだ。『新文化』(2017/4/6付)記事によれば

【電子書籍(雑誌除く)】では、72.3%の出版社が刊行していると答えた。

発売のタイミングは①紙版とほぼ同時、②紙版刊行後1~3カ月後、③特に決めていないの順。

個人向け希望小売価格は「紙版より安く」が65.5%、「同じ」46.2%、「高く」11.0%。

公共図書館向けは「紙版より高く」が74.5%と圧倒的。大学・大学図書館などの教育機関向けは「高く」が67.6%だった。

出典: 『新文化』(2017/4/6付)

とのこと。価格設定については比率が書かれているのでへぇ~という感じだが、そもそも「紙版とほぼ同時」に電子版の新刊を出してくれる電子派読者のことを考えてくれている出版社はどれくらいあるのか?そこが知りたいのに・・・ 

ということで、書協発行の『2016年書籍の出版企画・製作等に関する実態調査(第5回)』(以下「原典」)を入手し、せっかくなので過去4回の結果もふまえつつ、数値の推移を分析することにした。

つづきは こちら


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posted by 鳴海寿俊 at 22:24| Comment(0) | 出版社・著者(作り手) | 更新情報をチェックする

2017年05月03日

出版業界を変えてくれそうなキーパーソン[2017/5/3更新]

 新たに 長谷川均氏株式会社ポプラ社・代表取締役社長) を追加しました!!

(長谷川均 氏/プロフィール) ※『文化通信』(2017/5/1付) より
1962年宮城県石巻市生まれ。東京大学医学部卒、朝日生命保険、野村総合研究所、野村證券、コンサルティング会社で資産運用、財務、人事コンサルティングに従事後、2009年ポプラ社入社、総務管理局長兼財務経理部部長、取締役営業・管理本部長、16年代表取締役社長兼児童書出版局長

 「もし、業界全体で新刊点数を減らすことができれば、増えた利益の一部を書店さん、あるいは輸送費の負担に回し、いろいろな問題が解決できるはずです。またそうなれば新刊が店頭に出ている時間が長くなり、それだけ読者が触れる機会も増えると思います」

「結局、出荷してもすぐに戻ってくるのは「無駄」を刷ってるようなものです。この「無駄」を削減し、その利益を書店や取次に回せばみんな潤います。しかし、いまだに踏み切れていない。おそらくきっかけは輸送費を出版社に転嫁することだと思いますので、ぜひやっていただきたい」


出典: 「ポプラ社、創業70周年 長谷川均社長に聞く」(『文化通信』2017/5/1付記事)



このブログで出版業界に対して苦言を呈したところで
何か変わるのか?


 即答でNoである。

 残念ながら私にはそのような力は持ち合わせていない。ただ「出版業界」に対してではなく、「このブログを読んでくれた人」(たとえば出版業界に携わっている個々のビジネスパーソン)に対してであれば、Yesとなれるかも・・・ というか目指したい。そして微力なりとも、読者が良書と出会えることの力になれれば満足である。

 出版業界にいながらして、自らの業界の問題を取り上げることは身内批判になりかねない。にもかかわらず、旧態依然とした業界に対して警鐘を鳴らしている方が少なからずいる。彼らには心から敬意を表したい。私が着目しているのは次の方たちである。心を打たれた彼らのメッセージとともにご紹介する。

【着目!出版業界を変えてくれそうなキーパーソン】
 (注意)肩書はブログ記事掲載当時のものです。

●長谷川均 氏ポプラ社・社長)
「もし、業界全体で新刊点数を減らすことができれば、増えた利益の一部を書店さん、あるいは輸送費の負担に回し、いろいろな問題が解決できるはずです。またそうなれば新刊が店頭に出ている時間が長くなり、それだけ読者が触れる機会も増えると思います」
「結局、出荷してもすぐに戻ってくるのは「無駄」を刷ってるようなものです。この「無駄」を削減し、その利益を書店や取次に回せばみんな潤います。しかし、いまだに踏み切れていない。おそらくきっかけは輸送費を出版社に転嫁することだと思いますので、ぜひやっていただきたい」
(鳴海の紹介記事は こちら


●新名新 氏(出版デジタル機構・社長)
「出版社にとって、もはや紙書籍と電子書籍を二項対立として考える時代は終わった。出版社が利益を最大化し、著者に還元し、将来も事業を継続するためには、可能な限り紙版と電子版の両方を刊行すべきだと考える」
(鳴海の紹介記事は こちら

●星野渉 氏「文化通信」 取締役編集長)
「出版業界は、ややもすると『読書離れ』などといって、『読まない者が悪 い』といった切り捨て方をするが、『読まれない物が悪い』と考えて、出版物に新たな価値を付加するような業界としてのアプローチも必要ではないか」
(『文化通信』 2012/9/10号「出版時評」より)

●柿内芳文 氏(編集者/ 株式会社コルク
「次世代に向けた本を作らなければいけない。これまで多くの出版社はその部分で怠けてきたと思います」
(鳴海の紹介記事は こちら

●木暮太一 氏(著者/マトマ出版)
「著者は偉ぶるなと言いたい。人気がなくなったタレントがテレビ局に呼ばれなくなるのと一緒で、本気で書かないと次がないことを分かっていない。世の中に良いコンテンツを出して、読者に喜んでもらい、いかにして利益を生むか、それを分かっているプロ意識のある著者が少ない」
(鳴海の紹介記事は こちら

●三浦崇典 氏(天狼院書店)
「現状、二番煎じ三番煎じの本ばかり、同じ著者の同じような本ばかりが並んでいる」
(鳴海の紹介記事は こちら

●書店界のゴッドファーザー
「出版点数を減らせばいい。くだらない本が多すぎる」
(鳴海の紹介記事は こちら

●奥村弘志 氏(南天堂書房)
「取次は自分たちが損をしないで、書店に負担をかけようとしてる。こんなバカな業界はない。書店を潰せば、取次も出版社もなくなるということを分かっているのか」
(鳴海の紹介記事は こちら

●漆原直行 氏(編集者/記者)
「読み手だけの問題ではなく、送り手である著者や出版社の一部に見受けられる、『売れたモン勝ち』『とにかく一瞬でも話題になって、注文されて、売り抜けてしまえばこちらのもの』といったあくどい商売っ気にも問題があるとも認識しています」
(鳴海の紹介記事は こちら

●吉田典史 氏(ジャーナリスト)
「『文章力なんてゼロでいい。それは、ゴーストライティングをするライターの仕事だから・・・』これがビジネス書作りの基本的仕組みだ。この認識で成り立っているから、ゴーストライターに次々と仕事を依頼する。逆にいえば、ビジネス書の著者を目指す場合、文章力を磨くことには意味はない。むしろ、売れる仕組みを作ることに力を注ぎこむべきだろう。この言葉はいまやビジネス書にかぎらず、一部の小説でも聞かれることである。このままでは出版界は衰退するべくして衰退していく。それでも、ゴーストライターを使い続けている」
(鳴海の紹介記事は こちら

●田口幹人 氏(さわや書店)
「そもそも 『本屋とは商売』。それを聖域に持っていくことは気になる。できることの総括がないままにこの話をしても始まらない」
(鳴海の紹介記事は こちら

●永江朗 氏(フリーライター)
「『本』について考えるとき気をつけなければならないのは、いまある『本』だけが『本』ではないという事実についてだ。『本』はその誕生以来、常に変化してきた。たしかにいまの『紙に印刷して綴じて表紙をつけた』本は、完成された姿かもしれない。しかし、これからも『本』は変わっていく。ぼくたちのメディア環境、情報環境が変化していければ、『本』もまた変わっていく。ぼくたちが守らなければならないのは、そのような未来のかたちも含めた『本』であって、現在の本やそれを生産したり流通させたりするシステムではない。「本」をめぐる思考は、常に未来に開かれなければならない」
(鳴海の紹介記事は こちら

●林智彦 氏(朝日新聞社デジタル本部)
「われわれの成すべきことは、根拠・定義不明な『出版不況』論や『活字離れ』論に溺れ、『電子出版』の欠点を論ったり、自らの無力を嘆いたりすることではありえないでしょう。
これまでの出版の美点を伸ばし、欠点を減らすために、『電子出版』のポテンシャルをどう活かすのか。電子出版が『出版』の姿を変えつつあるプロセスに、どう貢献し、産業をどう拡大していくのか。そのような問いにコミットせず、ただただ昔話をするだけの『出版論』は、もう終わりにしてほしい」
(鳴海の紹介記事は こちら

●今泉憲志 氏(ダイヤモンド社・書籍編集局長)
「各編集者がその年に出した新刊も含めて過去5年以内に手掛けた本が、当該年度にどれだけ売れたのかで評価します。つまり、ロングセラーを作ることのインセンティブを持たせているのです。そのことを部員もよく理解してくれて、長く売れる本を作ろうとしています」
(鳴海の紹介記事は こちら

 私は、このブログを通して、彼らの行動やメッセージをどんどん取り上げていきたい。問題意識を拡散させるために。そのお手伝いができたら、大変嬉しく思う。

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posted by 鳴海寿俊 at 16:36| Comment(0) | 応援したいキーパーソン | 更新情報をチェックする